短編小説集

日常と死

　御手洗は仕事の帰りの電車の中にいた。突然ホームの方で
「電車に轢かれて人の首が転がってたぞ!」と中年の男が大声を出していた。車内の人たちの緊迫感を御手洗は感じていた。
しかし電車が何駅か通過すると社内の緊張感が薄れていった
　ほんとに人が死んだのかどうかわからないが、世の中にとって他人の死などほんの数駅分の出来事なのだろうと御手洗は思った。電車を降り乗り換えの電車を待っていた御手洗、仕事の疲れでめまいがして何かの拍子抜けホームに落ちた、御手洗の顔前に急行電車が迫っていた、御手洗は人生の最後にさっき電車の中で聞いた人の死が自分のことだったのだと悟った。