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7.一緒に幸せになろう
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◇◇◇
それからのエリックの行動は早かった。まずは国王陛下にライアンの遺児がいることを報告。魔法による遺伝子調査の結果、ライアンの娘であることが正式に認められた。息子の突然の死に悲嘆にくれていた両陛下は喜び、ライザを王族として認めることを快諾。さらにその場でローズとの婚約と、ライザを二人の養女として育てることの許可を求めたのだ。
通常未亡人が未婚の王族と結婚することに対しては他の貴族からある程度反発が予想されるが、ローズの結婚は白い結婚としていつでも貴族籍を元に戻せるものだったので、両陛下はこれも快諾した。元々王太子妃、将来の王妃として妃教育を受けていたローズ以上の令嬢などいない。ローズを改めて王族として迎えることができること、そして、二人の子どもとして可愛い孫と頻繁に会えるようになることを喜んだ。
「なんだか急にいろいろ決まってしまって、実感がわかないわ」
真っ白なドレスに身を包んだローズが困ったように首を傾げる。
「お母様!とてもとても綺麗です!」
その周りでは、ライザが興奮したようにはしゃいでいた。すっかり子どもらしく可愛くなったライザを見て、ローズは頬を緩める。
「ふふ、ありがとう。ライザもとっても可愛いわ」
「メアリーが可愛くしてくれました」
「サファイヤのネックレスが、あなたの綺麗な青い瞳にぴったりよ。あなたの瞳はお父様似ね。その美しい髪はお母様譲りよ」
ライザの艶を取り戻した黒髪がさらりと揺れる。
「亡くなったお父様とお母様が残してくれたものが、他にもあったんですね」
「ええ。たくさんあるわ。これから少しずつ教えてあげるわね」
二人は顔を見合わせると幸せそうに微笑む。
「また僕は仲間外れかい?」
「お父様!」
「やあ、僕のお姫様。今日は一段と可愛いね。さあ、そろそろ式が始まるよ。準備はいいかな?」
「あ、私、もう一度メアリーに髪飾りを直してもらってきますね」
そっと部屋を後にするライザをエリックは優しい笑顔で見送った。
「あの子は本当に敏い子だね」
「ええ、人の顔色を見るのが得意なの……きっと、今まで想像もできない苦労をしてきたせいだわ」
ローズはそっと目を伏せた。これまでどんなに辛い思いをしてきたのだろうか。もっと早くライザの存在に気が付いていれば、こんなことにはならなかっただろう。そう思うと胸が痛む。
「それを言うなら僕の方こそ罪がある。実の姪を不幸にしてしまった。お祖父様の遺言に従ってリアナ嬢の様子を気に掛けていたら、もっと早くライザの存在にも気付けたはずだ。失ったときは戻せないが、今までの分まで幸せにすると誓うよ。君も、ライザも」
「ええそうね。みんなで幸せになりましょう」
エリックはローズを優しく抱きしめた。
「さあ、僕たちの可愛い娘が待っているよ」
「ええ、一緒に行きましょう」
二人は手を取ると歩き出す。
◇◇◇
「エリック王太子殿下ばんざーい」
「ローズ妃殿下おめでとうございます!」
「ライザ姫様かわいい~!」
沢山の国民に熱烈に歓迎されて、三人は馬車の上から並んで手を振った。お祝いの花吹雪が良く晴れた空に華やかに舞い上がる。
「私のこともこんなにお祝いしてくれるなんて」
ライザの瞳は感動でうるんでいた。
「当り前よ。だってあなたはライアン殿下のたったひとりの遺児で、私たちの可愛い娘ですもの。お城で両陛下が首を長くして待っているわ」
「お祖父様が贈ってくださったドレスとお祖母様がくださった髪飾りのお礼を言いたいです」
「私が選んであげたかったのに、ずるいわ」
「ふふ」
あれからライザに逢った両陛下は、初めてできた孫娘をそれはそれは溺愛しており、ライザもすっかり懐いていた。
「お母様、私、本当にお母様に出会えてよかった。私をお母様の娘にしてくださってありがとうございます」
ライザは目に涙をいっぱい溜めて微笑む。
「お母様、大好き!」
「ライザ、私もあなたを心から愛しているわ。あなたは私の自慢の娘よ」
抱きしめあう二人。
「また僕を仲間外れにして。僕も二人を心から愛しているよ」
背中から抱きしめるエリックに二人は振り向いて微笑みかける。
