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第3章 おてんば姫の冒険録
14 怒らせちゃだめな人
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♢♢♢
その日トムは知った。やはり人間は恐ろしい存在であるということを。そして、世の中には決して怒らせてはいけない存在があるということも。
虹色の光の渦によって一気に空に舞い上がった冒険者達は、木の葉のようにクルクル宙に舞い、そのまま派手に落下した。死んではなさそうだが、気を失ってしまったのか、さっきからピクリとも動かない。
湖の周りは大きな亀裂が入り、あちらこちらに巨大な岩が転がっていた。力自慢の獣人が何人かかってもとても動かせないような代物だ。
(な、な、なんだべあの虹色の光の渦はっ!?でっかい大男が五人もいたのにあんなに呆気なく……オーラかっ!?あれが兄さ達が言ってた、戦うオーラだべかっ!)
「あーあ、また派手にやったな」
ジャイルが呆気なく気絶した男達を手際よく縛り上げる。
「ま、このくらいで済んだら御の字じゃない?」
ミハエルは手早く冒険者達から武器や装備品を取り上げた。
「ふーん。こんなもんか。どれも安物だね。せいぜいCランクってとこかな。こいつらどうします?」
ミハエルの言葉にアデルも思案顔だ。
「こんな屑ども生かしておく値打ちもないが、手に掛ける価値もないしな。身ぐるみ剥いでギルドに引き渡しておこう」
そういいつつ、アデルが産み出した人間大のゴーレムが冒険者達をぐるりと取り囲む。トムはいきなり現れたゴーレムたちにまたもや目を見張った。
「土からっ!モンスターがっ!」
慌てるトムにアデルは優しく笑いかける。
「ん?ああ、これは土魔法で作ったゴーレムだ。俺の言うことにしか従わない。危険な魔物じゃないから安心していいぞ」
「ま、魔法……じゃ、じゃあさっきのティアラさんのも魔法だべか……魔法ってなんでもできるんだな。すげぇもんだな……」
キラキラした目で納得した!と言わんばかりのトムだったが、アデルは思わず苦笑してしまう。
「ん?んー、あれな。正確に言うとあれは魔法とはちょっと違う。あれはただの魔力放出だ。威嚇みたいなもんか?」
そう、ただの魔力放出。しかし、それだけでここまでの威力だとは。正直勇者と呼ばれるレベルではないだろうか。Sランク冒険者である自分でさえ、精々後ろに下がらせる程度だ。地割れを起こし、岩や人が舞い上がるようなことにはならない。
「ただの威嚇でこんなことに……」
(絶対怒らしちゃ駄目な人だべーーーー!)
この世のものとは思えないほど美しい少女、まさに女神!?と思っていたら中身はとんだ魔王だった!しかも、
「お兄様待って。まだお仕置きは終わってないから」
凄みのある笑顔で言い切るティアラを見てますます震え上がった。
「姫様、お説教はほどほどにのう……」
のんきなセバスの声にティアラは苦笑いを漏らす。
「わかってるって。そんなに待たせないから」
(み、みんな倒れてるのにこのうえ何を……トドメ!?トドメを刺すだか!?)
