43 / 150
〇43 お前ら敵同士だろ!なのになんでそんな分かり合ってるんだよ
しおりを挟む俺は目の前の光景につっこみたい。
東の国と西の国の大将が、第三の国の軍に囲まれていた。
だが、二人はあうんの呼吸でこれを撃退していっている。
流れるようなその動作は、少しも互いの行動を邪魔していない。
それどころか、二人の動作は元から二人用の演舞か何かだったかのように錯覚させてしまう。
背中合わせで、互いの状態を見る事もないそれは、完璧だった。
東の国の男大将はモーニングスターで押し寄せる第三国軍を薙ぎ払う。
西の国の女大将は大剣で押し寄せる第三国軍をきりはらう。
その息はぴったりだ。
どちらの国も、自分の背中に通す敵がいない。
「おう! 漁夫の利を求めてやってきた、お前ら! 残念だったな! 俺の背中を抜けられると思うなよ」
「神聖な戦いを第三者に横からかすめとられるわけにはいかない! 私より先に一歩でも進めるとは思わない事ね!」
そんなに連携とれてるけど、お前ら敵同士だろ。
味方じゃないよな。
ついさっきまで、第三国軍に包囲されるまでは、お互いで争いあってただろ。
なんでそんなに息ぴったりなんだよ。
俺は東の国の人間だ。
西の国とは長い間争いあっている。
仲間達は大勢やられたもんさ。
だから許せない。
必ずこの手で西の国の大将の首をとってやる。
そう誓ったんだ。
でも西の国の大将は、女のくせに強かった。
何度挑んでも引き分け以上の結果にならない。
他の敵は、簡単に倒せるのに、なぜかこいつと戦うと肝心な時にモーニングスターの標準が狂うんだ。
もしかして怪しい力でも使っているんじゃないだろうか。
なんだかずっと見つめていると、動機がしてくるし、体も熱が出たように厚くなってくる。
おとぎ話で伝えられている魔女かなんかの生き残りに違いない!
おのれ魔女め!
俺は今までの恨みを忘れないぞ!
次に会った時は必ず倒してやるからな。
私は西の国の人間。
西の国と東の国は、長い間争いあっている。
戦場はいつも膠着状態だったらしい。
けれど、百年の一度の才女と呼ばれたこの私が軍に入ってからは、どんな戦場でも負けた事がなかった。
西の国が東の国に勝つのは、時間の問題だと思ったくらいだ。
けれど、東の国には強い人間もいた。
その男は、モーニングスターを持った男性だ。
どんな急所をねらっても、必ずこちらの攻撃が防がれてしまう。
なんて強者なのだろう。
気を抜いていたらこちらがやられてしまいそう。
油断ならない男だった。
私は戦場でその男を見つけると、その姿をもっとよく見たい、もっと近くに行きたいと思ってしまう。
きっと負けすぎて殺意が大きくなりすぎてしまったのだろう。
憎悪も強くなりすぎて、戦いの判断が鈍ってしまっているのかもしれない。
彼との戦いはこれまでにずっと引き分けだった。
果たして、いつになったら、決着がつくのだろうか。
ああ、またやってる。
東の国の大将も、西の国の大将もきっと気が付いていない。
互いにアイコンタクトをとってるんだけれど、無意識にやっているようだ。
伏兵に気が付いた東の男大将が西の国の女大将に視線をおくって、囮になる。
その間、西の国の女大将が伏兵の背後へ移動していた。
それはまるで、長い間一緒に行動してきたみたいな、連携だ。
第三国の大将である俺は、その光景を見てため息をつくしかなかった。
せっかく俺の先祖が東の国と西の国をいがみ合わせて、後世の子孫である俺達が漁夫の利を狙えるようにしてくれたというのに。
あの分では、それは難しそうだな。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件
遥 かずら
恋愛
両親が仕事で家を空けることが多かった高校生、栗城幸多は実質一人暮らし状態。そんな幸多のお隣さんには中学が一緒だった笹倉秋稲が住んでいる。
彼女は幸多が中学時代に告白した時、爽やかな笑顔を見せながら「ずっと友達ならいいですよ」とズッ友宣言をしてきた快活系女子だった。他にも彼女に告白した男子も数知れずいたもののやはり友達止まり。そんな笹倉秋稲に告白した男子たちの間には、フラれたうちに入らない無傷の戦友として友情が芽生えたとかなんとか。あくまで友達扱いをしていた彼女は、男女関係なく分け隔てない優しさがあったので人気は不動のものだった。
「高校生になってもずっとお友達だよ!」
「……あ、うん」
「友達は友達だからね?」
やんわりとお断りされたけどお友達な関係、しかもお隣同士な二人の不思議な関係。
本音がつかめない女子、笹倉秋稲と栗城幸多の関係はとてもゆっくりとした時間の中から徐々に本当の気持ちを運ぶようになる――
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる