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第3章 おてんば姫の冒険録
26 眠れない夜
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♢♢♢
「!!!」
「おい、ティアラ。セバスが飯の準備ができたってよ」
「は、はぁい。今いく!」
自分用に張ったテントのなかで野営の用意をしていたティアラは、ペンダントを握りしめたまま真っ赤になっていた。
「ティアラ?」
「ひゃ、ひゃい!」
「どうしたんだお前」
様子のおかしいティアラに訝しげな目を向けるジャイル。
「な、何でもない!アデルお兄様とアデイラお姉ちゃんが変なこと言うからちょっとびっくりしただけっ!」
「アデイラ?姐さんもこっちにきてんの?」
「そ、そうなの!アデルお兄様、今アデイラお姉ちゃんと一緒にいるんだって。詳しくは聞いてないけど、明日には戻るから先に休んでていいって言ってたわ」
「そっか。じゃあ詳しいことは明日聞くとするか。野営の準備はできたか?」
「うん。寝袋とか用意したよ。一応お布団も持ってきたんだけど」
「夜は冷えるからできるだけ温かくして寝ろよ?」
「分かった!本当に火の番とかしなくていいの?」
「エリックとミハエルと俺でやるから、お前はしっかり寝とけ。体力ねぇんだから。いっつも無理しすぎなんだよ」
「別に無理なんて……」
「自覚がねぇから余計に心配なんだ」
ポンッと頭に手を置かれ、柔らかく髪を撫でられる。
「……子ども扱いしないでよ……」
「したことねぇよ」
いつもの行為が何だかやけに気恥ずかしくて、ティアラは思わず目をギュッと閉じた。そんなティアラを見てビシリと固まるジャイル。
(……これは俺を試してるのか!?)
その柔らかな頬に、唇に、思わず触れそうになる衝動をぐっと抑える。
ピシッとおでこに軽い衝撃を受けてティアラが飛び上がる。
「ったっ!もう!何するのよっ!」
「ばーか。油断してんじゃねぇよ」
「ゆ、油断なんかしてないもんっ!」
―――いっそ滅茶苦茶にしてやりたい。こいつが賢者だろうが女神だろうがそんなのはどうでもいい。俺が欲しいのはこいつだけなんだから……
この狂おしいほどの激情を、劣情を、この鈍い女は一体どれほど理解してるんだろうか。そんなところまで惚れてるのだから始末におえないのだが。
「ほんっと、馬鹿だわ……できもしねぇくせによ」
自嘲して小さく溜め息を漏らすジャイル。
「な、なによ。馬鹿馬鹿言わないでよねっ!」
プンプンと怒るティアラを生暖かい目で見つめる。ああ。子どもだ。こいつはまだまだ子どもなんだ。うん。子どもならしょうがねぇな。
「はいはい。ほら。取り敢えず飯行くぞ」
「うん!今日はシチューだって!えへへ。楽しみ~」
「一杯食ってでかくなれよ」
「も、もうでかくなったもん!」
「……どこが?」
「えっち!ジャイルのえっち!どこみてんのよっ!」
(あーあ。もう襲っちゃおうかなぁ。なんだこの可愛い生き物は)
ジャイルの苦悩は続く。
「そう言えば、師匠他に何か言ってたか?」
「……べ、別になにもっ!」
「そっか。まぁ、明日聞けばいっか……今夜は……眠れそうにねぇなぁ……」
ぼやくジャイルを不思議そうに見つめるティアラだった。
「!!!」
「おい、ティアラ。セバスが飯の準備ができたってよ」
「は、はぁい。今いく!」
自分用に張ったテントのなかで野営の用意をしていたティアラは、ペンダントを握りしめたまま真っ赤になっていた。
「ティアラ?」
「ひゃ、ひゃい!」
「どうしたんだお前」
様子のおかしいティアラに訝しげな目を向けるジャイル。
「な、何でもない!アデルお兄様とアデイラお姉ちゃんが変なこと言うからちょっとびっくりしただけっ!」
「アデイラ?姐さんもこっちにきてんの?」
「そ、そうなの!アデルお兄様、今アデイラお姉ちゃんと一緒にいるんだって。詳しくは聞いてないけど、明日には戻るから先に休んでていいって言ってたわ」
「そっか。じゃあ詳しいことは明日聞くとするか。野営の準備はできたか?」
「うん。寝袋とか用意したよ。一応お布団も持ってきたんだけど」
「夜は冷えるからできるだけ温かくして寝ろよ?」
「分かった!本当に火の番とかしなくていいの?」
「エリックとミハエルと俺でやるから、お前はしっかり寝とけ。体力ねぇんだから。いっつも無理しすぎなんだよ」
「別に無理なんて……」
「自覚がねぇから余計に心配なんだ」
ポンッと頭に手を置かれ、柔らかく髪を撫でられる。
「……子ども扱いしないでよ……」
「したことねぇよ」
いつもの行為が何だかやけに気恥ずかしくて、ティアラは思わず目をギュッと閉じた。そんなティアラを見てビシリと固まるジャイル。
(……これは俺を試してるのか!?)
その柔らかな頬に、唇に、思わず触れそうになる衝動をぐっと抑える。
ピシッとおでこに軽い衝撃を受けてティアラが飛び上がる。
「ったっ!もう!何するのよっ!」
「ばーか。油断してんじゃねぇよ」
「ゆ、油断なんかしてないもんっ!」
―――いっそ滅茶苦茶にしてやりたい。こいつが賢者だろうが女神だろうがそんなのはどうでもいい。俺が欲しいのはこいつだけなんだから……
この狂おしいほどの激情を、劣情を、この鈍い女は一体どれほど理解してるんだろうか。そんなところまで惚れてるのだから始末におえないのだが。
「ほんっと、馬鹿だわ……できもしねぇくせによ」
自嘲して小さく溜め息を漏らすジャイル。
「な、なによ。馬鹿馬鹿言わないでよねっ!」
プンプンと怒るティアラを生暖かい目で見つめる。ああ。子どもだ。こいつはまだまだ子どもなんだ。うん。子どもならしょうがねぇな。
「はいはい。ほら。取り敢えず飯行くぞ」
「うん!今日はシチューだって!えへへ。楽しみ~」
「一杯食ってでかくなれよ」
「も、もうでかくなったもん!」
「……どこが?」
「えっち!ジャイルのえっち!どこみてんのよっ!」
(あーあ。もう襲っちゃおうかなぁ。なんだこの可愛い生き物は)
ジャイルの苦悩は続く。
「そう言えば、師匠他に何か言ってたか?」
「……べ、別になにもっ!」
「そっか。まぁ、明日聞けばいっか……今夜は……眠れそうにねぇなぁ……」
ぼやくジャイルを不思議そうに見つめるティアラだった。
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