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〇08 優しい世界の姫と憎しみの騎士

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 涙に暮れる、お姫様。

 一見すると、可哀そうで可哀そうで。

 でも、誰も彼女を助けてはくれません。

 暗闇の中、牢屋の中でうずくまるお姫様がいます。

 お姫様は、悲しそうな瞳で、自分を閉じ込めた人を見つめました。

 お姫様を閉じ込めた人は騎士でした。

 本来なら、お姫様を守らなければならない存在です。

「どうして、こんな事をしたのですか?」

 悲しみに暮れる姫。
 しかし、問いかけられた騎士は憤っていました。

「理由が分からないのですか? 実は、私は前々からずっと貴方を憎んでいたのです。きれいごとしか見えないあなたを。あなたのせいで大勢が死んだ」

 騎士は憎々しい表情をお姫様に向けます。

 その形相のあまりの恐ろしさに姫は悲鳴をあげました。

 事実をつきつけられてなお、お姫様は信じられませんでした。

、長年忠実だった自分の騎士が、こんな蛮行に走るような事は考えられなかったのです。

 皆が皆、言葉を尽くせば仲良くなれる。

 お姫様は、自分が生きているのはそんな世界だと信じていたからです。

「どうしてこんな事を? 教えて、何か理由があるんでしょう?」
「それは、あなたがあまりにも愚かだったからです」

 お姫様は精いっぱい理由を考えてみましたが分かりません。

 そんなお姫様を見て、騎士は話をする意味もないと去っていきました。

 残されたお姫様は、ずっとそのままです。

 最後まで理由が分かりませんでした。

 彼女の身に訪れた結末は、あえて記さない事にしましょう。





 とある国で戦が起きた。

 それは、長年いがみ合っている隣国との戦だった。

 けれど、国を率いる若き姫は、戦には反対していた。

 戦ってはならない。

 血を流す事はいけない事。

 そう教えられていたからだ。

 姫は、ずっと話し合いを望んでいた。

 けれど、相手は切羽詰まっていたため、交渉に応じる事はなかった。

 戦を行う国の者達は、激しい貧困と食料の乏しい国であったため、よそから奪わなければ生きてはいけなかったからだ。

 そうこうしている間に、姫の国は蹂躙されていった。

 姫はその戦の最中、行方不明に。

 姫を守っていた騎士も、同じく行方が割らないままとなった。



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