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第1話
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ある日、俺はパーティーを追い出された──。
○
「きゃ~、ルーベルト様よ~!!」とあたり一面から歓声が舞い上がる。
「ああ、あれが魔王を討伐したルーベル様率いる勇者パーティーか」
説明ご苦労さん。
俺とルーベルト、そしてエルフのサーヤと聖女のアリヤの計四人の勇者ルーベルト率いるパーティーは昨日、人々と魔王軍の長年にわたる戦争に終止符をつけた。
それぞれが自分の役割をこなしたおかげで、魔王をあっけなく倒すことができたのだ。
え? お前は何をしたかって?
そんなの、決まってるだろ?
ふんで、今は城の前でパレードをやっている。
俺たちは土台の上に立ち、国王から直々の感謝の言葉をもらっている最中だ。
俺以外の三人は前に立ち、俺は後ろでポツリと影のようにいる。
ある意味、これは才能なのかもしれない。
何故か、俺は昔から影が薄い。
そのせいか、魔王戦でも俺だけ魔王から攻撃されなかった──。
これはチート能力に見えるが、俺は昔から力は弱いし初級魔法しか使えない。
そのため、正直言って無力で足で跨いだ。
だから、俺はポツリと「がんばれ──ッ!!」と応援をしていたわけだ。
もしかしたら、俺の応援のおかげで勝てたのかもしれないな!!
「おい、ギース。お前も前に来いよ」
俺に気を遣っているのか、こっちに来いと手で仕草をするが、正直言って、俺はモブだ。
モブはモブらしく背景としていた方がいい。
「いいや、俺はここでいいよ。何もしてないしさ」
そう作り笑いをする。
こんなパーティー抜かれるなら、早く抜けたい。
正直言って、変にみんなに気を遣ってしまう。
それは、俺が弱いからだ。
そもそも、俺がこんな強いパーティーに加入しているのは俺とルーベルトが幼馴染であり、親友だからだ。
そして、俺がここに残っているのはこいつたちのおかげで俺はいるだけで毎日、裕福な生活ができるからだ。
人としてどうかしていることぐらいわかっている。
でも、慣れというものは恐ろしく、気づけば罪悪感などなくなっていた。
「そ、そうか……お前がいいなら、それでいい」
正直、魔王戦は本当に大変だった。
この何もしていない俺でさえそう感じるのだ。
こいつらはもっと疲れているに決まっている。
でも……。
魔王討伐……どのくらいお金がもらえるかな……ふへへへ。
そんなことを考え、次の日のことだった──。
昨日は国王からの感謝の言葉をもらったあとは、俺たちは一日中、国民たちに手を振っていた。
今は思い出の酒場に来ている。
ここは穴場であり、人が来ることなんてほぼない。
それでも、酒の種類は少ないわけではなく、特に酒を使ったカクテルなんて最高だ。
売れない理由がわからないレベルに。
店内はそれといってそこらの酒場と変わらない。
店主は一人の白髭を生やしたおじさんだ。
「いやぁ~、昨日は疲れたな~」
「ほんとだよな、ご苦労さん、人気者さん」
そして、この場には俺とルーベルト二人で来ている。
「ここさ、覚えてるか?」
「ああ、忘れるはずないだろ。ここは俺とお前がパーティーを結成したところなんだから」
そう、この酒場は俺とルーブルトが魔王討伐を決意した場所だ。
「なあ、ルーベルト? 俺たちはこれからどこへ行くんだ?」
「ああ、それなんだが……お前に一つ言っておきたいことがある……」
すると、ルーベルトはいつになく真剣な顔をする。
なんだ……その目は。
わからない。
ルーベルトがそんなに真剣な顔をする理由がわからない。
「どうしたんだよ? そんなに真剣な……いいや、少し青ざめている気がする……」
「ああ、ごめんよ。本当にギース。ごめんよ……」
ぷるぷると身体を震わせながら、ルーベルトは一滴の涙を流す──。
「えっ──、お前……いきなりどうしたんだよ?」
嬉し泣き……なのか?
いいや、違う気がする。
ルーベルトは立ち上がり、俺に抱きつく──。
「な、なんだよ……本当によ」
こいつ、こんなにムキムキになりやがって……。
「俺たちはこれから、魔王のカケラを壊す旅に出る……」
「知ってるよ。そのくらい」
魔王のカケラとは、魔王を討伐した際に出る、魔王の分身のようなものだ。
全四つであり、一つ一つの力は弱いため、簡単に討伐できる。
しかし、しばらく放置しておくと力を持ち、のちに魔王へと変化する。
つまり、この魔王のカケラを全て潰して初めて魔王をこの世から消せるのだ。
「今までより、過酷な旅になる。どこに魔王のカケラぎあるかわからないから……」
ルーベルトの声が震えている。
「知ってるよそのくらい」
「だからだ……お前をこのパーティーに残していたら、いつお前が死ぬかわからない……だから──ッ」
そういうことかよ……ルーベルトが泣いていた理由は──。
「魔王討伐の金はやる……だから、頼む……お前はこれまでもいつ死ぬかわからない場面があった──だから、これ以上は危ないんだ……」
くそ、期待していた言葉なのに──。
俺の目からは溢れるほどの涙が出る──。
悔しいじゃねえか。
「ふん、そうさせてもらうよ──」
その日は二人、吐くまで飲んで愚痴や思い出を話した。
だって、もう二度と俺たちが会うことがないかもしれないからだ。
「じゃあ、三人で……」
「いいや、もう、新たなパーティーメンバーを準備している。かなりの強者らしいぜ」
「ふん、そうかよ……今まで楽しかったぜ」
「ああ、俺もだよ──」
こうして、俺は勇者パーティーを抜けた──。
○
「きゃ~、ルーベルト様よ~!!」とあたり一面から歓声が舞い上がる。
「ああ、あれが魔王を討伐したルーベル様率いる勇者パーティーか」
説明ご苦労さん。
俺とルーベルト、そしてエルフのサーヤと聖女のアリヤの計四人の勇者ルーベルト率いるパーティーは昨日、人々と魔王軍の長年にわたる戦争に終止符をつけた。
それぞれが自分の役割をこなしたおかげで、魔王をあっけなく倒すことができたのだ。
え? お前は何をしたかって?
