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14 ロイスの想い
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俺の母親が大層とち狂ってると知ったのはまだガキのころ。
「ロイス、あなたは特別な子どもなの。いずれこの国を統べる王になるのよ」
母親が繰り返し言い聞かせるそのセリフに子どもながら疑問が湧いた。
「母上、僕は王族ではありません。どうして僕が王になるんですか?」
「それはね、あなたが王族の血を引いているからなのよ……」
そう言ってうっとりと微笑む母親の言葉がおぞましい真実だと知ったのはいつだったか……
◇◇◇
「どうしてガライアス様が王太子にならないの!ジークハルトなんてとっくにどこかで野垂れ死んでるに決まってるわ!」
「おい、落ち着けよ。ジークハルト様のことは一部の王族と高位貴族しか知らない秘密だろう?使用人たちに聞かれたらどうするんだ……」
「おだまりっ!使用人なんてろくに残ってないじゃない!こんな貧乏伯爵家なんてもう沢山!わたくしはただ一人残った高貴な公爵家の娘なのよ?いずれは国母になるの!新しいドレスも作れない、宝石も買えない。こんな生活我慢できないわっ!」
「まだそんな馬鹿なことを……」
「馬鹿なことですって!……ふんっ、お前こそ一体誰のお陰で伯爵になれたと思ってるのかしら?小悪党が……お前を拾ってやったのが私だと言うことを忘れないことね?」
「ああ!分かってる、分かってるよ……」
親父と母親が言い争っているのはいつものこと。このクソ親父は、使用人には容赦なく残虐性を発揮するくせに30歳以上年下の妻には全く頭が上がらない。
もともとうだつの上がらない子爵家の次男だったが、先代伯爵一家が急逝したお陰で労せず爵位が転がり込んできた。怒鳴り散らすしか脳のない酒浸りの無能な領主。領民からしたらとんでもない災難だ。
豊かな領地収入で潤っていたシリウス伯爵家だが、今は見る影もなく落ちぶれている。凋落の始まりは王都にある伯爵邸を手放した頃からか……
酔った親父が口を滑らせ、実は賭けで取られたのだと聞いたときは流石に開いた口が塞がらなかった。
同じ頃母親の寝室のクローゼットの中で、本当の親父とやらを盗み見た。俺とそっくりの腹黒そうな男。育ての親父と違ってハゲてないだけましだと思おう。
古今東西、悪の栄えた試しなし。
いずれくる終わりの時までせいぜい人生楽しもうか。
アイツみたいな単純馬鹿ばっかりなら世の中平和なのにね。
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