102 / 139
シンの事情 Ⅲ
しおりを挟む「ユリウス…?」
「今日からお前たちは私の奴隷だ。刑期なんてないようなもんだと思ってくれ」
男の言葉に女達はガヤガヤと騒ぎ出す。
「まぁ落ち着いて聞いてくれ。キレイな部屋とベッドに美味しい食事付きだ。キレイな女にはドレスも買ってやろう。悪くないだろう?」
男は女達に説明をした。訳が分からなかった。
「おまえの刑期を言ってみろ」
男はひとりの罪人を指さして言った。
「わ、わたし?ゴールドが5キロだよ」
「なんだ、そんなものか…おまえは?」
「ダイヤが50グラムだ」
「ふん、おまえは?」
「ゴールドが10キロ」
「おまえは?」
「ダイヤが80グラムだよ」
「どいつもこいつも対した事ないな」
男はつまらなさそうに肘を付き、見張りの男に指示を出した。
「水色は右だ。あとは左だ」
「は!」
男がそう言うと先ほどまでヘラヘラとしていた見張りは背筋を正し、女達を誘導した。
シンは他の罪人達と離れてしまった。
ひとりになったシンは別の部屋に通された。そこには数人の女が控えていた。
「今日はこの女だけだ。頼むぞ」
「分かりました」
女達はシンを取り囲み、服を脱がせ裸にした。
「何をする!やめてくれ」
「大丈夫よ。体を清めるだけ」
「清める?」
「あなたは元貴族?やはり所作が違うわね。とびっきりの物を用意しましょう」
「何を言っている?」
「すぐに分かるわ」
シンはこの数ヶ月の垢を全身洗い落とさされ以前のような白い肌が露わになった。
「やはり美しいわ」
短くなった髪にウィッグ付けられ胸元が大きく開いたゴールドのドレスを着せられた。キレイにメイクをされ、イヤリングやネックレスに指輪を付けられて以前の美しいシンフォニーに戻った。
シンは女達に連れられて大広間に通された。そこにはひとり大きなテーブルに付いた先ほどの男がいた。
「やはり君は美しいな。君は僕の昔の婚約者に似ている」
「これはどういう趣向ですか?」
「まぁ食事をしようよ。お腹が空いているだろう」
目の前には豪華な食事がどんどん出て来た。男はパクパクと食べている。
「美味しいよ?食べないのかい?毒なんて入ってないから」
と、笑っている。
シンは黙って食べた。お腹は減っていたし毒が入っていたってどうでもよかった。そして最後にはコーヒーとデザートが出て来た。
「僕はコーヒーなんて下品な飲み物と思っていたんだよ。でもとても美味しいし甘いものと合うよね」
男はゆっくりとコーヒーを飲み干しシンに向かい合った。
「君は元貴族なのかな?その美しい所作はどこで身に着けたの?」
「モグリベルの城ですわ、ユリウス。お忘れなのかしら?」
「あれ?やっぱりシンフォニー?似ていると思ったんだ。アハハ」
やはり、ユリウスだった。
「ユリウスこれはどういう事なの?あなたはこの国でなにを?しかもこんな城みたいな…」
「処刑されたと聞いたのに生きていたんだね。君に会えて嬉しいよ。君は僕を完璧に騙したんだからね」
冷たい視線にゾクリとした。
「そ、それは申し訳ございません。あなたに捨てられるのが怖かったのよ。もう許して下さらない?」
シンは以前のユリウスではないと悟り、生意気な口を利くのを控えた。
「まあ、もう昔の事だしね。君のおかげで僕はあのモグリベルから解放されたし能力も開花させる事が出来た。感謝するよ」
「開花?」
「そうだよ。不思議だよね。あのままモグリベルにいたら僕は国王になっていたけど、この快感は得られなかった。そして僕は自力で一国一城の主になった」
ユリウスは自分に酔っているようだった。
「君は僕の妻になるんだ。そして一緒にこの国を大きくしよう。君がいればとても有利に事が運ぶだろう」
「…」
シンはユリウスが何を考えているのか分からない。とても正気の沙汰とは思えない。
「近く僕は独立を宣言するよ。名はユリウスアイランド、なんてどう?」
「ダサいわ」
「やっぱり?皆から反対されるんだけど…じゃあ君が考えて」
「え?急に言われても…」
シンはユリウスが考えた名で活動するのは嫌だった。それならばと考えを巡らせた。
「ブロンエクレトン」
「なんてどうかしら?」
「へぇいいね。なんて意味だい?」
「輝くような白よ」
「素敵だ」
「このアンバーはブロンエクレトンとなるんだ」
2
お気に入りに追加
501
あなたにおすすめの小説
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
【完結】『サヨナラ』そう呟き、崖から身を投げようとする私の手を誰かに引かれました。
仰木 あん
ファンタジー
継母に苛められ、義理の妹には全てを取り上げられる。
実の父にも蔑まれ、生きる希望を失ったアメリアは、家を抜け出し、海へと向かう。
たどり着いた崖から身を投げようとするアメリアは、見知らぬ人物に手を引かれ、一命を取り留める。
そんなところから、彼女の運命は好転をし始める。
そんなお話。
フィクションです。
名前、団体、関係ありません。
設定はゆるいと思われます。
ハッピーなエンドに向かっております。
12、13、14、15話は【胸糞展開】になっておりますのでご注意下さい。
登場人物
アメリア=フュルスト;主人公…二十一歳
キース=エネロワ;公爵…二十四歳
マリア=エネロワ;キースの娘…五歳
オリビエ=フュルスト;アメリアの実父
ソフィア;アメリアの義理の妹二十歳
エリザベス;アメリアの継母
ステルベン=ギネリン;王国の王
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる