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宇宙人は大概チート

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【異世界に飛ばされてまずやるべき事】
・安全な拠点の確保
・飲み水の確保
・火を起こす
・食料の確保

【基盤が整ったらやるべきこと】
・この星の異世界人を探す
・宇宙船の燃料の確保
・地球へ戻る方法を探す

書き出す程の事ではないけれど、書く事によって気持ちを落ち着かせたいと言うのが1番の目的だ。

『安全な拠点の確保』
これはナディユさんの宇宙船があるから、ひとまずクリアで良いだろう。

『飲み水の確保』
今はナディユさんの貯水分があるみたいだけど、これがいつまでもつのか分からない。
飲料用だけでなく、風呂とまでは贅沢言わないが体は洗いたい。知らない土地、異世界人と出会えていない今、病気になるのは危険なので不潔は避けたいと言うことで、何としても湧き水を探し出したい。
でも一人ではそっこう獣の腹の中に収まりそうなのでナディユさんに着いてきて貰いたいところだ。

ナディユさんはあの銃以外にも武器を持っているのだろうか?あの銃はあと何発撃てるのだろう?
これは後でナディユさんに要確認だな。

ナディユさんは……俺のスマホを分解して、なるほどとかそういうことか、とかブツブツ言っている。もう暫くは話は出来そうにない。

『火を起こす』
湧き水を見つけても煮沸をしなければ危ないだろうし、この先食料を手に入れた時に調理もしたい。暖を取る、灯り目的ならこの宇宙船にいる限りは平気だろう……ん?燃料が無いと言っていたな……いずれこの宇宙船が機能しなくなる事を考えると早急に火起こしは必要か。

木の板と木の棒でゴシゴシやるやつしか知らんが……俺に出来るかな……これはまあ、やってみるしかない。
あとどれぐらいこの宇宙船が動いていられるのか、これもナディユさんに要確認っと……。

『食料の確保』
無人島なら貝を探すんだけど……山の中だったからな。海があれば塩も何とか手に入れられそうなもんだが……当面の食事は木の実とか小動物を狩るとか?罠を仕掛けて捕まえる事が出来たところで捌けるのか?そもそも捌くための刃物……ナディユさんに聞いてみよう。

『この星の異世界人を探す』
ナディユさんは元々その調査で来てるから、ナディユさんの側にいたらいずれ会えるだろう。

『宇宙船の燃料の確保』
燃料が何なのか知らないから、簡単にこの世界で補給出来るものかわからないな、これもナディユさんに後で聞いてみよう。

『地球へ戻る方法を探す』
ナディユさんが帰す方法がわからないみたいだから、いま現在俺が悩んでもわかるはずがない。
メジャーなのはラスボス倒すって事だろうが、勇者として召喚されたっぽくないからな……ナディユさんの仮定を信じるなら事故みたいなもんだ。

……やるべき事を書き出してみたけれど、全てナディユさんに確認という結論で終わったな。
俺の異世界ライフは完全にナディユさん頼みだ。

机に残っていた残りの飲み物もせっかくなので順番に飲みながらナディユさんが戻ってくるのを待っていると、最後の飲み物に手をつけたところで、ナディユさんから「ふう……」と息を吐き出す声が聞こえた。
ようやく満足したのだろうか。

「あ……すみません、克真さん!!つい夢中になってしまって……」

申し訳無さそうに謝られ、悪いと思いながらもついつい熱中すると周りが見えなくなる人なんだろうな。

「大丈夫ですよ。俺も自分の置かれている現状をゆっくり整理する時間が取れたので心を落ち着ける事が出来ました」

「克真さんは最初から落ち着いていらしたじゃないですか……異世界に飛ばされてまずやるべき事……ですか?」

俺の拡げていたノートをナディユさんは興味深そうに見つめた。

「読めるんですか?」

「スマホを解析しながら覚えました」

スマホを分解してどうして日本語が読めるようになるのかは謎だけど読めているのだからそうなのだろう。
映画とかでも宇宙人の学習能力は半端ないし、深く考えるより、言葉が通じてラッキーぐらいに思っておこう。

「私に確認……ですか?そうですね……魔機の動力源ですが、大気中の魔素を取り込んで動く仕組みになっていますので、この星の魔素が枯れない限りは基本的な機能は動き続けます。魔弾式銃の弾も魔素を集めて撃ち放つ物なので同様ですよ。ただ宇宙へ飛び立つと程の動力となると、魔素を圧縮した魔動力球が無ければ動かせません。魔動力球を作るには今ある設備では難しいですね」

俺が要チェックマークを書いた事をノートから読み取って、丁寧に説明をしてくれる。なんて楽な宇宙人。

「水に関しては大気中の水蒸気から飲み水に変えていますから心配ないです。ただ、お風呂というものを用意するとなると川なり海なりは見つけておきたいところですね。それまでは清浄用の魔機で病気は予防しましょう。火は魔弾式銃でも点ける事が出来ますが、火起こしなんてした事はないので楽しみです。食事は外で獣を狩って串焼きですね」

「……ナディユさん、何だか楽しそうですね」

ナディユさんのおかげで原始的な生活はしなくて済みそうだけど、帰る方法がないという状況は変わっていない。もしこの世界にナディユさんの言う知的生命体がいなければ、こんな星で二人きりで一生を過ごさなければならないというのに……ナディユさんの様子は逆に楽しそうに見える。

「魔機を使わない生活をした事がなくて……克真さんのスマホで異世界の生活方法も勉強しました、楽しみですね冒険者生活。ドラゴン肉を味わってみたいものです」

スマホ……電子書籍で買っていた異世界漫画まで閲覧出来たのか。
そして何か感化されてる。
いやいや、使える魔機は使いましょう。せっかく便利な道具があるのに無駄に体力を使う必要はない……が、ナディユさんは楽しそうだし、まだ心の余裕のある数日ぐらいはキャンプ気分で火起こしやらを楽しむのもありかな。
しんどいって事が分かれば飽きるだろう。

「それで、克真さんにはどんなチート能力が?」

「そんな期待の眼差しで見られても、何もないですよ。ナディユさんが見たのは漫画って言って空想の話ですよ。チートっていうならナディユさんの存在はチートでしょう」

「私がチートですか?……」

疑いようもなく、俺からしたらチート能力者だと思うんだけど……ナディユさんは何かを考え込んだ。時折チラチラと顔を見られる。

「そうですか……克真さんと……わかりました、いいですね!!克真さんの事は全力でお守りします」

「え……ありがとうございます……」

ありがたい宣言だけど……なぜか背筋がひやりと冷えた。
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