その求婚、お断りします!

月椿

文字の大きさ
上 下
25 / 88

25

しおりを挟む

「ルナシーク。こっちは終わったよ」

「兄上、すぐにこちらも動こう」


ルナシークは村の外で兄であるソルフェストを迎えていた。ソルフェストは乗ってきた白い馬から降りると頷いて、後ろを向く。
ソルフェストの後ろには騎士団がズラリと列を組んで並んでいた。


「すぐに動けるように準備を」

「はっ!!」


騎士団に指示を出してソルフェストがルナシークと向き直ると同時に、息を切らしながら走ってきたカルトがルナシークの名を呼ぶ。
カルトはルナシークの前まで来ると息を整えてルナシークにすがり付く。


「ねぇちゃんが!ねぇちゃんが!」

「落ち着け。レストがどうした」

「ねぇちゃん、レイズさんと出掛けて…。仕事の事で聞きたいことがあったから捜したんだけど、ねぇちゃんのお気に入りの草原の近くで人が倒れてて…!とにかく来てよ!王子様!」

「ルナシーク、行っておいで。こちらで準備を整えておく」


ルナシークはソルフェストに頷くとカルトの後について走り出した。





草原の手前まで来たときに人影が見えてルナシークは走り寄った。黒い服を纏って血を流していた男はルナシークを見るとすぐに口を開いた。


「申し訳ありません…。護衛についていた他の者達にやられました…。ヴァネット様に買収されてたようで…」

「くそ!」

「ご、護衛…?ねぇちゃんに…?」


ルナシークがソルフェストを迎えに村から出てる間を狙ったのであろう。
ルナシークは手がかりを探すためにすぐに草原へと走っていく。
少しした所にごつい男達が倒れていた。
ルナシークは慎重に近づく。


「あっ!これ!」

「…レストが持っていた護身用の…」


男達の周りに極彩色のキラキラ光る粉と小瓶を見付けた。ルナシークとカルトは吸い込まないようにハンカチで口を押さえる。カルトはレストがレイズに渡すために持っていたグローブを拾い上げた。


「カルト。兄上を呼んでこれるか?」

「うん、大丈夫!…ねぇちゃん…大丈夫かな…」

「心配するな。必ず助ける」


心配そうにするカルトの頭をぽんと撫でるとルナシークはしっかりと頷いた。
カルトはそんなルナシークに頷き返すとソルフェストを呼びに戻った。


「さぁ、レストの居場所をはいてもらうぞ」


ルナシークは男達を縛り上げてから、叩き起こした。そして、合流したソルフェストと共に居場所を吐き出させると、騎士団と共にそこに向かったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

観音様の鈴

かきこメーカー
ホラー
むかしむかしある村で畑仕事をしていると鬼が現れ「若い娘を差し出せ」と言ってきた。 その娘になんと田五作の幼馴染の千代が選ばれてしまう。

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

婚約破棄後の荒れた日常を立て直したい!

梨花
恋愛
結婚式まであと2カ月になったあたしはいきなり婚約者から婚約破棄を告げられた。 別の女の子を妊娠させたのだと言われ、あたしは彼の両親の前で証を書かせて弁護士に後のことを依頼したはずが、職場に電話してくるし、仕事を終えてあたしの会社に突撃してきた。 あたしに平和な日常をください!

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

処理中です...