パソニフィ・コンフュージョン

沼蛙 ぽッチ & デブニ

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第61話 変異

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ミトさんへのプレゼントを包装している間、メグちゃんにお店の奥にあるVIPルームに連れていかれた。
「此処へどうぞ、ノブ子お姉様。」
「知らない間に、メグちゃんのお姉様になってた?」
「私の事は、愛称では無く、是非"巡り"とお呼び下さい!」

姉弟ともども、新密度が上がると愛称では無く、本名で呼んで欲しいみたいだった。

その部屋は、フワフワのラグマットの上に机と上質そうな白色のカウチ。その周りを囲う様に、全てメグリちゃんが作った、店頭に並ぶ前の一点しかないお洋服がずらりとハンガーラックに掛けられていた。

その中の一つを取り出し、ノブ子の体にあてて、一先ずソファの上に置いた。
「やはり私の見立て通り、とてもお似合いです。なので早速お着替え致しましょう!」

「メグちゃ…リちゃんに服、剥ぎ取られる。」

「感謝の気持ちですわ。」
「……身に覚えのない、感謝。」

ノブ子を見てイメージされた、巡ちゃんによるオーダーメイドのお洋服。前回、ミトさんの衣装を作った事によって擬人化した者に対応するものだった。

「凄い。ピッタリだけど、窮屈じゃない。」
「ノブ子お姉さまをイメージして作ったのです。伸縮性と耐久性を兼ね備えた新素材を使ってみました。長年着られると思いますわ。」

「それに、ショートパンツにして良かったです。お姉さま、お下着履いて無いんですもの。」
「いつもは履いてるんだよ。今日は忘れただけ。」
本当はいつも忘れているのだけれど、ノブ子はお姉さまと呼ばれていい気になっていた。年上としての威厳を保つ為に、小さな子どもが言う様な嘘で見えを張った。

「ああ、イハルに見せたかった……きっとまた絵のインスピレーションが湧きますわ。」
「……まだイハルくんに会うの気まずい。何度も謝ってくれたのに、私、許せなかった……」

メグリは、机の上に置かれたアフタティーセットから、緑色のお菓子を取ってノブ子の半開きになっていた口に滑り込ませた。
「天然のクロロフィルの着色料のマカロンですわ。」
「……クロロロフィロン?」

「イハルはあの凡庸なクラスメートを気にかける様になってから、ずっと絵のスランプで悩んでいました。ですが、ノブ子お姉さまと喧嘩して、絵が描ける様になったのです。だから、愚かで大好きな弟の代わりに感謝を伝えたかったのです。」
「そっか。また絵が描ける様になったんだイハルくん……良かった。」

─なので、イハルは本格的に絵の勉強をする為、海外へ留学しましたの。

それを聞いて、ノブ子は目を見開いた。



「追ってが退いていく……たけどあまりにも変な対応だったな。奴らは、もっと林さんを丁重に扱うと思っていたけれど……」

「あの人たちは、即席の日雇い人員でしょう。手荒なのもそういう訳かもしれません。ですが……私一人に執着するのはおかしいのです。優秀なエンジニアなんて他に居ますでしょうし。」
「それじゃあ、どうしても嫁にしたかったから、こんなにも強引だったの?」
「危険運転をする、貴方には言われたくないですけどね。」
「えー、自分一人が連れ去られたらこの場がおさまるとでも思ってた風の浅はかな後輩ロボットを保護したのに。善意で。」
「うるさいですね!」

「……ですが、貿易船を沈めるとは思いませんでした。ポリーナさんが言うには、貿易船には父と母と娘の私が乗り込む手筈の船でした。それが叶わなかった腹いせでしょうか……わかりません。」

その頃、ラジアータ王は側近に報告を受けていた。
「あちらの秘密組織が此方の動向に気がついた様なので、引き揚げさせました。まあ、現地で調達した人員にしては良い働きをしたのでは?」
「あーあ、あれは欲しかった。博士はムスメと言っていたが、あれはAIロボットであろう?あんなにも完璧に整った容姿の人間など居る筈ないからの。」

言葉の壁なのか。伝言ゲームの伝達ミスなのか。それを体現するかの様な情報の伝わり方をしていた。

それ故に、林さんは完全にロボットだと思われていた。引き抜こうとしたエンジニアは、其を作った父親の事を指していた。

「故に、仮にそれが本物の人間だとしたら、王妃にすると言ったのだ。博士がいれば、少しばかり壊れても直せると思ったのだがな。」

「しかし、華様は何故そのロボットと接触されていたのでしょう?」
「華はもっと聡明な子だと思っていたんだがな……この件に関わってしまったのは不憫であった。知り過ぎた故に海に消えてもらう事にした。華は華で、気に入っておったのだが……仕方あるまい。」

数年後、ラジアータ王は暗殺された。沢山の護衛の居る前で。

「もう君は、沢山の子孫を残したからいいでしょ?」

そう言った暗殺者は、メグリちゃんがデザインした一点物のお洋服を着ていた。
内戦で荒廃した土地に合う、スチームパンク的な衣装。ブラウンカラーが、迷彩色の様な効果を出していた。

スタンドカラーのノースリーブにショートパンツの一体型のワンピース。前開きのジッパー。腰にはベルト飾りに波打つフリルスカートが後ろ下がり広がっているデザインだった。

それに、羽織っていたフード付きのマントが風になびいていた。

しかし、その人物は"ノブ子"の容姿とは違っていた。
透き通った髪は、プラチナブロンドに近く。その瞳は血の様な深い紅色をしていた。
しかし、別の者は左目は漆黒、右目は紅い瞳のオッドアイに見えたという。
恐怖を覚えた者は、深い紫色のひとつ目の人成らざる者に見えたらしい。
目撃した者の情報で一致していたのは、変わった服装をしていたという事だけだった─

一瞬呆気にとられていた家臣は急いで攻撃を開始した。しかし、銃の弾は身体を透過し、刃物が当たる頃にはもう遠くへと間合いを取られていた後だった。

「ごめんね……聡見は、大切な人だから。」
と、透き通る様な声色だけを残して去っていった。その後、再びこの地の王は消え、再び内戦の国となった。

「よくやった、お前は反国王派の英雄だ。」
「そっか。それじゃあ、終わったので産休取ります。」
「ん……産休??」

その後、彼女は行方知れずになった。人知れず自分を愛してくれる人を探す為、心地のよい居場所を求めて各地を訪れる事にした。

僕は何故かこの様に醜い容姿で生まれてしまった。そんな僕でも綺麗だと言ってくれたイハルお義父様は“禁忌の子”だった為に、24歳という若さで老衰で逝ってしまった─

もう、僕だけを愛してくれる人は居ないのだ。窮地になると自分だけのパートナーが現れるという言い伝えを無き母から受け継いだ。
だけど、こんなにも荒んだ土地に来ても何も変わらなかった─

(ここには運命の人が居なかっただけ。次に行こう……)

そして彼女は、婚活パーティーに出掛けた。
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