そんなの、決まってるだろ?
ふんで、今は城の前でパレードをやっている。
俺たちは土台の上に立ち、国王から直々の感謝の言葉をもらっている最中だ。
俺以外の三人は前に立ち、俺は後ろでポツリと影のようにいる。
ある意味、これは才能なのかもしれない。
何故か、俺は昔から影が薄い。
そのせいか、魔王戦でも俺だけ魔王から攻撃されなかった──。
これはチート能力に見えるが、俺は昔から力は弱いし初級魔法しか使えない。
そのため、正直言って無力で足で跨いだ。
だから、俺はポツリと「がんばれ──ッ!!」と応援をしていたわけだ。
もしかしたら、俺の応援のおかげで勝てたのかもしれないな!!
「おい、ギース。お前も前に来いよ」
俺に気を遣っているのか、こっちに来いと手で仕草をするが、正直言って、俺はモブだ。
モブはモブらしく背景としていた方がいい。
「いいや、俺はここでいいよ。何もしてないしさ」
そう作り笑いをする。
こんなパーティー抜かれるなら、早く抜けたい。
正直言って、変にみんなに気を遣ってしまう。
それは、俺が弱いからだ。
そもそも、俺がこんな強いパーティーに加入しているのは俺とルーベルトが幼馴染であり、親友だからだ。
そして、俺がここに残っているのはこいつたちのおかげで俺はいるだけで毎日、裕福な生活ができるからだ。
人としてどうかしていることぐらいわかっている。
でも、慣れというものは恐ろしく、気づけば罪悪感などなくなっていた。
「そ、そうか……お前がいいなら、それでいい」
正直、魔王戦は本当に大変だった。
この何もしていない俺でさえそう感じるのだ。
こいつらはもっと疲れているに決まっている。
でも……。
魔王討伐……どのくらいお金がもらえるかな……ふへへへ。
そんなことを考え、次の日のことだった──。
昨日は国王からの感謝の言葉をもらったあとは、俺たちは一日中、国民たちに手を振っていた。
今は思い出の酒場に来ている。
ここは穴場であり、人が来ることなんてほぼない。
それでも、酒の種類は少ないわけではなく、特に酒を使ったカクテルなんて最高だ。
売れない理由がわからないレベルに。
店内はそれといってそこらの酒場と変わらない。
店主は一人の白髭を生やしたおじさんだ。
「いやぁ~、昨日は疲れたな~」
「ほんとだよな、ご苦労さん、人気者さん」
そして、この場には俺とルーベルト二人で来ている。
「ここさ、覚えてるか?」
「ああ、忘れるはずないだろ。ここは俺とお前がパーティーを結成したところなんだから」
そう、この酒場は俺とルーブルトが魔王討伐を決意した場所だ。
「なあ、ルーベルト? 俺たちはこれからどこへ行くんだ?」
「ああ、それなんだが……お前に一つ言っておきたいことがある……」
すると、ルーベルトはいつになく真剣な顔をする。
なんだ……その目は。
わからない。
ルーベルトがそんなに真剣な顔をする理由がわからない。
「どうしたんだよ? そんなに真剣な……いいや、少し青ざめている気がする……」
「ああ、ごめんよ。本当にギース。ごめんよ……」
ぷるぷると身体を震わせながら、ルーベルトは一滴の涙を流す──。
「えっ──、お前……いきなりどうしたんだよ?」
嬉し泣き……なのか?
いいや、違う気がする。
ルーベルトは立ち上がり、俺に抱きつく──。
「な、なんだよ……本当によ」
こいつ、こんなにムキムキになりやがって……。
「俺たちはこれから、魔王のカケラを壊す旅に出る……」
「知ってるよ。そのくらい」
魔王のカケラとは、魔王を討伐した際に出る、魔王の分身のようなものだ。
全四つであり、一つ一つの力は弱いため、簡単に討伐できる。
しかし、しばらく放置しておくと力を持ち、のちに魔王へと変化する。
つまり、この魔王のカケラを全て潰して初めて魔王をこの世から消せるのだ。
「今までより、過酷な旅になる。どこに魔王のカケラぎあるかわからないから……」
ルーベルトの声が震えている。
「知ってるよそのくらい」
「だからだ……お前をこのパーティーに残していたら、いつお前が死ぬかわからない……だから──ッ」
そういうことかよ……ルーベルトが泣いていた理由は──。
「魔王討伐の金はやる……だから、頼む……お前はこれまでもいつ死ぬかわからない場面があった──だから、これ以上は危ないんだ……」
くそ、期待していた言葉なのに──。
俺の目からは溢れるほどの涙が出る──。
悔しいじゃねえか。
「ふん、そうさせてもらうよ──」
その日は二人、吐くまで飲んで愚痴や思い出を話した。
だって、もう二度と俺たちが会うことがないかもしれないからだ。
「じゃあ、三人で……」
「いいや、もう、新たなパーティーメンバーを準備している。かなりの強者らしいぜ」
「ふん、そうかよ……今まで楽しかったぜ」
「ああ、俺もだよ──」
こうして、俺は勇者パーティーを抜けた──。
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