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閑話

その8 ❀ 貴婦人の日記1 ❀

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 私は只今臨月になり、大変に幸せでございます。ディルイはなるべく私に子育てをしてほしいと乳母やメイドを最小限にするよう手配しました。そして、長年勤めてくれていた私のばあやは、結婚には付いて来てはくれませんでしたが、子供が出来たと分かるとロイス家に来てくれました。子育ての手助けをしてほしいとディルイから言われたそうです。
「私の母は子供を取り上げられ、それからおかしくなったのだ」
 そう言ってとても寂しそうな顔をしていました。お義母様は今どうしているのでしょう。

 今日は大好きなメアリーグレイが遊びに来ています。そして、なぜかアンもいます。たまに招待もしていないのに遊びに来るのです。ディルイ目当てでしようか?

「ねぇ聞きまして、あのジョニルバール様がご結婚なさるようですわよ。本当かしらね。また婚約解消になるのではないかしら」
「どうしてアンが、ここにいるのかしら?」
「あら?メアリーそんな細かい事いいっこなしですわ。本当でしたらここは私の居場所でしたのに…ディルイを取られてしまうなんて…」

「ふたりとも今日は来てくださって、嬉しいですけど、子供はよかったの?」
 メアリーもアンもすでに第一子を産んでいます。
「子供は乳母が見ているわ。男の子だし、面倒を見ようとするとメイドが怒られるから手が出せないの。まぁ、楽なものよ」
「そうですわね。私も一緒ですわ」

 やはり、貴族の女性は男児を産み落とせば、それで仕事が終わったと見なされるようです。次男くらい産んでいれば、後は愛人を作って遊び呆けてもいいようです。

「ジョニルバール様の披露宴パーティーはどうなるのかしら?ディルイはなにかご存じ?」
「ディルイからはなにも聞かされてないわ。聞いてもなにも教えてくれないし」
「ご招待されたいわね」

「うちの主人も一応王族ですのよ。バル様と仲良くさせて頂いていたようだから、きっと披露宴パーティーにもご招待されますわね」
「聞いてないわよ、アン。あなたのご主人は役職もなくて平ではなかった?その仕事もジョニルバール様に頼み込んで無理やりねじ込ませたと聞いているわよ」
 王族でも真面目に働かない人は平になるようです。真面目に働くだけで役職が付きますのに変わった旦那様です。

「だってジョニルバール様の奥様になる方よ、どんな方か気になりますでしょ?」
「最初から正直に言いなさいよ」
「メアリーは相変わらず、意地悪ですわね」
 アンは相変わらず嫌味や意地悪を言うのですが、メアリーとのやり取りを見ていると扱い方が分かったような気がします。

「お相手の方、まだすいぶんとお若くてすごくお美しい方のようですわね。平民出の下級貴族のようですわね。士爵でしたかしら?」
「ええ、魔力も豊富のようでお母様が隣国の元王女様だとか、何年か前に騒がれた誘拐事件の女の子、あの方らしいわね。お姿はあまりお見かけしないけど」
「下級貴族?誘拐?」
「あら?パティは誘拐事件の事もご存じないの?すいぶんと騒がれましたのに」
「いえ、少しは知っているわ。ディルイのお母様よね。でもあまりそんな噂話は好きではなかったから」
「まあ、そこがパティのいい所だけど、噂話ではなく事実よ。きちんと話を知っとかないとディルイのお母様のことだし、上司の事なんだから後で困ることになるわよ」
「そうね。後で調べるわ。ばあやは知っているかしら?ディルイは聞いても君は心配いらないと言うばかりだし…」

 隣国の元王女様ってバル様が思っていた方ではないかしら。その方のご息女様と結婚なさるという事かしら?そんなバル様…もしかしてそのご息女様は元王女様に似ているのでは?あのお優しいバル様が身代わりにされるような事はないとは思うけど…


 婚約を果たしたバル様は、その後、貴族を廃されました。なんと次期公爵にディルイをご指名下さいました。

 ちょっちょっとなぜ、教えて下さらないのです。私は公爵夫人になってしまいました。まあ、バル様と結婚してもそうなのですが…生活も一遍します。ディルイは心配いらないと言うばかり…男の人はまったく…

 私は産後ということもあり、あまり公式の場に出来ることはなかったのですが、ロイス公爵家に引っ越しをしたりと陛下と謁見などディルイは大忙しです。そして、やっと落ち着いたきた頃にまたもや慌てる事態となります。

「えっ?披露宴パーティーにご招待されたの?」
「ああ、バル様のお相手のお邸でのパーティーだよ。パティも出席するだろう?一般の方が多いと思うから緊張することもないと思うよ?」

「ええ?どうして早く言ってくれないの?ドレスがないわ。作ってないもの!」
 いまから仕立てても間に合いません。

「あるものでいいよ。来るのは全員一般の人ばかりだよ?豪華なドレスはかえって目立つよ」
「そうなの?じゃあ、あるドレスでもいいかしら…産後で体型が変わってしまったから入るかしら…」

 しかし、公爵夫人たるものそんなのでいいのでしょうか?ばあやは呆れております。
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