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第21話
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そして数日後、あの嫌味慢性の老婦人が亡くなったと母から知らせが届いた。母と共に葬式に参列した。
「ヴィヴィアンヌ、大丈夫?」
「ありがとう、モンブラン婦人。これでやっと解放されるわ…こんな事思ってはダメなんでしょうけど…」
「誰もあなたを責めないわ…」
と、やり取りを見ていたウィスタリアだったが、老婦人のネックレスが遺体にない事に気が付いた。先代婦人の形見と言っていたのでもしかして譲られたのかと思った。私だったら貰っても嬉しくないなと思っていた。
式が終わり故人との思い出話になっていたが最近の嫌な所ばかりの話になっていた。昔は美しく気立てのいい人だったらしいがその面影がないほど、最近では嫌な人になっていたようだった。
ウィスタリアはヴィヴィアンヌにあのネックレスの行方を聞いてみた。ただの好奇心だった。
「ヴィヴィアンヌおば様、あのネックレスはどうなさったの?」
「あの?ああ、あのしみったれたネックレスね」
ヴィヴィアンヌは優しそうな顔から急に鬼のような顔になったかと思うと言葉が乱暴になった。ビヨンセも周りの友人もびっくりしていた。
「私もウィスタリアの言葉が気になって鑑定して貰ったのよ。そしたらびっくりよぉ。ウィスタリアが正解だったわ。とても価値の高いものだった。私は売ってしまいたかったのだけど、主人が母の気に入った物だったのなら私にも持っておくようにって言うのよ。しかも義母のように毎日付けるようにって言うの。あんなババアの形見を私にさせるだなんて本当に男ってマザコンよね。見た目が悪いからと宝石だけ取ってデザインを直してもらっている所なのよ」
「ヴィヴィアンヌ…言葉が過ぎるわよ」
「あら、ごめんあそばせ。ビヨンセは幸せそうで羨ましいわ」
「これからヴィヴィアンヌも幸せになるわよ」
苦々しい顔を隠さないヴィヴィアンヌに皆は困惑した。よほど嫌なのだろう。その気持ちはわかる。一言言われただけでも嫌だったのに毎日暴言を吐かれていたのだろうと思うと気の毒だった。
「おば様、そんなに嫌なら付けなければいいのでは?あの宝石は確かに良いものかもしれないけど…なんか私も嫌だったわ」
その言葉に皆が振り返り、沈黙した。
「でも主人が…」
「違う似ている宝石を付けていればいいんじゃない?ご主人がいる時だけ」
「まぁ…」
「それがいいわ、ヴィヴィアンヌ。本来宝石は付ければ美しくなり心が軽やかになる女性の味方、それをいやいや付けるのはよくないわ。お義母様の石はどこかに保管なさったらいいわ」
ビヨンセが言った。
「…そうよね、そうだわ。ありがとう、モンブラン婦人、ウィスタリア」
ヴィヴィアンヌはリメイクした義母のネックレスを高価なモノだからとイミテーションも作るようにと夫を説得した。そしてイミテーションの方を毎日付けるようにした。と言っても朝と夜、ご主人がいる時だけだ。赤いネックレスを見ると義母を思い出すので本当は見たくもないらしい。
本物の赤い宝石は他の装飾品の中の奥に仕舞われた。その内、ご主人に黙って売りたいらしい。持っているのも嫌なんだそうだ。
「ヴィヴィアンヌ、大丈夫?」
「ありがとう、モンブラン婦人。これでやっと解放されるわ…こんな事思ってはダメなんでしょうけど…」
「誰もあなたを責めないわ…」
と、やり取りを見ていたウィスタリアだったが、老婦人のネックレスが遺体にない事に気が付いた。先代婦人の形見と言っていたのでもしかして譲られたのかと思った。私だったら貰っても嬉しくないなと思っていた。
式が終わり故人との思い出話になっていたが最近の嫌な所ばかりの話になっていた。昔は美しく気立てのいい人だったらしいがその面影がないほど、最近では嫌な人になっていたようだった。
ウィスタリアはヴィヴィアンヌにあのネックレスの行方を聞いてみた。ただの好奇心だった。
「ヴィヴィアンヌおば様、あのネックレスはどうなさったの?」
「あの?ああ、あのしみったれたネックレスね」
ヴィヴィアンヌは優しそうな顔から急に鬼のような顔になったかと思うと言葉が乱暴になった。ビヨンセも周りの友人もびっくりしていた。
「私もウィスタリアの言葉が気になって鑑定して貰ったのよ。そしたらびっくりよぉ。ウィスタリアが正解だったわ。とても価値の高いものだった。私は売ってしまいたかったのだけど、主人が母の気に入った物だったのなら私にも持っておくようにって言うのよ。しかも義母のように毎日付けるようにって言うの。あんなババアの形見を私にさせるだなんて本当に男ってマザコンよね。見た目が悪いからと宝石だけ取ってデザインを直してもらっている所なのよ」
「ヴィヴィアンヌ…言葉が過ぎるわよ」
「あら、ごめんあそばせ。ビヨンセは幸せそうで羨ましいわ」
「これからヴィヴィアンヌも幸せになるわよ」
苦々しい顔を隠さないヴィヴィアンヌに皆は困惑した。よほど嫌なのだろう。その気持ちはわかる。一言言われただけでも嫌だったのに毎日暴言を吐かれていたのだろうと思うと気の毒だった。
「おば様、そんなに嫌なら付けなければいいのでは?あの宝石は確かに良いものかもしれないけど…なんか私も嫌だったわ」
その言葉に皆が振り返り、沈黙した。
「でも主人が…」
「違う似ている宝石を付けていればいいんじゃない?ご主人がいる時だけ」
「まぁ…」
「それがいいわ、ヴィヴィアンヌ。本来宝石は付ければ美しくなり心が軽やかになる女性の味方、それをいやいや付けるのはよくないわ。お義母様の石はどこかに保管なさったらいいわ」
ビヨンセが言った。
「…そうよね、そうだわ。ありがとう、モンブラン婦人、ウィスタリア」
ヴィヴィアンヌはリメイクした義母のネックレスを高価なモノだからとイミテーションも作るようにと夫を説得した。そしてイミテーションの方を毎日付けるようにした。と言っても朝と夜、ご主人がいる時だけだ。赤いネックレスを見ると義母を思い出すので本当は見たくもないらしい。
本物の赤い宝石は他の装飾品の中の奥に仕舞われた。その内、ご主人に黙って売りたいらしい。持っているのも嫌なんだそうだ。
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