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モズの回想
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15歳の春、父王をこの手で殺した。
コスモポリタンの第12代王、ベンジャビンはひどい王だった。父王ベンジャビンは国のカネに手を出し浪費に浪費を重ねていた。母はそんな父王と一緒に浪費していた。
「兄上、このままではシシリアに占領されてしまいます。王の浪費を止めてください!」
「分かっている。これ以上国のカネには手を出させない」
兄は浪費を抑えるため地下の金庫からカネを隠した。しかしその事が父王に知れ、父は息子であるヒルナンディスを処刑しようとした。俺は父王の刺した。
父王はあっけなく死んだ。俺は牢に入れられる事になったが後悔はなかった。しかし国力低下もあり周りの国もシシリアに下り始めた事により、コスモポリタンもそれに続くしかなかった。そんな事もあり俺の罪はうやむやになった。
王族は即座に処刑されるのが常ではあったが、国民が反発した。それにより国を出ない事を条件に命を繋ぐ事が出来た。母は国のカネを浪費させた事で有罪になり幽閉された。
俺と兄、姉、弟は好んで平民となった。しかし所在を確認しておきたかったのかシシリアから冒険者ギルドで働くよう指示を受けた。兄はギルマスとして、俺は職員として働いた。姉イージュはイブとして冒険者になった。イブは婚約者がいたが破談になった。
「元々、貴族なんてガラじゃなかった。冒険者になりたかったからいいんだ」
と、イブは言った。昔から男っぽく、剣を教わったのはイブからだった。
弟のアーシャインはシシリアの王都で働いていた。言わば人質だ。しかし、それは好都合でもあった。密かに内情を探らせていた。
職員としてギルドで働いていると女が寄って来る。俺は元貴族で元王子でもある事は国民から知られていた。まだまだ王族の血筋を好む者も多く、事情を知らない者は兄や俺は見合いを進めて来た。そして、貴族の娘であり、元婚約者の幼馴染のアニータは俺との結婚を望んだ。
「ねぇ、モディリアーニったら、いい加減私と結婚してちょうだい!いつになったら結婚してくれるの?」
「俺はモズだ。もうモディリアーニじゃないんだ。それに俺達王の子供は一代限りで子供は望めない。それが生き残るためにシシリアと交わした誓約だ。この街からも出られない」
「そんなの破ればいいじゃない」
「子供が殺されるだけだ」
「でも結婚はいいんでしょ?」
「はぁ、結婚すれば子供が欲しくなる。俺は国民が幸せになる事を望む。お前は俺を忘れて他の男と幸せに暮らせ…」
「女を遠ざけるために髭を伸ばしているの?山男みたいだわ。似合わない…」
「そうだ。若い女は俺の事を知らずに言い寄って来る。俺は結婚はしない…」
結婚、子供は諦めた。生きている内に国を取り戻すために生きる。そう決めたのだ。
国を明け渡してから10年、先にロイズが動き出した。兄は次期王として生きていて貰わねばならない。俺が動くしかない。そんな時に王都出身の女と出会った。
「王都から来たの、リアよ」
地味な女で歳は若い。申し訳ないとは思ったが利用させて貰う事にした。国民の女には手を出せないがシシリアの女など正直どうでもよかった。
リアとの関係を深めていった。積極的に話しかけ、探りを入れ、どんな家柄でどんな生活をしているのか知ろうとした。リアは森の住民の所に居候しているとの事だった。王都での生活や両親の立場など知りたがったが頑なに内情を伏せていた。
時には後をつけたがいつも巻かれていた。森の住民にも話を聞いたがリアを知る者はいなかった。
もしかしたら、王都の刺客なのかもと疑った。恋愛に発展させ、溺れさせ口を割らせようと思った。しかし、リアは特別な子だったのだ。森のキングを従わせるテイマーだ。それを知られたくないようだった。だから頑なに自分を語らなかったのだ。確かにキングを従えるような女がいれば国は囲わないわけがないのだ。
そんなリアは王都に戻るという。まずい。このまま行かせては俺は王都に行けない。兄に言い王都に入る申請をする。目的は婚約者の親と会うためだ。結婚は許されている。彼女は平民、疑われるはずがない。兄と連携を取り城にいる王都の貴族達を拘束する準備にかかる。ようやく国を取り戻す時がきた。
駅馬車を張らせていたがリアは現れない。まだ準備をしているのだろう。兄に申請を急がせた。リアは王都に戻る直前に俺に会いに来た。嬉しかった。いや、ダメだ。リアには申し訳ないが王都でお別れだ。俺の正体を知ったリアは復讐に来るだろうか…キングを連れて。
リアはどこか落ち着いていて、10代の女性には見えなかった。親しみやすく、話やすかったし、一緒に居て楽しかった。今までは王子という立場でしか女性と関わって来なかったので、自分の地位や過去を知らない女性との関りは初めてだった。そんなリアに好感を持った。最初こそ利用しようと思っていたが、次第に本当に利用するのが正しい事なのかと自問自答した。しかし、今しかないのだ。
ロイズが国の解放に成功した。それに続くしかない。弟のアイと連携を取り王との謁見を取り付けた。
リアには長い手紙を書いた。しかしその手紙を残す事は出来なかった。宿のおかみにリアに渡してほしいと残したのはたった一言書いただけの紙切れだ。
国の解放に成功した俺はコスモポリタンに戻って公爵として政務に励んだ。計画をしらなかったイブからリアにした事で縁を切られてしまった。ひどい事をしたのは承知している。許されるはずなどない。
