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12月21日(木)〈葵〉
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朝8:00。
いつもなら今頃コーヒーショップに着いているであろう時間に俺はまだ家にいた。
昨日バイトから帰って来て、疲れたまま適当に部屋の何処かに放りなげたニット帽が未だに見つからず、ずっと探していて今に至る。
けれどそろそろ家を出ないとコーヒーショップに寄る時間がなくなってしまう。仕方ない、今日は中学まで使っていたニット帽を使うことにしよう、と壁に掛けてあるニット帽を手にして家を出た。
本当はこの三つ編みのおさげが付いたニット帽は子供っぽいから被りたくないのだが、彼に朝の寝癖でぐちゃぐちゃな頭を見られるのはもっと嫌なので仕方ない。
いつもより少し足早に歩き、コーヒーショップへ着いた時には少し息が切れてしまっていた。
オーダーの列に並びながら、今日のニット帽について何か言われるだろうか、と考える。
どんな反応をするだろうか、そもそも気づいてくれるのだろうかと悶々としていると自分の番が来ていた事に気付き、一歩進みカウンターの前に立った。
そうだ、急いで来たからすっかり忘れそうになってしまったが、今日はマシュマロも追加で頼もうとしていたんだった。思い出したらなんだか急に緊張して来てしまって、少し吃り気味になりながらオーダーを伝える。
「ココアに…その…マシュマロ付きで」
彼が値段をレジに打ち込むのを確認して、値段はいくらだろうと画面を見るといつも通りの値段だったため、間違ってないか彼に確認する。
「あの、値段一緒なんですか…?」
「うん、俺がおススメしたしおまけ。」
「でも…」
「いつも来てもらってるしさ。」
そう言われてしまえば、これ以上断るのは逆に失礼だろう、と思い素直にありがとうございます、と感謝した。
少しでも感謝の気持ちが伝わるように、ときちんと彼の目を見て。
いつも通りの料金をカウンターに置きココアが出来るのを待っていると、今日も彼がカップに何かを書いた後爽やかな笑顔でカップを渡した。
今日は何が書かれているかな、とワクワクしながら確認するとそこには"今日のニット帽可愛いね"と書かれており、俺の全思考は停止し顔は火がついたように真っ赤になってしまった。
やばい、こんな反応したら好きだってことがバレてしまう。
嬉しさと何だか色々な気持ちが綯交ぜになり、ぐちゃぐちゃになった頭でどうしようと何とか打開策を見出そうとする。
困った時はこれしかない、と彼にお礼だけ告げ一目散に店を出て行った。
店を出てしばらくしてから立ち止まると、自分の鼓動がどくどくと耳まで鳴り響いているのに気づき、それが走ったせいなのかはたまた彼のメッセージのせいなのかもう分からなくなっていた。
いつもなら今頃コーヒーショップに着いているであろう時間に俺はまだ家にいた。
昨日バイトから帰って来て、疲れたまま適当に部屋の何処かに放りなげたニット帽が未だに見つからず、ずっと探していて今に至る。
けれどそろそろ家を出ないとコーヒーショップに寄る時間がなくなってしまう。仕方ない、今日は中学まで使っていたニット帽を使うことにしよう、と壁に掛けてあるニット帽を手にして家を出た。
本当はこの三つ編みのおさげが付いたニット帽は子供っぽいから被りたくないのだが、彼に朝の寝癖でぐちゃぐちゃな頭を見られるのはもっと嫌なので仕方ない。
いつもより少し足早に歩き、コーヒーショップへ着いた時には少し息が切れてしまっていた。
オーダーの列に並びながら、今日のニット帽について何か言われるだろうか、と考える。
どんな反応をするだろうか、そもそも気づいてくれるのだろうかと悶々としていると自分の番が来ていた事に気付き、一歩進みカウンターの前に立った。
そうだ、急いで来たからすっかり忘れそうになってしまったが、今日はマシュマロも追加で頼もうとしていたんだった。思い出したらなんだか急に緊張して来てしまって、少し吃り気味になりながらオーダーを伝える。
「ココアに…その…マシュマロ付きで」
彼が値段をレジに打ち込むのを確認して、値段はいくらだろうと画面を見るといつも通りの値段だったため、間違ってないか彼に確認する。
「あの、値段一緒なんですか…?」
「うん、俺がおススメしたしおまけ。」
「でも…」
「いつも来てもらってるしさ。」
そう言われてしまえば、これ以上断るのは逆に失礼だろう、と思い素直にありがとうございます、と感謝した。
少しでも感謝の気持ちが伝わるように、ときちんと彼の目を見て。
いつも通りの料金をカウンターに置きココアが出来るのを待っていると、今日も彼がカップに何かを書いた後爽やかな笑顔でカップを渡した。
今日は何が書かれているかな、とワクワクしながら確認するとそこには"今日のニット帽可愛いね"と書かれており、俺の全思考は停止し顔は火がついたように真っ赤になってしまった。
やばい、こんな反応したら好きだってことがバレてしまう。
嬉しさと何だか色々な気持ちが綯交ぜになり、ぐちゃぐちゃになった頭でどうしようと何とか打開策を見出そうとする。
困った時はこれしかない、と彼にお礼だけ告げ一目散に店を出て行った。
店を出てしばらくしてから立ち止まると、自分の鼓動がどくどくと耳まで鳴り響いているのに気づき、それが走ったせいなのかはたまた彼のメッセージのせいなのかもう分からなくなっていた。
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