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言葉で伝えて1
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ひとしきり踊り明かした後、今度は慶が兵藤を引っ張る形で外へ出た。その頃にはヒロの姿は見えなくなっていたが、どこからか生暖かい視線を感じていたので、ひっそり見守ってくれていたのだろう。今度会った時は質問攻めだろうが、まぁヒロ相手に惚気るのも悪くはない。
クラブを出てすぐ、慶はすぐに兵藤の唇を奪った。相手の同意もない半ば無理矢理なキスだったが、これ以上は我慢がならなかった。
勢いのまま重ねるだけのキスだったが、その甘美さに頭がクラクラする。好きな相手とするキスはこんなにも幸せを与えてくれることを、慶は今まで知らなかった。
「……お前からの接吻は二度目だ」
「え?」
「一度目は頬だったな」
図書館の閲覧室で悪戯のようにしたキスを、慶は思い出す。
「やっぱり気付いていたのかよ……」
「当然だ。あれだけ色々されて気付かない人間はいないだろう」
「気付いているなら反応してくれてもよかったのに」
散々話しかけ、頬を引っ張り、それでも反応してくれなかったからヤケクソ気味にキスをしたのだ。
「それは……その、すまん。迷いのあるうちはお前に会うわけにはいかなかったんだ」
「迷いって? あんだけ俺のこと無視したんだから、よっぽどのことじゃないと俺、怒るよ?」
「……既に若干怒っているように見えるが」
それはそうだ。兵藤がいない間、どれだけ寂しかったと思っている。慶はじとっとした目で兵藤を見つめた。
兵藤は一度で咳払いすると、すまなかったと慶に謝る。
「以前からお前といると今までに感じたことのない感情が湧き出ることがあったんだ。俺と出会ってその……すぐにあんな事があったのに、お前は無防備に俺の側で寝たりして。俺と居て安心してくれるのは友人冥利につきたが、男としては若干複雑だったりだな……」
「それ、兵藤の家に行ったときの話だよな」
その頃の慶は兵藤をまだ好きだと思っていなかった。いや、既に好意は抱いていたが、それを認めようとしていなかったの間違いだ。
「兵藤って、その頃から俺のこと好きだったの?」
返事の代わりに兵藤の耳が赤くなる。それが答えだった。
「恐らくそうだったのだろうな。ただ俺は誰かを性的に好きになったことがなかったから、その感情が何か分からなかったんだ」
「せ……性的……」
一度関係を持ってしまっていたが、それでも性的に好きなのだと言われると恥ずかしくて仕方ない。
「俺が若王子に詰め寄った日、あの日に俺は……そのだな……」
兵藤は何やら困った顔で言葉を濁す。慶が若王子の本性を知らず、どう伝えるべきか苦慮しているらしい。
「ああ、大丈夫。若王子のことなら俺も知ったから」
何も気にしていないと軽くそう言ったつもりだが、兵藤はどこか心配そうに眉を寄せた。慰めているつもりなのか、遠慮したように頭を撫でるのがくすぐったくてたまらない。
「いや、本当に気にしてないからさ。むしろ若王子の本性知って、兵藤への気持ちに気付けたから感謝しているくらいだよ」
「だといいが……お前は無理に明るく振る舞おうとする癖があるだろう。なんでもすぐに笑って誤魔化そうとする。俺には本当のことを言ってくれて構わない。それくらいは頼ってくれ」
真剣な目でそんなことを言われると、乙女心がくすぐられてしまう。本当に若王子のことはどうでもよいのだが、つい甘えたくなってしまった。
クラブを出てすぐ、慶はすぐに兵藤の唇を奪った。相手の同意もない半ば無理矢理なキスだったが、これ以上は我慢がならなかった。
勢いのまま重ねるだけのキスだったが、その甘美さに頭がクラクラする。好きな相手とするキスはこんなにも幸せを与えてくれることを、慶は今まで知らなかった。
「……お前からの接吻は二度目だ」
「え?」
「一度目は頬だったな」
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「やっぱり気付いていたのかよ……」
「当然だ。あれだけ色々されて気付かない人間はいないだろう」
「気付いているなら反応してくれてもよかったのに」
散々話しかけ、頬を引っ張り、それでも反応してくれなかったからヤケクソ気味にキスをしたのだ。
「それは……その、すまん。迷いのあるうちはお前に会うわけにはいかなかったんだ」
「迷いって? あんだけ俺のこと無視したんだから、よっぽどのことじゃないと俺、怒るよ?」
「……既に若干怒っているように見えるが」
それはそうだ。兵藤がいない間、どれだけ寂しかったと思っている。慶はじとっとした目で兵藤を見つめた。
兵藤は一度で咳払いすると、すまなかったと慶に謝る。
「以前からお前といると今までに感じたことのない感情が湧き出ることがあったんだ。俺と出会ってその……すぐにあんな事があったのに、お前は無防備に俺の側で寝たりして。俺と居て安心してくれるのは友人冥利につきたが、男としては若干複雑だったりだな……」
「それ、兵藤の家に行ったときの話だよな」
その頃の慶は兵藤をまだ好きだと思っていなかった。いや、既に好意は抱いていたが、それを認めようとしていなかったの間違いだ。
「兵藤って、その頃から俺のこと好きだったの?」
返事の代わりに兵藤の耳が赤くなる。それが答えだった。
「恐らくそうだったのだろうな。ただ俺は誰かを性的に好きになったことがなかったから、その感情が何か分からなかったんだ」
「せ……性的……」
一度関係を持ってしまっていたが、それでも性的に好きなのだと言われると恥ずかしくて仕方ない。
「俺が若王子に詰め寄った日、あの日に俺は……そのだな……」
兵藤は何やら困った顔で言葉を濁す。慶が若王子の本性を知らず、どう伝えるべきか苦慮しているらしい。
「ああ、大丈夫。若王子のことなら俺も知ったから」
何も気にしていないと軽くそう言ったつもりだが、兵藤はどこか心配そうに眉を寄せた。慰めているつもりなのか、遠慮したように頭を撫でるのがくすぐったくてたまらない。
「いや、本当に気にしてないからさ。むしろ若王子の本性知って、兵藤への気持ちに気付けたから感謝しているくらいだよ」
「だといいが……お前は無理に明るく振る舞おうとする癖があるだろう。なんでもすぐに笑って誤魔化そうとする。俺には本当のことを言ってくれて構わない。それくらいは頼ってくれ」
真剣な目でそんなことを言われると、乙女心がくすぐられてしまう。本当に若王子のことはどうでもよいのだが、つい甘えたくなってしまった。
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