26 / 33
第26話
しおりを挟む
次の日、オリバーとベゴニアはネックレスの入ったカバンを慎重に持ち、城へと向かった。それを見送るウィスタリアとビヨンセだった。
「本当に昨日は驚いてしまったわ、まだドキドキしているもの…」
ビヨンセは頬の手を添え、ため息を吐いた。
「母様、驚かせてごめんなさい。私も突然の事でびっくりしてしまって…」
「責めてなんていないの、本当に驚いただけよ。あなたは見えているのですものね。ウィスタリアの方が怖かったわよね」
「ええ、本当にびっくりしました。まるで意思があるかのように見えたの。私の腕を取って石に引きずり込むような…そんな感覚で…」
「まぁ…」
「でも長年身に着けていたあのご婦人は普通にご無事だったのだから、私の気のせいだと思うけど…」
「ミザリー婦人ね…」
最後にネックレスを着けていたヴィヴィアンヌの義理母だ。最後はガリガリに痩せ、最後の最後まで嫌味を言って死んでいったそうだ。
「昔はとても美しくてみんなの人気者だったわ。若い私にも優しく諭してくれて賢い方でしたのに…晩年はご病気もあって少しふっくらとしていたんだけど…」
「え?」
「え?」
「元々、瘦せていたんじゃないの?」
「痩せていたわよ?でも年を取るといやでも太って来るでしょう?少し体調を崩して寝込まれた時期があったのよ。その時からちょっとふっくらとして来ていたけど、この間会った時は昔の様にスマートなられていて驚いたわ」
「そうなんだ…」
「それと今回の件は関係があるの?」
「え?いえ、分からないわ。でも…」
何かが引っかかるが、何に引っかかるかは分からない。
▽
▽
城に着いたオリバーはベゴニアと鑑定士の元へと向かった。昨日の夜の内に申請を出していた事もあり朝には話が通っていた。
「おぉ、こんなに早く申請が通るとは思いませんでした。感謝します」
オリバーは城の鑑定士シリウス・ボムに挨拶をした。通常は2週間ほど掛かり、幾度も待たされて興味がなければ忘れ去られていたりする。
「魔道レターで緊急で申請されていましたからね、しかも今話題のモンブラン家からですよ。とても興味があります」
「話題ですかな?」
オリバーとベゴニアは顔を見合わせた。どちらも世間の話は疎かった。
「ほっほっほ、オリバー殿はやはり疎い。モンブラン家は今ではトレンドですぞ。あのミソッカスの長女ですらギフト持ちになった。信じられない事です。しかも爵位までも!」
鑑定士は舞台役者のような大げさな手ぶりをした。しかし、家族の悪口を言われオリバーとベコニアは眉間に皺を寄せる。
「おっと、申し訳ない。余計な事を申しました」
「ウィスタリアはとても心根の優しいいい子です。いずれきちんと嫁ぎ先が決まっていたでしょう」
「そうでしょう、そうでしょう。これからは各貴族の三男、四男が名乗りを上げる事でしょう。良きことです。で、鑑定のモノはその長女が発端なのだとか…」
「まぁそうですな。あまり先入観を持たずにこちらのネックレスの鑑定をお願いしたい」
オリバーは宝石ボックスの入ったカバンごと、鑑定士に渡した。
「ほほう、これは頑丈ですな…先入観を持たずと言われてもね…」
魔力が通さないとされる龍の皮で作られたカバンに金具はミスリル製だ。とても高価なものだった。
「では、さっそく…」
と、カバンを開け、宝石ボックスを取り出している所で部屋にノックがした。入って来たのはシリウス・ボムの部下で女性鑑定士だった。
「本当に昨日は驚いてしまったわ、まだドキドキしているもの…」
ビヨンセは頬の手を添え、ため息を吐いた。
「母様、驚かせてごめんなさい。私も突然の事でびっくりしてしまって…」
「責めてなんていないの、本当に驚いただけよ。あなたは見えているのですものね。ウィスタリアの方が怖かったわよね」
「ええ、本当にびっくりしました。まるで意思があるかのように見えたの。私の腕を取って石に引きずり込むような…そんな感覚で…」
「まぁ…」
「でも長年身に着けていたあのご婦人は普通にご無事だったのだから、私の気のせいだと思うけど…」
「ミザリー婦人ね…」
最後にネックレスを着けていたヴィヴィアンヌの義理母だ。最後はガリガリに痩せ、最後の最後まで嫌味を言って死んでいったそうだ。
「昔はとても美しくてみんなの人気者だったわ。若い私にも優しく諭してくれて賢い方でしたのに…晩年はご病気もあって少しふっくらとしていたんだけど…」
「え?」
「え?」
「元々、瘦せていたんじゃないの?」
「痩せていたわよ?でも年を取るといやでも太って来るでしょう?少し体調を崩して寝込まれた時期があったのよ。その時からちょっとふっくらとして来ていたけど、この間会った時は昔の様にスマートなられていて驚いたわ」
「そうなんだ…」
「それと今回の件は関係があるの?」
「え?いえ、分からないわ。でも…」
何かが引っかかるが、何に引っかかるかは分からない。
▽
▽
城に着いたオリバーはベゴニアと鑑定士の元へと向かった。昨日の夜の内に申請を出していた事もあり朝には話が通っていた。
「おぉ、こんなに早く申請が通るとは思いませんでした。感謝します」
オリバーは城の鑑定士シリウス・ボムに挨拶をした。通常は2週間ほど掛かり、幾度も待たされて興味がなければ忘れ去られていたりする。
「魔道レターで緊急で申請されていましたからね、しかも今話題のモンブラン家からですよ。とても興味があります」
「話題ですかな?」
オリバーとベゴニアは顔を見合わせた。どちらも世間の話は疎かった。
「ほっほっほ、オリバー殿はやはり疎い。モンブラン家は今ではトレンドですぞ。あのミソッカスの長女ですらギフト持ちになった。信じられない事です。しかも爵位までも!」
鑑定士は舞台役者のような大げさな手ぶりをした。しかし、家族の悪口を言われオリバーとベコニアは眉間に皺を寄せる。
「おっと、申し訳ない。余計な事を申しました」
「ウィスタリアはとても心根の優しいいい子です。いずれきちんと嫁ぎ先が決まっていたでしょう」
「そうでしょう、そうでしょう。これからは各貴族の三男、四男が名乗りを上げる事でしょう。良きことです。で、鑑定のモノはその長女が発端なのだとか…」
「まぁそうですな。あまり先入観を持たずにこちらのネックレスの鑑定をお願いしたい」
オリバーは宝石ボックスの入ったカバンごと、鑑定士に渡した。
「ほほう、これは頑丈ですな…先入観を持たずと言われてもね…」
魔力が通さないとされる龍の皮で作られたカバンに金具はミスリル製だ。とても高価なものだった。
「では、さっそく…」
と、カバンを開け、宝石ボックスを取り出している所で部屋にノックがした。入って来たのはシリウス・ボムの部下で女性鑑定士だった。
3
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる