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俺の話
好きの理由
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お風呂に入っている間に都居くんは汚したシーツを洗濯してくれていた。
お尻がまだみょんみょんする……。
「シーツ洗濯中だしさ。俺の部屋で一緒に寝よう!!」
そう誘われて……初めて都居くんの部屋に入る。やることやったあとだけど、ドキドキして都居くん後をついて行くと……。
リビングにあったのはほんの一部だったんだ……部屋を埋め尽くす、大量のタヌキグッズ。筋金入りだね。
ベッドに誘われて……サイドテーブルの上に置かれていた俺のあげたタヌキの置物。
こんな所にいたんだ。
寝ようって言ったのに、都居くんがずっと抱き付いてきて眠れない。
「そういえば……山川の夢って何?」
不意に都居くんに投げ掛けられる。
幼稚な夢だとバカにされるのが嫌で誰にも話した事なかったけど……都居くんならバカにせずに聞いてくれそうな気がする。
「絵本作家の『みやこ ただし』がすごい好きで……」
都居くんの目が見開かれた。
そんなに驚かなくても絵本作家になりたいなんて大それた夢を語る気はないって……。
「みやこ ただしミュージアムで働けたらなって思ってこっちに出て来たんだけど……中々欠員は出ないみたいでさ、後一年はバイトで粘ってみようと思ったんだけど……そろそろ諦め時かなって……」
「……マジか…」
人が夢を諦めようと言う話をしてるのに……何で嬉しそうなんだ?
「自分だってバカみたいな夢だとは思ってるよ……」
ムッと顔を顰めると都居くんは慌てて謝って来た。
「ごめん!!バカにした訳じゃなくて……その……『みやこ ただし』が好きって…そっか……だから山川のイラストは食べ物がテーマなのが多かったのか……」
俺の作品知ってたんだ?評価とか中の下で高評価作品の様に公開とかもされてなかったのに?
「みやこ先生の『料理の国の王子様』シリーズが好きで……ウィンナーの実のなる木とか生クリームの雪とか……花をミンサーでひき肉にしたり……魔法みたいに料理が出来て行く過程が楽しくて……しんけん読みよって……」
思い出しただけでワクワクして来た。
「みやこ先生の料理が好きなんやろうなぁって想いが絵からも伝わって来て……王子様も凄い優しくて格好良くて……じゃあけん、好きやったんや……」
都居くんは顔を真っ赤にして照れている……なぜ都居くんが照れる?
「山川!!これって運命と思わない!?」
いきなり興奮気味に手を握り込まれる。
「何!?急にどうしたの!?」
「俺が好きな本……マイナーだけど『ようかいのおともだち』で……」
みやこ先生の本だ……。
都居くんは立ち上がり、本棚から一冊の絵本を取り出してページを捲った。
本当によく読んでいるのかクセがついていて、すぐに目的のページが開かれた。
大好きなみやこ先生の可愛い絵で面白可笑しい、友達になれそうな妖怪がかかれている物だったはず。
開かれたページには、おんぶされて無邪気に笑う子ダヌキの絵が描かれている。
『あかでんちゅう』
おんぶをせがみ、おんぶすると嬉しそうにはしゃぐタヌキの妖怪。
「絶対『あかでんちゅう』と出会ったら家に連れ帰ってやろうと思ってた……」
都居くんのタヌキグッズ収集はここから始まってるのか……
「この『あかでんちゅう』ってさ……山川に似てない?」
「似とらんし……」
タヌキに似てるってあんまり褒め言葉で聞かないよね?
……タヌキみたいなお腹って事かな?
あんまり気にしたこと無いけど、都居くんのご飯が美味しすぎて太った?
「ぽやっとしてて、ちょっと抜けてるとことか、幸せそうにご飯食べるとことか、必死で隠そうとしてても、ふと方言が出て恥ずかしそうにしてるとことか全部好き……」
「と……都居くん?」
タヌキの話……だよね?
「初めて見たときから似てるなって思って……そうしたら街でタヌキを見掛ける度に山川に見えてきて……そうしたら連れて帰んなきゃって……」
大量に集められたタヌキグッズがこっちを見て笑っている気がしてドキッとする。
いや……実際、笑顔の置物なんだけど。
都居くんに一目惚れされてたってこと……?
理由がいまいちだけど……ドキドキしてきた。
タヌキに化かされてるのか?