いつかリアにあの時に書いた手紙を届けたい。読んでくれるかは分からない。許してくれるかも分からない。
いつか…
コスモポリタンの第12代王、ベンジャビンはひどい王だった。父王ベンジャビンは国のカネに手を出し浪費に浪費を重ねていた。母はそんな父王と一緒に浪費していた。
「兄上、このままではシシリアに占領されてしまいます。王の浪費を止めてください!」
「分かっている。これ以上国のカネには手を出させない」
兄は浪費を抑えるため地下の金庫からカネを隠した。しかしその事が父王に知れ、父は息子であるヒルナンディスを処刑しようとした。俺は父王の刺した。
父王はあっけなく死んだ。俺は牢に入れられる事になったが後悔はなかった。しかし国力低下もあり周りの国もシシリアに下り始めた事により、コスモポリタンもそれに続くしかなかった。そんな事もあり俺の罪はうやむやになった。
王族は即座に処刑されるのが常ではあったが、国民が反発した。それにより国を出ない事を条件に命を繋ぐ事が出来た。母は国のカネを浪費させた事で有罪になり幽閉された。
俺と兄、姉、弟は好んで平民となった。しかし所在を確認しておきたかったのかシシリアから冒険者ギルドで働くよう指示を受けた。兄はギルマスとして、俺は職員として働いた。姉イージュはイブとして冒険者になった。イブは婚約者がいたが破談になった。
「元々、貴族なんてガラじゃなかった。冒険者になりたかったからいいんだ」
と、イブは言った。昔から男っぽく、剣を教わったのはイブからだった。
弟のアーシャインはシシリアの王都で働いていた。言わば人質だ。しかし、それは好都合でもあった。密かに内情を探らせていた。
職員としてギルドで働いていると女が寄って来る。俺は元貴族で元王子でもある事は国民から知られていた。まだまだ王族の血筋を好む者も多く、事情を知らない者は兄や俺は見合いを進めて来た。そして、貴族の娘であり、元婚約者の幼馴染のアニータは俺との結婚を望んだ。
「ねぇ、モディリアーニったら、いい加減私と結婚してちょうだい!いつになったら結婚してくれるの?」
「俺はモズだ。もうモディリアーニじゃないんだ。それに俺達王の子供は一代限りで子供は望めない。それが生き残るためにシシリアと交わした誓約だ。この街からも出られない」
「そんなの破ればいいじゃない」
「子供が殺されるだけだ」
「でも結婚はいいんでしょ?」
「はぁ、結婚すれば子供が欲しくなる。俺は国民が幸せになる事を望む。お前は俺を忘れて他の男と幸せに暮らせ…」
「女を遠ざけるために髭を伸ばしているの?山男みたいだわ。似合わない…」
「そうだ。若い女は俺の事を知らずに言い寄って来る。俺は結婚はしない…」
結婚、子供は諦めた。生きている内に国を取り戻すために生きる。そう決めたのだ。
国を明け渡してから10年、先にロイズが動き出した。兄は次期王として生きていて貰わねばならない。俺が動くしかない。そんな時に王都出身の女と出会った。
「王都から来たの、リアよ」
地味な女で歳は若い。申し訳ないとは思ったが利用させて貰う事にした。国民の女には手を出せないがシシリアの女など正直どうでもよかった。
リアとの関係を深めていった。積極的に話しかけ、探りを入れ、どんな家柄でどんな生活をしているのか知ろうとした。リアは森の住民の所に居候しているとの事だった。王都での生活や両親の立場など知りたがったが頑なに内情を伏せていた。
時には後をつけたがいつも巻かれていた。森の住民にも話を聞いたがリアを知る者はいなかった。
もしかしたら、王都の刺客なのかもと疑った。恋愛に発展させ、溺れさせ口を割らせようと思った。しかし、リアは特別な子だったのだ。森のキングを従わせるテイマーだ。それを知られたくないようだった。だから頑なに自分を語らなかったのだ。確かにキングを従えるような女がいれば国は囲わないわけがないのだ。
そんなリアは王都に戻るという。まずい。このまま行かせては俺は王都に行けない。兄に言い王都に入る申請をする。目的は婚約者の親と会うためだ。結婚は許されている。彼女は平民、疑われるはずがない。兄と連携を取り城にいる王都の貴族達を拘束する準備にかかる。ようやく国を取り戻す時がきた。
駅馬車を張らせていたがリアは現れない。まだ準備をしているのだろう。兄に申請を急がせた。リアは王都に戻る直前に俺に会いに来た。嬉しかった。いや、ダメだ。リアには申し訳ないが王都でお別れだ。俺の正体を知ったリアは復讐に来るだろうか…キングを連れて。
リアはどこか落ち着いていて、10代の女性には見えなかった。親しみやすく、話やすかったし、一緒に居て楽しかった。今までは王子という立場でしか女性と関わって来なかったので、自分の地位や過去を知らない女性との関りは初めてだった。そんなリアに好感を持った。最初こそ利用しようと思っていたが、次第に本当に利用するのが正しい事なのかと自問自答した。しかし、今しかないのだ。
ロイズが国の解放に成功した。それに続くしかない。弟のアイと連携を取り王との謁見を取り付けた。
リアには長い手紙を書いた。しかしその手紙を残す事は出来なかった。宿のおかみにリアに渡してほしいと残したのはたった一言書いただけの紙切れだ。
国の解放に成功した俺はコスモポリタンに戻って公爵として政務に励んだ。計画をしらなかったイブからリアにした事で縁を切られてしまった。ひどい事をしたのは承知している。許されるはずなどない。
いつかリアにあの時に書いた手紙を届けたい。読んでくれるかは分からない。許してくれるかも分からない。
いつか…
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