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〇117 そんな彼氏がいてたまるか!
しおりを挟む私が今いるのは、飾り付けられた広い部屋の中。
友人の家の、リビングだ。
部屋のあちこちには、折り紙や花が散りばめられている。
コーディネートカラーは友人の好きなパステルで統一。
そこは、素敵な空間だった。
私の友人菜畑ナナハは、数週間後に結婚する。
ぼんやりおっとりしているナナハとは、高校からずっとつきあいのある友人。
皆が結婚していくなか、ナナハはずっと独身だったから、どうなるか心配していたのだ。
別に結婚が女の幸せの全てというわけじゃないけど、ナナハの性格を考えるとパートナーがいた方がいいだろうと思って。
だって落とし物をしても「あらあら落としちゃったわね~」とか、遅刻しそうになっても「あらあら、遅れちゃうわ~」ってのんびり微笑むだけなんだから。
誰かが傍で支えてくれた方が良いに決まってる。
でも、そんなナナハももう少しで独身卒業。
ちょっと感慨深くなってしまう。
私やナナハも含めた、友人達数人は高校卒業から定期的にずっと連絡しあっているけど、ナナハだけが一人独身だったのよね。
そんなこんなで、お祝いをかねた独身卒業パーティーを開催する事になった。
ナナハに独身の最後の時間を楽しんでもらうためにと、私達がパーティーを企画して、準備したのだ。
そこで、友人に誘いだされて、隣町にショッピングに行っていたナナハが帰ってくる。
「あらあら~、お部屋がこんなに素敵になっちゃって~、今日は何かお祝いでもあったかしら~」
おっとりとほほ笑むナナハは喜んでくれたようだ。
「まあ、私の為に~? 嬉しいわ~」
そこからは、和気あいあいとした雰囲気でパーティーが始まった。
皆の中心はもちろん、本日の主役。
話をするうちに、自然とナナハの相手の話題になった。
ナナハによると、出会いは街角の同じカフェで落とし物を拾ってもらった事がきっかけらしい。
そこから、波長があってお互いにデートするようになり、だんだんと惹かれ合うようになったのだとか。
最初は楽しい雰囲気だった。
ナナハは相手にぞっこん見たいで、しきりに褒めていたから。
でも、話を聞いていると、そのうち違和感がこみあげてきた……。
「そうそう、これあの人がくれたのよ~、いつも持ち歩いて勉強しなさいって~」
そう言ってナナハが見せてきたのは、あやしい魔方陣がたくさん書かれたノートだった。
私も、友人達も一斉に言葉が途切れる。
「あとね~、この水晶を持ち歩いていなさいって。悪い霊がよってこなくなるんですって~」
次にナナハが見せてきたのは、大きな水晶。
霊感商法という言葉が頭によぎった。
私も友人も、言葉につまる。
「それでね~、あの人ったらこの何だかよくわからない四角い機械を、お守りがわりに持ち歩いていなさいって~」
そして最後にナナハは、何だかよくわからない四角い機械を、見せてきた。
盗聴器ハンターをしている友人が、盗聴器を見つけるための専用の機械を出してかざした。
けたたましい警報音が鳴り響いた。
私達は一斉にナナハに詰め寄る。
そして口々に「だまされてるのよ!」「考え直して!」「危ない奴だわそいつ!」と語り掛けるのだった。
パーティーなんかしている場合じゃない。
友人の危機だ。
「そんな事ないわよ~。あの人はとっても良い人よ~」
しかしナナハは、やんわりと否定。
「私が怪我した時も、将来なにかあったら大変だっていって、とってもすごい保険をすすめてくれたのよ~。ちょっとお金がかかるけど、これなら未来も安心ね~」
受取人は誰になっているのそれ、と聞いたら。
ナナハがぞっこんしている相手の方だった。
普通ならそこで騙されてるって、利用されてるって気づくものでしょ!
なのに、ナナハは気が付いていないようだ。
どこからどう聞いても怪しい人にしか思えないのに!?
心配になった私は、友人に相手の事を問いかける。
すると、相手の人間は、黒い服を好んできていたり、部屋の中に魔方陣を書いていたり、変な呪文を呟いていたりするらしい。
その話を聞いたあとパーティー参加者は、全員同じことを口にした。
「「「結婚やめなよ、その人絶対危ない人だから」」」
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