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第7話 友達
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喪服を着た高校時代の友人たちの顔が揃った。高校時代は7人グループで仲良くしていた。しかし、結婚をしたり子育てのため多くの友人とは疎遠になっていた。
「お兄さん、この度はご愁傷さまです」
さくらの遺骨は兄の家に置いてあるようだ。
「わざわざ、ありがとう」
兄の家は実家からちょっと遠いのだ。友人たちはわざわざ、さくらの為に遠くまで来てくれた。
「あの、病気だと聞いたんですが…」
「ああ、膵臓がんだったようで、発見された時にはもう手の施しようがなかったんだそうだ」
「そうなんですか」
まだ40歳で友人のお線香を上げるとは思いもよらなかったことだろう。6人は変わる変わるお線香を上げていく。皆がお線香を上げ終わって兄の奥さんからお茶を出される。お茶に手を取り数人が涙を流し始めた。
「まだ実感がないね。さくらが亡くなったなんて…」
「突然だったし…」
「まだ40なのに…」
「さくらはこの中でも出世頭だったよね」
「ああ、雑誌に出てたよね?びっくりしたよ。美容院でパラパラ見てたら、さくらだって」
「そうそう」
「見た見た」
「地方の雑誌だけどね」
「それでもすごいよね」
「無料の雑誌ね」
地元雑誌の「この街と」という雑誌に掲載されたのだ。頑張っている女性特集として取り上げられたのだ。ちょっと取材を受けて写真を取られただけだ。特集と言っても2ページで他にもいる中のひとりでその他大勢なのだが、さっきから話を折りまくっている人がいる。
相変わらずだな、自分が主役にならないと気が済まない友人、小田良子、独身。高校を卒業した後は数年間、事務員をしていたようだが、なぜか退職して今は何をしているかは分からない。それはもう友人を辞めたからだ。同じ独身同士仲良くして行こうと思っていたが、マウンティングするタイプで昔から厄介だった。あまりにもひどいので友人を辞めたのだ。他の5人には言っていない。
「良子、なんでそんな事言うの。地方とか無料とか関係ないでしょ!」
「いや、私は事実を言っただけでしょ」
「言う必要がないって事がわからない?」
「ごめ~ん、そんなに怒らないでよ」
「もう本当にムカつく。さくらが飲み会に参加しなくなったのは良子せいだって知ってるんだからね」
「え?なによ、それ…」
「良子はずっとさくらをバカにしてたでしょ。ずっとマウンティングしてたじゃん!そしてさくらに彼氏が出来たときも彼氏にそれとなく、さくらの悪口を吹き込んで別れさせたよね?」
「そんなことしてないよ…」
「元カレから聞いたから知ってるし!たまたま道で会ってどうして浮気したんだって聞いたら、さくらの事を随分ひどい事言って、さくらはそんな子じゃないよって言ったら良子ちゃんからそう聞いたって…信じられないよ!友達の事をそんな風に言うなんて。彼女じゃない人の言葉を信じる人なんかと付き合わない方がいいと思ってたけど、それ以降さくらは彼氏作らないし、きっとそれがトラウマになったのよ」
「それは…若かったし」
また、若気の至りですか。私の周りは若気の至る人が多くない?
