その求婚、お断りします!

月椿

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王都編12

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グライスと友人になってから一週間ほどたった頃。
レストは自室でシアラと三人のメイドに取り囲まれていた。


「あ、あの…」

「さぁ、レスト様?」


にっこりと笑ってメジャーを取り出したシアラにレストはだらだらと汗を流しながら後退りする。
しかし、すぐに後ろにいたメイドに肩を捕まれて逃げることは出来なかった。


「採寸致しますよ!」


そう言い放ったのを合図に四人のメイド達にレストは服を脱がされ、隅から隅まで採寸される。


「まぁ、腰細い!」

「着痩せするタイプなのですね!意外と胸が…!」


好き勝手言いながらも手早く採寸を終えたメイド達はシアラを除いて、部屋を出ていった。ぐったりとした様子で椅子に座るレストに、シアラは紅茶を用意するとやっと説明を始める。


「突然、失礼しました。実は今朝、王妃様からレスト様のドレスを作るように命令を受けまして。説明する時間もなかったので先に採寸をさせてもらいました」

「…はぁ…なんで王妃様が私のドレスを?」

「一ヶ月後にイーリア様の御披露目の舞踏会が行われるのですが、それにレスト様も参加されるようにとのことです」


ソルフェストの求婚を受け入れたイーリアは城で立ち振舞いやダンスなどの教育を受けていた。そういった教育が終わると正式にソルフェストの婚約者として貴族達に御披露目されるのだ。
その舞踏会に王妃はレストの参加を命じたようだった。


「イーリアと知り合いだから?」

「いえ、何でもレイズワルト王からの提案らしいですよ」

「え?レイズ様が?」

「はい、平和協定の話し合いに訪れるらしいのですが、舞踏会にも参加されるようですよ」


レイズとは手紙のやり取りを数度していたが会うのは村で別れて以来だ。
この国の中でもレイズが前とは違い立派な王になったと噂が広がっている。その噂を聞くたびにレイズが遠い人になったようだ、とレストは最近よく思うようになった。


「舞踏会は任せてください!ドレスもお化粧もレスト様の可愛さを私が引き出します!」

「…ほどほどでいいよ…」

「いけません!ルナシーク様も参加されるんですよ!目移りされないように可愛く着飾らないと!」


シアラは片手で拳を作りながら、張り切った様子でそう言った。レストはというと、すぐにルナシークを引き合いに出すシアラに苦笑いを浮かべている。


「ルナシーク様は関係ないでしょ」

「ソルフェスト様が婚約されて、女性達はルナシーク様に流れます!レスト様にはルナシーク様を夢中にしていただかないと!」

「…あのハイエナの群れに標的にはされたくないから、目立ちたくないな」


前の舞踏会を思い出してぞっとしたレストは、シアラの言葉に首を横に振った。ルナシークがレストに夢中になったら最後、ハイエナのような女性達に目の敵にされるのが目に見えている。
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