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〇01 ばけもの子供の物語
しおりを挟む子供達の間で噂になっている化物の子供のお話をします。
化物の子供は、暖かさや寒さ、おいしさやまずさ、痛さや痛くないが分かりませんでした。
だから、思い出すのも苦労するような昔、子供達は一緒に遊んだ化物の子供をおかしいと思い、化物の子供と呼ぶようになったのです。
だっておかしいですよね。子供達はお菓子を食べておいしいと感じるのに、化物の子供は何も感じないのですから。
だけど、化物の子供から遠ざかる子供達とは違って、近づいていく子供がいたのです。
化物の子供と同じ年の男の子は、一緒に遊ぶようになりました。
体がだるくなるような暑さの日に太陽の日差しを避けようとしなくても、顔が真っ青になるくらいまずい食べ物を食べて顔色一つ変えなくても、遊んでいたボールで頭を怪我して平然と立っていても、男の子は化物の子供と遊ぶのが楽しかったので、いつも一緒にいました。
だって、たとえ感じなくても
木陰で汗の流れる体を休ませている時は、いつも気づかって一杯の水筒の水を差し出してくれます。作ってきた手作りお菓子を食べさせたときは、嬉しそうに笑ってくれます。つまづいて怪我をした時は、すぐにかけよってきて心配そうに手当てをしてくれてます。
化物の子供は、化物の子供である事が気にならないくらい、心の優しい子供だったのです。
ある日、二人が一緒に遊んでいると、いつもは遠くで眺めている子供達が集まってきました。
その子供達は男の子を指差して、口をそろえて言います。
化物の子供と一緒に遊ぶなんて、おまえも化物なんじゃないか、と。
化物の子供は男の子にもう一緒に遊ばないでと、泣きながら言いました。
そしてその日から、化物の子供は男の子の前に現れなくなってしまいました。
男の子は不思議に思いました。
だっておかしいですよね。化物の心を持った人はたくさんいるのに、その人達はとっても優しい心を持った子を化物と言うんですから。
皆と違うからでしょうか。同じではないからでしょうか。
それは悪い事なのでしょうか。
男の子は何日も探し回って、とうとう化物の子供を見つけ出しました。
君は化物なんかじゃないよ。だから一緒にいていいんだよ。
そう言ってつないだ男の子の手は、とても優しく温かでした。
温もりを感じていたのです。
遠い遠い昔に、何かの事故で暗く冷たい場所に化物の子供は閉じ込められていました。
ずっと一人きりで、何もなくて、真っ暗でした。
そんな所にいたら誰だって、とっても悲しくて、さみしくて、不安になってしまいますよね。
だから化物の子供は感覚を閉じていったのです。
心が痛くならないように。
ともあれ、化物の子供は化物ではありませんでした。
男の子と一緒に遊ぶその子供はしだいに、おいしさや痛さも分かるようになり、化物の子供とは呼ばれなくなっていきました。
変わりに今は、
この世界に生まれた時に、お父さんとお母さんに、その綺麗な髪と綺麗な瞳にちなんで名づけられた名前で呼ばれるようになりました。
「一緒に遊ぼう、カレン」
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