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〇07 君達の心変わりが怖いから 0207
しおりを挟むその日。
僕は人を人形にする力を手に入れたようだ。
きっと、不幸な境遇にある僕を哀れんで、神様が与えてくださった力に違いない。
だから僕はさっそく、いつも見下してくるクラスメイトや、小うるさく説教してくる教師、無関心な親を人形にしてやった。
でも、大きさはそのままだからさ。
ただの物になっても奴らは僕の生活の邪魔をしてくるんだ。
仕方ないから、粗大ごみの袋にいれて収集車に引き取ってもらったよ。
ああ、せいせいした。
そんな僕は、前より性格が明るくなったのかもしれない。
以前はやろうとすら思わなかったバイトをやってみようと思える気になったし、学校にだって毎日登校できるようになった。
新しい趣味もできたんだ。
毎日自慢の自転車にのって、町をめぐってるよ。
まるで生まれ変わったような気分だ。
余裕があると色んな事が見えてくる。
よくよく考えたら昔の僕の行いはだめだったのかもしれない。
虐めてくる奴らの言葉なんて真に受けなければよかったんだ。
そうすれば、あの教師だって僕の事を、面倒くさい生徒だって認識をせずにすんだだろうし。
両親だって、期待できないバカ息子だなんて考えなかったはず。
もうちょっと、強気で物を言えるようになれればな。体を鍛えておけばよかったかな。
そんな僕はある時、アルバイト先でかわいい女の子に恋を落ちた。
後輩だったから、先輩として色々教えてあげないとな。
彼女の前では、完璧に普通の僕を演じないと。
でも、ちょっと疲れてきた。
あの子には絶対に過去の事は知られたくないのに。
ボロを出さないか心配だ。
幻滅されると思ったら怖くて怖くてしかたがない。
そんな恐怖心を抱くくらいなら、恋なんてしなければよかったのかも。
でもやっぱり好きだって感情を抑える事はできなかったよ。
僕は彼女と仲良くなろうと必死だった。
必死で普通の僕を演じた。
たまに普通ってなんだっけって思うけど、昔の事を思い出せば簡単だった。
ああじゃないようにすればいい、それだけなんだから。
でも、ある時昔の知り合いが話しかけてきて、過去の事を知られてしまったんだ。
もう彼女の顔が見れない。
もし、彼女もあいつらみたいな表情をしてたらと思うと、だめだった。
悩みに悩んだ末、僕は決断した。
そうだ、人形にしてしまおう。
彼女に意思なんて必要ない。
人形にしてしまえば、幻滅される事も、幻滅した彼女をみて僕が幻滅してしまう事もない。
いっそ、みんな人形にしてしまおう。
そうすれば、誰かに幻滅される事も、幻滅した誰かを見て僕が幻滅する事もなくなるんだから。
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