「そして、今日も…さくらのお別れ会なのに、自分中心じゃない話はさっさと切り上げようとして…」
「それは本当にごめん…もう言わないから…」
「遅いよ…私もさくらにもっと連絡をすればよかった。仕事で忙しいかもって思って連絡しなかったけど…」
「私も…」
「うん…私も」
「でも、良子、本当にひどいよ。悪口吹き込んだのって、さくらずっと泣いてたよ」
「そうだね、あの頃ひどく痩せてて仕事しかしてなかったよね」
元カレに悪口を吹き込んだのは良子だと知っていた。30歳くらいの頃に偶然飲み屋で元カレに再会したのだ。その時に謝罪された。さくらの事を信じず良子の方を信じた自分がバカだったって。でも元カレはすでに結婚していた。元カレは晴れやかな顔で帰って行った。
謝罪されても良子の件を聞いた私にはモヤモヤしか残らない。自分は悪くないと言いたかったのだろう。しかし、友人が誤解を解いてくれていたのかそれは知らなかった。ありがとう。
良子はその日から6人グループからハブられた。友人5人で年に一度、私の命日に集まり墓参りをしてくれている様だ。
「お兄さん、この度はご愁傷さまです」
さくらの遺骨は兄の家に置いてあるようだ。
「わざわざ、ありがとう」
兄の家は実家からちょっと遠いのだ。友人たちはわざわざ、さくらの為に遠くまで来てくれた。
「あの、病気だと聞いたんですが…」
「ああ、膵臓がんだったようで、発見された時にはもう手の施しようがなかったんだそうだ」
「そうなんですか」
まだ40歳で友人のお線香を上げるとは思いもよらなかったことだろう。6人は変わる変わるお線香を上げていく。皆がお線香を上げ終わって兄の奥さんからお茶を出される。お茶に手を取り数人が涙を流し始めた。
「まだ実感がないね。さくらが亡くなったなんて…」
「突然だったし…」
「まだ40なのに…」
「さくらはこの中でも出世頭だったよね」
「ああ、雑誌に出てたよね?びっくりしたよ。美容院でパラパラ見てたら、さくらだって」
「そうそう」
「見た見た」
「地方の雑誌だけどね」
「それでもすごいよね」
「無料の雑誌ね」
地元雑誌の「この街と」という雑誌に掲載されたのだ。頑張っている女性特集として取り上げられたのだ。ちょっと取材を受けて写真を取られただけだ。特集と言っても2ページで他にもいる中のひとりでその他大勢なのだが、さっきから話を折りまくっている人がいる。
相変わらずだな、自分が主役にならないと気が済まない友人、小田良子、独身。高校を卒業した後は数年間、事務員をしていたようだが、なぜか退職して今は何をしているかは分からない。それはもう友人を辞めたからだ。同じ独身同士仲良くして行こうと思っていたが、マウンティングするタイプで昔から厄介だった。あまりにもひどいので友人を辞めたのだ。他の5人には言っていない。
「良子、なんでそんな事言うの。地方とか無料とか関係ないでしょ!」
「いや、私は事実を言っただけでしょ」
「言う必要がないって事がわからない?」
「ごめ~ん、そんなに怒らないでよ」
「もう本当にムカつく。さくらが飲み会に参加しなくなったのは良子せいだって知ってるんだからね」
「え?なによ、それ…」
「良子はずっとさくらをバカにしてたでしょ。ずっとマウンティングしてたじゃん!そしてさくらに彼氏が出来たときも彼氏にそれとなく、さくらの悪口を吹き込んで別れさせたよね?」
「そんなことしてないよ…」
「元カレから聞いたから知ってるし!たまたま道で会ってどうして浮気したんだって聞いたら、さくらの事を随分ひどい事言って、さくらはそんな子じゃないよって言ったら良子ちゃんからそう聞いたって…信じられないよ!友達の事をそんな風に言うなんて。彼女じゃない人の言葉を信じる人なんかと付き合わない方がいいと思ってたけど、それ以降さくらは彼氏作らないし、きっとそれがトラウマになったのよ」
「それは…若かったし」
また、若気の至りですか。私の周りは若気の至る人が多くない?
「そして、今日も…さくらのお別れ会なのに、自分中心じゃない話はさっさと切り上げようとして…」
「それは本当にごめん…もう言わないから…」
「遅いよ…私もさくらにもっと連絡をすればよかった。仕事で忙しいかもって思って連絡しなかったけど…」
「私も…」
「うん…私も」
「でも、良子、本当にひどいよ。悪口吹き込んだのって、さくらずっと泣いてたよ」
「そうだね、あの頃ひどく痩せてて仕事しかしてなかったよね」
元カレに悪口を吹き込んだのは良子だと知っていた。30歳くらいの頃に偶然飲み屋で元カレに再会したのだ。その時に謝罪された。さくらの事を信じず良子の方を信じた自分がバカだったって。でも元カレはすでに結婚していた。元カレは晴れやかな顔で帰って行った。
謝罪されても良子の件を聞いた私にはモヤモヤしか残らない。自分は悪くないと言いたかったのだろう。しかし、友人が誤解を解いてくれていたのかそれは知らなかった。ありがとう。
良子はその日から6人グループからハブられた。友人5人で年に一度、私の命日に集まり墓参りをしてくれている様だ。
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