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第26話
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次の日、オリバーとベゴニアはネックレスの入ったカバンを慎重に持ち、城へと向かった。それを見送るウィスタリアとビヨンセだった。
「本当に昨日は驚いてしまったわ、まだドキドキしているもの…」
ビヨンセは頬の手を添え、ため息を吐いた。
「母様、驚かせてごめんなさい。私も突然の事でびっくりしてしまって…」
「責めてなんていないの、本当に驚いただけよ。あなたは見えているのですものね。ウィスタリアの方が怖かったわよね」
「ええ、本当にびっくりしました。まるで意思があるかのように見えたの。私の腕を取って石に引きずり込むような…そんな感覚で…」
「まぁ…」
「でも長年身に着けていたあのご婦人は普通にご無事だったのだから、私の気のせいだと思うけど…」
「ミザリー婦人ね…」
最後にネックレスを着けていたヴィヴィアンヌの義理母だ。最後はガリガリに痩せ、最後の最後まで嫌味を言って死んでいったそうだ。
「昔はとても美しくてみんなの人気者だったわ。若い私にも優しく諭してくれて賢い方でしたのに…晩年はご病気もあって少しふっくらとしていたんだけど…」
「え?」
「え?」
「元々、瘦せていたんじゃないの?」
「痩せていたわよ?でも年を取るといやでも太って来るでしょう?少し体調を崩して寝込まれた時期があったのよ。その時からちょっとふっくらとして来ていたけど、この間会った時は昔の様にスマートなられていて驚いたわ」
「そうなんだ…」
「それと今回の件は関係があるの?」
「え?いえ、分からないわ。でも…」
何かが引っかかるが、何に引っかかるかは分からない。
▽
▽
城に着いたオリバーはベゴニアと鑑定士の元へと向かった。昨日の夜の内に申請を出していた事もあり朝には話が通っていた。
「おぉ、こんなに早く申請が通るとは思いませんでした。感謝します」
オリバーは城の鑑定士シリウス・ボムに挨拶をした。通常は2週間ほど掛かり、幾度も待たされて興味がなければ忘れ去られていたりする。
「魔道レターで緊急で申請されていましたからね、しかも今話題のモンブラン家からですよ。とても興味があります」
「話題ですかな?」
オリバーとベゴニアは顔を見合わせた。どちらも世間の話は疎かった。
「ほっほっほ、オリバー殿はやはり疎い。モンブラン家は今ではトレンドですぞ。あのミソッカスの長女ですらギフト持ちになった。信じられない事です。しかも爵位までも!」
鑑定士は舞台役者のような大げさな手ぶりをした。しかし、家族の悪口を言われオリバーとベコニアは眉間に皺を寄せる。
「おっと、申し訳ない。余計な事を申しました」
「ウィスタリアはとても心根の優しいいい子です。いずれきちんと嫁ぎ先が決まっていたでしょう」
「そうでしょう、そうでしょう。これからは各貴族の三男、四男が名乗りを上げる事でしょう。良きことです。で、鑑定のモノはその長女が発端なのだとか…」
「まぁそうですな。あまり先入観を持たずにこちらのネックレスの鑑定をお願いしたい」
オリバーは宝石ボックスの入ったカバンごと、鑑定士に渡した。
「ほほう、これは頑丈ですな…先入観を持たずと言われてもね…」
魔力が通さないとされる龍の皮で作られたカバンに金具はミスリル製だ。とても高価なものだった。
「では、さっそく…」
と、カバンを開け、宝石ボックスを取り出している所で部屋にノックがした。入って来たのはシリウス・ボムの部下で女性鑑定士だった。
「本当に昨日は驚いてしまったわ、まだドキドキしているもの…」
ビヨンセは頬の手を添え、ため息を吐いた。
「母様、驚かせてごめんなさい。私も突然の事でびっくりしてしまって…」
「責めてなんていないの、本当に驚いただけよ。あなたは見えているのですものね。ウィスタリアの方が怖かったわよね」
「ええ、本当にびっくりしました。まるで意思があるかのように見えたの。私の腕を取って石に引きずり込むような…そんな感覚で…」
「まぁ…」
「でも長年身に着けていたあのご婦人は普通にご無事だったのだから、私の気のせいだと思うけど…」
「ミザリー婦人ね…」
最後にネックレスを着けていたヴィヴィアンヌの義理母だ。最後はガリガリに痩せ、最後の最後まで嫌味を言って死んでいったそうだ。
「昔はとても美しくてみんなの人気者だったわ。若い私にも優しく諭してくれて賢い方でしたのに…晩年はご病気もあって少しふっくらとしていたんだけど…」
「え?」
「え?」
「元々、瘦せていたんじゃないの?」
「痩せていたわよ?でも年を取るといやでも太って来るでしょう?少し体調を崩して寝込まれた時期があったのよ。その時からちょっとふっくらとして来ていたけど、この間会った時は昔の様にスマートなられていて驚いたわ」
「そうなんだ…」
「それと今回の件は関係があるの?」
「え?いえ、分からないわ。でも…」
何かが引っかかるが、何に引っかかるかは分からない。
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城に着いたオリバーはベゴニアと鑑定士の元へと向かった。昨日の夜の内に申請を出していた事もあり朝には話が通っていた。
「おぉ、こんなに早く申請が通るとは思いませんでした。感謝します」
オリバーは城の鑑定士シリウス・ボムに挨拶をした。通常は2週間ほど掛かり、幾度も待たされて興味がなければ忘れ去られていたりする。
「魔道レターで緊急で申請されていましたからね、しかも今話題のモンブラン家からですよ。とても興味があります」
「話題ですかな?」
オリバーとベゴニアは顔を見合わせた。どちらも世間の話は疎かった。
「ほっほっほ、オリバー殿はやはり疎い。モンブラン家は今ではトレンドですぞ。あのミソッカスの長女ですらギフト持ちになった。信じられない事です。しかも爵位までも!」
鑑定士は舞台役者のような大げさな手ぶりをした。しかし、家族の悪口を言われオリバーとベコニアは眉間に皺を寄せる。
「おっと、申し訳ない。余計な事を申しました」
「ウィスタリアはとても心根の優しいいい子です。いずれきちんと嫁ぎ先が決まっていたでしょう」
「そうでしょう、そうでしょう。これからは各貴族の三男、四男が名乗りを上げる事でしょう。良きことです。で、鑑定のモノはその長女が発端なのだとか…」
「まぁそうですな。あまり先入観を持たずにこちらのネックレスの鑑定をお願いしたい」
オリバーは宝石ボックスの入ったカバンごと、鑑定士に渡した。
「ほほう、これは頑丈ですな…先入観を持たずと言われてもね…」
魔力が通さないとされる龍の皮で作られたカバンに金具はミスリル製だ。とても高価なものだった。
「では、さっそく…」
と、カバンを開け、宝石ボックスを取り出している所で部屋にノックがした。入って来たのはシリウス・ボムの部下で女性鑑定士だった。
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