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第56話 告白の行く末

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遅めに開催された文化祭が終わった。後片付けを終えるまで後少し。閑散とした渡り廊下を仲良く2人で歩いていた。

「寒いですね……」
そう呟くと、彼女はふわふわとした可愛らしいリボンの付いた手袋で私の手を包み込んだ。

「文化祭マジックって言われても構わない。林さんの魅力がマジでエグい。側に居るのもう限界。好き……好き。付き合って下さい!」

─そして、僕と一緒にクリスマスを過ごして下さい。

その時、冷たい風が吹いて彼女のスカートを舞い上げた。下着がちらりと見えた……

「え、えーと……何といいますか、その。……私、告白されるとか無縁だったもので、考えさせて下さい─」

思わず、バッと180度方向転換していた。そして、望月さんを一人残して、全力で走って逃げてしまった。

(どうしましょう!どうしましょう!どうしましょう!)
逃げ込んだ先は、生徒会室。
「どうしたんじゃ!?そんなに息を切らしして。」
華会長は、びっくりした顔を此方に向けた。彼女が向かう長机に置かれた週刊誌の記事が目に入って来た。

「全て、これのせいです!いや、ミトのせいです!」
華会長がむくれた顔をした。
「何が不満なのじゃ?我は寧ろ羨ましいのじゃ!」

そこには、ミトと私がばっちりとキスをしている写真が載っていた。あの時居た大勢の中の誰かがの写真が流出しても、おかしくはなかった。私の顔は加工によって伏せられていた。

ミトはこの記事に対して、「単なる、お仕置きだよ。制裁した。」とコメントした。

華会長はミトの格闘映像を見ながら、"制裁して♡"という文字でデコレーションされた団扇を持って応援していた。
(なんという悪夢!!)

「だからあのパンツ……!親友からの告白!どうすれば!」
「何をぶつぶつと言っておるのじゃ?」

「兎に角、退出させて頂きます。」
「その荷物……また鈴虫さんの処へ泊まりに行くのかえ?」
「妖精さんです!」

あまり自分の家を空けるものではないぞ。と、心配する会長の声を背にして早々と学校を去った。

「アキヨシさん、聞いて下さいー!」

「イダダダダダダダダー!!ちょっと、僕で試し噛みしないで……」

扉の向こうには、小学生の男の子に首筋を噛まれている涙目のアキヨシさんが居た。
……正直引いた。

「僕の方が先客なの。アンドロイドなお姉さんはお帰り下さい。」

イハルくんは、長い前髪を後ろに撫で付けて顔が見える様にしていた。きっと、妖精さんにその方が良いと言われたからだろう。

「何で2人して、僕に恋バナなんて持ち掛けて来るの!?」 

一緒に帰宅した妖精さんは、"恋バナ"という素敵ワードに目をキラキラさせていた。

きっと涙ぼくろのある大人は、恋愛について詳しい筈だと二人は言った。自分の知らない常識にアキヨシは困惑した。若い子の間ではそうなのだろうか……?
(それなら、僕より弟のハルヨシの方が適任だと思う……)

「何故いつもこの子を招き入れてるんですか!苦手って言ってましたよね?」
「何だか、イハルくんって僕に似てる気がするし、もし反抗期の息子が居たらこんな感じなのかなって……」
36歳アキヨシは独身を拗らせていた。イハルくんを架空の息子として見始めていた。林さんは、ドン引いた……

「初めての告白が、可愛らしい女の子からなんです。」
同性でも彼女の事は嫌いじゃないです。断るにしても、折角出来た友だちとの関係を壊したくない。

だけど、彼女の下着がミトが履いてた様なスポーティーな感じのだったんです。彼女の持ち物は全てガーリーなのに何故なんでしょう……?それを見てから、初キスを奪った忌まわしきミトの顔がちらついて混乱しているのです。

(女子高生のパンツの話をされても反応に困る!)

「ミトちゃんの事は一先ず置いておいて。取り敢えず……お友達の告白の返事から考えたらいいんじゃないかな。」

望月さんが履いて居たのは男性用の下着だったのだが、林さんはまだ気付いていなかった。

(僕とした事が、可愛くない方のパンツ履いて行っちゃった。林さんと居る時は可愛い勝負下着履くって決めてたのに!)と、お風呂に入る時、望月さんは思った。

「僕はね、髪上げて行ったら急にクラスの子に取り囲まれて困ったの。」
吸血鬼みたいって言われて、首を噛んで欲しいって言われた。だから先ず、アキヨシに試してみる事にしたの。ノブ子にはしたいけど、他の子にはしたくなかったから。
「うーん。どうして其処で僕に試そうと思ったのか、いまいち分からなかったけど……良かったじゃない、人気者になって。」

「問題はそこじゃなくって─」

一言だけ、「前髪上げてた方が良いじゃん。」って去って行った子が気になった。僕の全然好きなタイプじゃないのに。デニムのショートパンツ、髪は染めてて、カジュアルな感じ。量産されたみたいな子。なのに、その女の子は他の子と違って太陽みたいに笑うから、近づくと本当に吸血鬼みたいに灰になってしまいそう─

「だから、いつもの様に意地悪して気を引こうとも思えない。なのに気になる。って、その変な子が言うんですよ。それ、完全に恋してるのに否定してて。笑っちゃいましたよ。」

「聡見は最近、表情豊かになったの。今日もまた、鈴虫さんの処へ行くのかえ?」
「ええ、だってその変な子の話のせいで、クリスマスを誰と過ごすかまで相談出来なかったのですから。」

「聡見は良いの……羨ましいのじゃ。」
どうしてそんな事を言うのか分からなかった。少し僻みっぽく言われて不思議に思った。

「華会長は、婚約者さんと過ごされるのでしょ?クリスマス。」

「うむ。……そして、そのまま高校を中退する事になりそうじゃ。」

「中退……?なんでまた急に。」

─帰国が早まったのじゃ。告白次いでに我の話を聞いてくれるかの。聡見……

そんな華会長の告白は、楽しそうな雰囲気ではなかった。
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