「お父様も大好き!」
「私も愛してるわ」
おしまい
それからのエリックの行動は早かった。まずは国王陛下にライアンの遺児がいることを報告。魔法による遺伝子調査の結果、ライアンの娘であることが正式に認められた。息子の突然の死に悲嘆にくれていた両陛下は喜び、ライザを王族として認めることを快諾。さらにその場でローズとの婚約と、ライザを二人の養女として育てることの許可を求めたのだ。
通常未亡人が未婚の王族と結婚することに対しては他の貴族からある程度反発が予想されるが、ローズの結婚は白い結婚としていつでも貴族籍を元に戻せるものだったので、両陛下はこれも快諾した。元々王太子妃、将来の王妃として妃教育を受けていたローズ以上の令嬢などいない。ローズを改めて王族として迎えることができること、そして、二人の子どもとして可愛い孫と頻繁に会えるようになることを喜んだ。
「なんだか急にいろいろ決まってしまって、実感がわかないわ」
真っ白なドレスに身を包んだローズが困ったように首を傾げる。
「お母様!とてもとても綺麗です!」
その周りでは、ライザが興奮したようにはしゃいでいた。すっかり子どもらしく可愛くなったライザを見て、ローズは頬を緩める。
「ふふ、ありがとう。ライザもとっても可愛いわ」
「メアリーが可愛くしてくれました」
「サファイヤのネックレスが、あなたの綺麗な青い瞳にぴったりよ。あなたの瞳はお父様似ね。その美しい髪はお母様譲りよ」
ライザの艶を取り戻した黒髪がさらりと揺れる。
「亡くなったお父様とお母様が残してくれたものが、他にもあったんですね」
「ええ。たくさんあるわ。これから少しずつ教えてあげるわね」
二人は顔を見合わせると幸せそうに微笑む。
「また僕は仲間外れかい?」
「お父様!」
「やあ、僕のお姫様。今日は一段と可愛いね。さあ、そろそろ式が始まるよ。準備はいいかな?」
「あ、私、もう一度メアリーに髪飾りを直してもらってきますね」
そっと部屋を後にするライザをエリックは優しい笑顔で見送った。
「あの子は本当に敏い子だね」
「ええ、人の顔色を見るのが得意なの……きっと、今まで想像もできない苦労をしてきたせいだわ」
ローズはそっと目を伏せた。これまでどんなに辛い思いをしてきたのだろうか。もっと早くライザの存在に気が付いていれば、こんなことにはならなかっただろう。そう思うと胸が痛む。
「それを言うなら僕の方こそ罪がある。実の姪を不幸にしてしまった。お祖父様の遺言に従ってリアナ嬢の様子を気に掛けていたら、もっと早くライザの存在にも気付けたはずだ。失ったときは戻せないが、今までの分まで幸せにすると誓うよ。君も、ライザも」
「ええそうね。みんなで幸せになりましょう」
エリックはローズを優しく抱きしめた。
「さあ、僕たちの可愛い娘が待っているよ」
「ええ、一緒に行きましょう」
二人は手を取ると歩き出す。
◇◇◇
「エリック王太子殿下ばんざーい」
「ローズ妃殿下おめでとうございます!」
「ライザ姫様かわいい~!」
沢山の国民に熱烈に歓迎されて、三人は馬車の上から並んで手を振った。お祝いの花吹雪が良く晴れた空に華やかに舞い上がる。
「私のこともこんなにお祝いしてくれるなんて」
ライザの瞳は感動でうるんでいた。
「当り前よ。だってあなたはライアン殿下のたったひとりの遺児で、私たちの可愛い娘ですもの。お城で両陛下が首を長くして待っているわ」
「お祖父様が贈ってくださったドレスとお祖母様がくださった髪飾りのお礼を言いたいです」
「私が選んであげたかったのに、ずるいわ」
「ふふ」
あれからライザに逢った両陛下は、初めてできた孫娘をそれはそれは溺愛しており、ライザもすっかり懐いていた。
「お母様、私、本当にお母様に出会えてよかった。私をお母様の娘にしてくださってありがとうございます」
ライザは目に涙をいっぱい溜めて微笑む。
「お母様、大好き!」
「ライザ、私もあなたを心から愛しているわ。あなたは私の自慢の娘よ」
抱きしめあう二人。
「また僕を仲間外れにして。僕も二人を心から愛しているよ」
背中から抱きしめるエリックに二人は振り向いて微笑みかける。
「お父様も大好き!」
「私も愛してるわ」
おしまい
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