そのとき男達がわずかに呻き声をあげ、意識を取り戻した。「あ、俺たちなんで……」「い、生きてるっ!?」トムはとっさに冒険者達の前に立ち塞がる。
「ま、ま、ま、待ってほしいだっ!こ、殺さないでやってけろ!」
「トム。そこをどいて」
その笑顔が怖い。
「こ、こいつら確かに悪人だが、い、命だけは助けてやってけろ!」
トムの必死の嘆願に、状況を理解した冒険者たちも慌てて地面に頭を擦り付けて懇願する。
「す、すみませんでした!ゆ、許してくださいっ!」
「お、お願いします!金でもなんでも払います!い、命だけは見逃してくださいっ!」
泣きながら口々に命乞いする冒険者達を、虫けらを見るような冷たい目で見つめるティアラ。
「駄目よ。許さないわ。私は獣人が大好きなの。もふもふの敵は私の敵よ」
「そ、そんなっ……」
絶望にうちひしがれる冒険者達の前でトムも必死に嘆願する。
「お、おねげぇしますだ……おらに、おらに免じて!こ、今回だけ……」
ティアラ以外のメンバーは、ティアラとトム、冒険者達のやり取りをただじっと見守っている。
「トム。どうしてそいつらを庇うの?ひどい目にあったのは、あなたでしょう?こいつらが憎くはないの?仕返ししたいと思わない?」
ティアラの静かな声にトムは歯を食い縛る。
「憎いだっ!憎くて憎くてしかたねーだっ!でも、でも……」
ポロポロと涙を流すトムをみて、冒険者達も息をのむ。
「お、お前、俺たちのために……ご、ごめん、ごめんなぁ。ほんとは、ほんとは助けて貰って感謝してたんだ……で、でも、上のもんには逆らえなくて」
「う、うう、ごめんなぁ」
一緒になってわぁわぁ泣き崩れるトムと冒険者達をみてティアラもため息を付く。
「……アデルお兄様、あとはお願いできる?」
アデルはティアラに近づくと頭をくしゃっと撫でた。
「ああ。まかせとけ。おいお前ら。お前らはこのままギルドに引き渡す。何があったか、きっちり喋ってもらうからな」
冒険者達はアデルとゴーレムに連れられ素直に立ち去っていった。
「ばーか」
ジャイルがツカツカとティアラに近付くと、顔をしかめるティアラの額に素早くでこぴんをする。
「痛っ!ちょっとジャイル!馬鹿ってなによっ!」
「おめーに悪役なんて似合わねーよ」
その言葉を聞いて地面にうずくまっていたトムはハッと顔をあげた。
「……うるさい」
「はいはい。じゃあ、アデル様が帰ってくるまで、一緒に後片付けしよっか」
「……みんなにも……迷惑掛けてごめんなさい……地面、割れちゃった。みんな怪我、しなかった?」
ミハエルの優しい言葉にしょんぼりするティアラ。
「トムも、怖がらせてごめんね」
優しく微笑むティアラにトムは思わず飛び付いた。
「ティ、ティアラ様ぁぁぁぁ」
その日トムは知った。やはり人間は恐ろしい存在であるということを。そして、世の中には決して怒らせてはいけない存在があるということも。
虹色の光の渦によって一気に空に舞い上がった冒険者達は、木の葉のようにクルクル宙に舞い、そのまま派手に落下した。死んではなさそうだが、気を失ってしまったのか、さっきからピクリとも動かない。
湖の周りは大きな亀裂が入り、あちらこちらに巨大な岩が転がっていた。力自慢の獣人が何人かかってもとても動かせないような代物だ。
(な、な、なんだべあの虹色の光の渦はっ!?でっかい大男が五人もいたのにあんなに呆気なく……オーラかっ!?あれが兄さ達が言ってた、戦うオーラだべかっ!)
「あーあ、また派手にやったな」
ジャイルが呆気なく気絶した男達を手際よく縛り上げる。
「ま、このくらいで済んだら御の字じゃない?」
ミハエルは手早く冒険者達から武器や装備品を取り上げた。
「ふーん。こんなもんか。どれも安物だね。せいぜいCランクってとこかな。こいつらどうします?」
ミハエルの言葉にアデルも思案顔だ。
「こんな屑ども生かしておく値打ちもないが、手に掛ける価値もないしな。身ぐるみ剥いでギルドに引き渡しておこう」
そういいつつ、アデルが産み出した人間大のゴーレムが冒険者達をぐるりと取り囲む。トムはいきなり現れたゴーレムたちにまたもや目を見張った。
「土からっ!モンスターがっ!」
慌てるトムにアデルは優しく笑いかける。
「ん?ああ、これは土魔法で作ったゴーレムだ。俺の言うことにしか従わない。危険な魔物じゃないから安心していいぞ」
「ま、魔法……じゃ、じゃあさっきのティアラさんのも魔法だべか……魔法ってなんでもできるんだな。すげぇもんだな……」
キラキラした目で納得した!と言わんばかりのトムだったが、アデルは思わず苦笑してしまう。
「ん?んー、あれな。正確に言うとあれは魔法とはちょっと違う。あれはただの魔力放出だ。威嚇みたいなもんか?」
そう、ただの魔力放出。しかし、それだけでここまでの威力だとは。正直勇者と呼ばれるレベルではないだろうか。Sランク冒険者である自分でさえ、精々後ろに下がらせる程度だ。地割れを起こし、岩や人が舞い上がるようなことにはならない。
「ただの威嚇でこんなことに……」
(絶対怒らしちゃ駄目な人だべーーーー!)
