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第一の壁

01 ひょんなことから思い出す

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 私は乙女ゲームの世界に転生してしまったらしい。

 それを思い出したのは、つい三日前だ。

 それは、私の執事、クリスハード・ラナトクスが「前世」がどうたら「ゲーム」がとうたら言い出して、暫くたってからの事。

 思い出したきっかけ自体は偶然起きたものだった。

 休日に、普段からつきあいのあるマローナという貴族令嬢と共に、出かけていたのだが、その時に毒蛇にかまれてばったり倒れてしまった。

 それで、三日三晩生死の境をさまよったからなのか、起きた時に前世の事を思い出していた。

 私の前世の名前は相田くりす。
 現在の名前は、フラウメント・パール・ダイシィシャード。

 立場は貴族。
 性別は少女。ここが違ってたら困る。
 年齢は、十七歳。

 食べる物も、住む所にもまったく困っていない。
 いわるゆる貴族令嬢というやつだ。

 けれど、問題なのは、私が乙女ゲームという世界に転生してしまったという点。

 私が生きていた前世には、乙女ゲームなるものがあった。

 そのゲームの世界に、この世界はそっくりだ。

 それで、私の執事も、どうやら私と同じ世界から転生していたらしい。

 歴史やら、国の話やらがばっちりかみ合った。

 そこで、ただ同郷の人間だと喜び合えれば良かったんだけど。

 幼い頃から私に仕えていた彼には一つの地雷があった。

 クリスハード・ラナトクス。

 前世で彼は、私のストーカーだったのだ。

「お嬢様、最近私と目を合わせてくれませんよね、どうかなさったんですか?」
「そっ、そんな事、なななっ、ないわよっ」
「とても、狼狽してらっしゃいますが、突っ込んで聞いてもよろしいですか」
「そんな事ないったら! 気のせいよっ!」

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