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 紹介して貰った宿は定食屋兼宿だった。

「こんにちは、お部屋空いていますか」
 ランチの時間が終わり、夕食の下準備をしていた。
「ああ、205号室が空いてるよ。朝食なしで1泊2000ルーだ。朝食有りは2500ルーだよ」
 恰幅のいいおばさんが奥から現れた。

「えっと、あ、有りでお願いします」
「あいよ。先払いだよ。ここにヴァイを置いて」
 おばさんがリアに商人ギルドでも見た小さな木箱を指さす。木箱の上にヴァイを乗せればいいようだ。初めてヴァイでの支払いをしたリアはちょっと感動した。
「わぁ、どんな構造になってるのかな。こんな一瞬で支払いができるなんて」
「アッハッハッハ、あんた、モグリベルから来た人だね。モグリベルから来た人らは毎回これに驚くんだよ」
「そうです。本当にすごい」
「アッハッハ、素直だね。まあ楽しんでいきなよ」
 日本でも似たようなシステムはあったが1枚のカードですべて対応しているのは本当に便利だ。王国ならではかもしれない。アリアナはシシリアキングスが大きくなったのがわかる気がした。
 モグリベルはまだ考え方が古いし対応が遅い、しかも王子の一声で無罪の人を魔の森に追放してしまう国なのだ。

 翌日、定食屋の部分で朝ごはんを食べ、その日また宿泊のお願いし宿を出た。日常品や今後の仕事など確保しなければならない。
 街を歩いていると今までモグリベルで何をしていたのかと思うほど世間知らずのお嬢様だったことが知れる。シシリアキングスのこの街はシシリーという。シシリーの街は少しモグリベルの文化と似ていたが便利さ機能面などすべてにおいてシシリーが勝っていた。
 街には八百屋、肉屋に食堂、古着屋、修理屋など多種多様な職業の店が並んでいる。枝分かれの道に行くと今度は、ポーション屋、素材屋、魔術具や魔法陣、魔法円が売っている魔術屋や魔石屋、武器屋などもあった。ここ一体は魔法街として賑わっていた。まさにゲームの世界や本で読んでいた魔法の世界のようだった。
 せっかくこんな世界に生れてきたのに自分の豊かな生活を守る為になにも見て来なかった事を悔やんだ。

 素材屋に入ると色々な魔獣の素材が所狭しと並んでいた。シルバーウルフの毛皮や牙、クマの魔獣の毛皮、右手、牙、幸せの鳥の黄色い羽根、命の花と言われている花の種、なんの素材にするのだと言わんばかりの物もあった。
「ここでは素材を売る事も出来るのですか?」
 ローウルフの素材が売れるかもしれないと店のおやじに聞いてみた。

「は?そんな事したらお役人たちが飛んでくるよ。俺たち商人はほしい素材はセリの市場で正当な金額で手に入れてそれから売るんだよ。売る値段は自由になるがね。そんな事常識だろう。あんたどこのお嬢様だい」
 なにやら商人のルールが有り、それを破るとお役人さんが取り締まりに来て罰金刑や処罰などがあるらしい。
 そういう事をしたいのなら商人か冒険者に登録するんだね、と言われた。

 そういえば、昨日はヴァイを作っただけで商人ギルドにも冒険者ギルドにも登録はしていない。

 冒険者は依頼を遂行しその報酬で金銭を得る事が出来る、または需要があればそのまま素材を売る頃が出来るのだそうだ。商人は生産側から得た物を商人ギルドを通して売買するとの事だ。職人の場合はまた職人ギルドなるものが存在してまたルールがあるようだ。
 なんだか色々な規制がある。アリアナは素材を売りたいのだから商人ギルドか冒険者ギルドに登録すればいいのだろう。自分で手に入れた素材をそのまま売る事が出来る冒険者ギルド、手に入れた素材を商人ギルドに通して売る商人ギルド、どちらがいいか判断が付かないでいる。こんな場合は誰に相談すればいいのだろうか。
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