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第6話
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恋愛映画とアクション映画。互いのおすすめを一本ずつ見ることに決めて、ソファーに並んで土曜日ののんびりとしたお昼を過ごす。
映画にはあまり集中できなかった。
今日こそ伝えよう。そう決めている言葉が頭の中をぐるぐる回って私を急かす。
受験も本番。触れれば痛いけれど、王子につけられた傷を大和のおかげで忘れかけている。一人で居ても大丈夫になったと思う。
いつまでも大和に頼っているわけにはいかないよね。
そんなことを考えている間に映画が終わり、流れているエンドロールに気づいてソファーを立つ。
「そろそろご飯を作ろうかな。大和はお客様なんだし、ゆっくりしていてね」
立ち上がろうとしている大和にそう声をかけて、私はキッチンに向かう。
「じゃあ、お言葉に甘えて。何か手伝うことがあったらいってね」
追いかけてくる大和の声に、ありがとうだけ返して冷蔵庫を開ける。
普段そこまで料理はしない方だけれど、オムライスならなんとか作れる。卵を巻くのは上手くないけど、味は大丈夫。
いつもよりもわちゃわちゃとしながら、オムライスをなんとか作り上げて、レタスをちぎった。
卵を巻く時、一つ目は穴も開いて見栄えが悪くなってしまったけれど、二つ目は綺麗にできたのでそれを大和のものにし、一つ目はケチャップをかけて失敗を隠す。
「なにか手伝いましょうか?」
ダイニングテーブルにお皿を並べ出すと隣に来た大和に声をかけられる。
「ううん、大丈夫。そこに座って待ってて」
促されるままに先に座った大和の前に、お皿やコップを並べ終えて私も席につく。
「いただきます」
二人で手を合わせて、スプーンを手に取る。
いつも通りにできているとは思うけれど、家族以外に手料理を振る舞うのなんて初めてのことで大和の反応が気になって仕方ない。
オムライスが乗ったスプーンが大和の口に運ばれていく。
「美味しいわ」
その言葉に力が抜け、
「よかった」
そう言葉と笑みが漏れた。
オムライスをゆっくりと食べながら、私たちはおしゃべりをする。
映画のここが面白かった。ここはいまいちだった。次はあれが見たい。
学校でのことも話す。同じクラスとはいえ、所属しているグループが違えば、世界が違うも同然。
近いはずなのに遠い。学校ではいつも大和にそう感じている。大袈裟かもしれないけれど、住む世界が違うって。
だから、大和を大切に思うようになって、離れたくない気持ちが強くなるのと同じように、一緒にいてもらうのが申し訳ないと感じる。
その気持ちに整理をつけるために今日大和に伝えたいことがある。でも、もう少しただ楽しくしゃべっていたい。
先延ばしにする理由を探しながら、私はいつもと変わらない優しい笑顔を向けてくれる大和にどうでもいいことを話し続けていた。
楽しい夕食は終わり、食器も大和に手伝ってもらいながら片づけてしまった。
大和は食後のコーヒー。私は紅茶。テレビをつけたらやっていたクイズ番組を、ソファーで並んで見るともなしに見ている。
もう引き止める理由もなく、先延ばしにしていた今日伝えたかった言葉が口からついにこぼれでた。
「そろそろこういうの終わりにしてもいいんだよ。私はもう大丈夫だから」
映画にはあまり集中できなかった。
今日こそ伝えよう。そう決めている言葉が頭の中をぐるぐる回って私を急かす。
受験も本番。触れれば痛いけれど、王子につけられた傷を大和のおかげで忘れかけている。一人で居ても大丈夫になったと思う。
いつまでも大和に頼っているわけにはいかないよね。
そんなことを考えている間に映画が終わり、流れているエンドロールに気づいてソファーを立つ。
「そろそろご飯を作ろうかな。大和はお客様なんだし、ゆっくりしていてね」
立ち上がろうとしている大和にそう声をかけて、私はキッチンに向かう。
「じゃあ、お言葉に甘えて。何か手伝うことがあったらいってね」
追いかけてくる大和の声に、ありがとうだけ返して冷蔵庫を開ける。
普段そこまで料理はしない方だけれど、オムライスならなんとか作れる。卵を巻くのは上手くないけど、味は大丈夫。
いつもよりもわちゃわちゃとしながら、オムライスをなんとか作り上げて、レタスをちぎった。
卵を巻く時、一つ目は穴も開いて見栄えが悪くなってしまったけれど、二つ目は綺麗にできたのでそれを大和のものにし、一つ目はケチャップをかけて失敗を隠す。
「なにか手伝いましょうか?」
ダイニングテーブルにお皿を並べ出すと隣に来た大和に声をかけられる。
「ううん、大丈夫。そこに座って待ってて」
促されるままに先に座った大和の前に、お皿やコップを並べ終えて私も席につく。
「いただきます」
二人で手を合わせて、スプーンを手に取る。
いつも通りにできているとは思うけれど、家族以外に手料理を振る舞うのなんて初めてのことで大和の反応が気になって仕方ない。
オムライスが乗ったスプーンが大和の口に運ばれていく。
「美味しいわ」
その言葉に力が抜け、
「よかった」
そう言葉と笑みが漏れた。
オムライスをゆっくりと食べながら、私たちはおしゃべりをする。
映画のここが面白かった。ここはいまいちだった。次はあれが見たい。
学校でのことも話す。同じクラスとはいえ、所属しているグループが違えば、世界が違うも同然。
近いはずなのに遠い。学校ではいつも大和にそう感じている。大袈裟かもしれないけれど、住む世界が違うって。
だから、大和を大切に思うようになって、離れたくない気持ちが強くなるのと同じように、一緒にいてもらうのが申し訳ないと感じる。
その気持ちに整理をつけるために今日大和に伝えたいことがある。でも、もう少しただ楽しくしゃべっていたい。
先延ばしにする理由を探しながら、私はいつもと変わらない優しい笑顔を向けてくれる大和にどうでもいいことを話し続けていた。
楽しい夕食は終わり、食器も大和に手伝ってもらいながら片づけてしまった。
大和は食後のコーヒー。私は紅茶。テレビをつけたらやっていたクイズ番組を、ソファーで並んで見るともなしに見ている。
もう引き止める理由もなく、先延ばしにしていた今日伝えたかった言葉が口からついにこぼれでた。
「そろそろこういうの終わりにしてもいいんだよ。私はもう大丈夫だから」
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