都居くんの胸にすり寄り目を閉じた。
化かすなら……最後まで責任を持って化かしてくれるといいな。
お尻がまだみょんみょんする……。
「シーツ洗濯中だしさ。俺の部屋で一緒に寝よう!!」
そう誘われて……初めて都居くんの部屋に入る。やることやったあとだけど、ドキドキして都居くん後をついて行くと……。
リビングにあったのはほんの一部だったんだ……部屋を埋め尽くす、大量のタヌキグッズ。筋金入りだね。
ベッドに誘われて……サイドテーブルの上に置かれていた俺のあげたタヌキの置物。
こんな所にいたんだ。
寝ようって言ったのに、都居くんがずっと抱き付いてきて眠れない。
「そういえば……山川の夢って何?」
不意に都居くんに投げ掛けられる。
幼稚な夢だとバカにされるのが嫌で誰にも話した事なかったけど……都居くんならバカにせずに聞いてくれそうな気がする。
「絵本作家の『みやこ ただし』がすごい好きで……」
都居くんの目が見開かれた。
そんなに驚かなくても絵本作家になりたいなんて大それた夢を語る気はないって……。
「みやこ ただしミュージアムで働けたらなって思ってこっちに出て来たんだけど……中々欠員は出ないみたいでさ、後一年はバイトで粘ってみようと思ったんだけど……そろそろ諦め時かなって……」
「……マジか…」
人が夢を諦めようと言う話をしてるのに……何で嬉しそうなんだ?
「自分だってバカみたいな夢だとは思ってるよ……」
ムッと顔を顰めると都居くんは慌てて謝って来た。
「ごめん!!バカにした訳じゃなくて……その……『みやこ ただし』が好きって…そっか……だから山川のイラストは食べ物がテーマなのが多かったのか……」
俺の作品知ってたんだ?評価とか中の下で高評価作品の様に公開とかもされてなかったのに?
「みやこ先生の『料理の国の王子様』シリーズが好きで……ウィンナーの実のなる木とか生クリームの雪とか……花をミンサーでひき肉にしたり……魔法みたいに料理が出来て行く過程が楽しくて……しんけん読みよって……」
思い出しただけでワクワクして来た。
「みやこ先生の料理が好きなんやろうなぁって想いが絵からも伝わって来て……王子様も凄い優しくて格好良くて……じゃあけん、好きやったんや……」
都居くんは顔を真っ赤にして照れている……なぜ都居くんが照れる?
「山川!!これって運命と思わない!?」
いきなり興奮気味に手を握り込まれる。
「何!?急にどうしたの!?」
「俺が好きな本……マイナーだけど『ようかいのおともだち』で……」
みやこ先生の本だ……。
都居くんは立ち上がり、本棚から一冊の絵本を取り出してページを捲った。
本当によく読んでいるのかクセがついていて、すぐに目的のページが開かれた。
大好きなみやこ先生の可愛い絵で面白可笑しい、友達になれそうな妖怪がかかれている物だったはず。
開かれたページには、おんぶされて無邪気に笑う子ダヌキの絵が描かれている。
『あかでんちゅう』
おんぶをせがみ、おんぶすると嬉しそうにはしゃぐタヌキの妖怪。
「絶対『あかでんちゅう』と出会ったら家に連れ帰ってやろうと思ってた……」
都居くんのタヌキグッズ収集はここから始まってるのか……
「この『あかでんちゅう』ってさ……山川に似てない?」
「似とらんし……」
タヌキに似てるってあんまり褒め言葉で聞かないよね?
……タヌキみたいなお腹って事かな?
あんまり気にしたこと無いけど、都居くんのご飯が美味しすぎて太った?
「ぽやっとしてて、ちょっと抜けてるとことか、幸せそうにご飯食べるとことか、必死で隠そうとしてても、ふと方言が出て恥ずかしそうにしてるとことか全部好き……」
「と……都居くん?」
タヌキの話……だよね?
「初めて見たときから似てるなって思って……そうしたら街でタヌキを見掛ける度に山川に見えてきて……そうしたら連れて帰んなきゃって……」
大量に集められたタヌキグッズがこっちを見て笑っている気がしてドキッとする。
いや……実際、笑顔の置物なんだけど。
都居くんに一目惚れされてたってこと……?
理由がいまいちだけど……ドキドキしてきた。
タヌキに化かされてるのか?
都居くんの胸にすり寄り目を閉じた。
化かすなら……最後まで責任を持って化かしてくれるといいな。
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