この世のものとは思えないほど美しい少女、まさに女神!?と思っていたら中身はとんだ魔王だった!しかも、
「お兄様待って。まだお仕置きは終わってないから」
凄みのある笑顔で言い切るティアラを見てますます震え上がった。
「姫様、お説教はほどほどにのう……」
のんきなセバスの声にティアラは苦笑いを漏らす。
「わかってるって。そんなに待たせないから」
(み、みんな倒れてるのにこのうえ何を……トドメ!?トドメを刺すだか!?)
そのとき男達がわずかに呻き声をあげ、意識を取り戻した。「あ、俺たちなんで……」「い、生きてるっ!?」トムはとっさに冒険者達の前に立ち塞がる。
「ま、ま、ま、待ってほしいだっ!こ、殺さないでやってけろ!」
「トム。そこをどいて」
その笑顔が怖い。
「こ、こいつら確かに悪人だが、い、命だけは助けてやってけろ!」
トムの必死の嘆願に、状況を理解した冒険者たちも慌てて地面に頭を擦り付けて懇願する。
「す、すみませんでした!ゆ、許してくださいっ!」
「お、お願いします!金でもなんでも払います!い、命だけは見逃してくださいっ!」
泣きながら口々に命乞いする冒険者達を、虫けらを見るような冷たい目で見つめるティアラ。
「駄目よ。許さないわ。私は獣人が大好きなの。もふもふの敵は私の敵よ」
「そ、そんなっ……」
絶望にうちひしがれる冒険者達の前でトムも必死に嘆願する。
「お、おねげぇしますだ……おらに、おらに免じて!こ、今回だけ……」
ティアラ以外のメンバーは、ティアラとトム、冒険者達のやり取りをただじっと見守っている。
「トム。どうしてそいつらを庇うの?ひどい目にあったのは、あなたでしょう?こいつらが憎くはないの?仕返ししたいと思わない?」
ティアラの静かな声にトムは歯を食い縛る。
「憎いだっ!憎くて憎くてしかたねーだっ!でも、でも……」
ポロポロと涙を流すトムをみて、冒険者達も息をのむ。
「お、お前、俺たちのために……ご、ごめん、ごめんなぁ。ほんとは、ほんとは助けて貰って感謝してたんだ……で、でも、上のもんには逆らえなくて」
「う、うう、ごめんなぁ」
一緒になってわぁわぁ泣き崩れるトムと冒険者達をみてティアラもため息を付く。
「……アデルお兄様、あとはお願いできる?」
アデルはティアラに近づくと頭をくしゃっと撫でた。
「ああ。まかせとけ。おいお前ら。お前らはこのままギルドに引き渡す。何があったか、きっちり喋ってもらうからな」
冒険者達はアデルとゴーレムに連れられ素直に立ち去っていった。
「ばーか」
ジャイルがツカツカとティアラに近付くと、顔をしかめるティアラの額に素早くでこぴんをする。
「痛っ!ちょっとジャイル!馬鹿ってなによっ!」
「おめーに悪役なんて似合わねーよ」
その言葉を聞いて地面にうずくまっていたトムはハッと顔をあげた。
「……うるさい」
「はいはい。じゃあ、アデル様が帰ってくるまで、一緒に後片付けしよっか」
「……みんなにも……迷惑掛けてごめんなさい……地面、割れちゃった。みんな怪我、しなかった?」
ミハエルの優しい言葉にしょんぼりするティアラ。
「トムも、怖がらせてごめんね」
優しく微笑むティアラにトムは思わず飛び付いた。
「ティ、ティアラ様ぁぁぁぁ」
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