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第一章 ウルベス・ジディアラーツ
第10話 この婚約者様、結構天然です
しおりを挟む「でも、ええと……よろしいんですの?」
ウルベス様は私を支えてくれながら不安そうな表情で話した。
「君をここで放ってはいけない」
彼は非常に現実的な考え方をする人間だ。
常に効率を考えて行動しているし、感情というあいまいな物に行動を左右される事をひどく嫌う。
エルフは元々そういう考え方をする者が多いのだが、ウルべス様の場合は違う。
彼は子供の頃はそれなりに人間と同じように考え、行動する人物だったらしい。
それが変わってしまったのは……、
かつて、特に理由もなく「ただ」始まったイジメがきっかけだ。
そんな事があった為に、効率的な物事の考え方に拍車がかかってしまったのだ。
彼は不効率な行動をとる人間の事が理解できない。
そして原因のよく分からな心の動きをひどく嫌っていた。
だが、そう思っているはず彼はひどく躊躇いながらも、私にかける言葉を続けてくれた。
「その、このような事を言うと……これまでの私の態度を知っている君からすれば奇妙に思われるだろうが、今の君を一人にして部屋に置いておくのは……非情に心苦しいのだ。それは本当だ」
絶望的なほど嫌われてはいないらしい。
「ウルべス様、ありがとうございます。やっぱり、いつもは少し怖い態度をされてますけど、本当は優しい方なんですわね」
「君は私の事を何だと……。いや、すまない。病人に長々とこんな話をさせるべきではないな。ベッドに横になったらどうだ? 寝るのが嫌なら腰を落ち着けて大人しくしているべきだ」
「そうですわね。自分の健康に気を配れるようになる事も大切ですわ」
そう言ったウルべス様はごく自然な動作で私に手を差し出してきて、そして自分でその行動に驚いていた。
そして、戸惑いの声を発する。
「この手は、何だろうか」
ゲームでのプレイと前の周回で見ていたとはいえ、そのボケ方は困る。
この人は結構天然だ。
ここでからかうのも面白いが、それでは彼からの好感度は得られまい。
などと、そんな理由付けをしてみたが、そんな合理的な考えはする必要はない。
あれこれ難しく考えるより、心のままに二週目は行動してみよう
「ふふ、ありがとうございます。貴方の優しいその手は、きっとこうする為にあるんですよ」
私は、微笑みながら彼の手をとって、ゆっくりとベッドへと移動していった。
その後は、ウルベス様からお仕事の話を聞いたりしながら、時間を過ごした。
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