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14. 拝啓お父様。今日も私は元気です

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◇◇◇

 親愛なるお父様へ

 私がリチャード王子に婚約破棄され、炭鉱送りになってからかれこれ三ヶ月が経過しようとしています。

 マリリン様をいじめたことで全校生徒の目の前で罵倒されたあのときのこと、いまだに忘れられません。……我ながらよく耐えたと思っています。

 リチャード王子は相変わらずあの頭の悪そうな……いえ、頭の中がいつも春爛漫のマリリン様と仲睦まじくお過ごしでしょうか。

 こうなってしまえば、お二人の素敵な関係が末長く続くことを祈るばかりです。あ、マリリン様はリチャード王子の他にも、五人ほど非常に親しくされている殿方がいらっしゃいましたよね。失念しておりました。もちろん、その方たちとの恋も応援致しております。

 以前は慎みを持てなんて言ってイジメてしまったこと、深く反省しております。野生動物には野生動物のルールがあるように、庶民には庶民のルールがあるのでしょう。

 貴族令嬢であった私の見解が全てではないですよね。今後はリチャード王子……元王子ですね。も、庶民のルールで楽しくお過ごしになられるとのこと。大変喜ばしく思います。

 さて、リチャード王子が廃嫡になり、私を王都に呼び戻したいとのことですが、残念ながらそれはできません。

 私はこの地で自分の使命を見つけてしまったのです。実は愛する人もできました。彼とは、炭鉱の中が薄暗くて怖かったので、最大爆炎魔法で炭鉱の入り口を広げようとしたところ、うっかり力加減を間違え、山ひとつを吹っ飛ばしたときに出会いました。

 ご存じの通り、炭鉱がある山は隣国との境界線があるところ。このままでは隣国との戦争もやむ無し。という状態だったのですが、私が悪気なくうっかり吹き飛ばしてしまったと説明したところ、快く許して頂けたのです。

 リチャード王子と違い、その寛容なお心にすっかり心奪われてしまいました。新しい恋のお相手は……隣国ダイタン国の国王陛下ですっ!きゃっ、恥ずかしい。

 獣人の国を治めている獣王である彼は、国民からも大変慕われている、強くて逞しい素敵な方です。リチャード王子……元王子の三倍くらいの筋肉があります。まぁ、私のほうが強いんですけどねっ!

 「お前のその強さに惚れたっ!」と、とても情熱的なプロポーズをして頂きました。最初は私も迷いました。私たちは人間と獣人。きっと困難なことも沢山あるだろうって。そもそも私のような人間を獣人の国の皆さんが受け入れてくれるかどうか……

 でも、その心配は杞憂に終わりました。獣人の国は力こそ全て。強きものの前に誰もが膝を折るのです。

 わかりやすくていいなと思いました。今では私のことを「我らの女王陛下」と言って慕ってくれています。たまに目が合うとちょっとビクッとしてますが、そんな姿もとっても可愛いです。

 何しろ彼らにはもれなく耳と尻尾がついてますからね。最高です。もちろん獅子の獣人である私の旦那様……レオ様にもとっても可愛い耳と尻尾がついています。

 ここも、結婚を決めたポイントです。

 あ、そうそう。すでに私たちは結婚もしています。お父様にお知らせするのが遅くなってごめんなさい。レオ様ったら強引で。ポッ……

 でも、改めてそちらの国で結婚式を挙げてもいいと仰ってくれています。そちらの国の様子はいかがでしょうか?少しは落ち着きましたか?

 お父様が大暴れしたせいで、王都が壊滅状態に陥ったと聞いております。いけないことと思いつつ、私のために怒ってくださったお父様のお気持ち、本当に嬉しかったです。

 「国も王子も差し出すから命ばかりは助けてくれ」と仰った国王陛下に対し、「王太子を廃嫡にした上で我が愛娘リリアナを呼び戻す許可を出せ」と提案なさったとか。

 そのように謙虚で思慮深いところも、お父様の素敵なところだと思いますよ。でも、王都が壊滅状態だと、そっちでの式は難しいかな。なんて思っています。

 せっかく私が我慢したのに、お父様ったら。でも、そんなお父様が大好きです。

 今度、レオ様と一緒にご挨拶に伺います。

 貴方のリリアナより。愛を込めて。


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