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子供は巣立っていくもの
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「うわっ!!魔物!?」
畑の様子を見に付き添ってくれた隊長に思わず抱きついたが……よく見たらレイニート様のゴーレムだった。
地面に腹ばいになり両手で頬を支えて足を振って畑の芽を眺めている姿は、見た目に反して乙女だな。
「畑の見張りをしてくれているんだろう」
そうか、荒らされるとかそういうの全く考えてなかった。レイニート様に感謝しなきゃ。
「そんなに見ててもすぐには大きくならないよ」
俺と同じ位の大きさのミニゴーレムに声を掛けるとシュンと項垂れた姿で畑の周りを歩き始めた。申し訳ない気持ちになるけど……流石に植物の成長は俺ではなんともしてあげられない。
今日はちゃんと桶と柄杓っぽい物を持ってきたので万全だと思ったけど……水源が遠かった。
ルノさんみたいにとはいかなくても隊長も水が出せるのかと思ったら、隊長の魔法は自らの肉体強化系ばかりで少し離れた井戸まで汲みに行かなければ駄目だった。
さすがは隊長……軽々と水を汲み上げ桶2つ持ってさっさと行ってしまった。
俺は……井戸から水を汲み上げる時点で苦戦している。でもそこはさすが俺。経験値なんて必要としていないからぬいぐるみ達の力を堂々と借りた。猫の手も借りたいとはよく言ったものだ。
ぬいぐるみ達と協力して桶を運び水を撒いていく様子を隊長は水を撒く手を止めて食い入る様に見て来る。
ズルは許さないとか?……でもレイニート様だってゴーレムを使ってるし……。
「なあ、シーナ……そいつらはお前の命令なら何でも聞くのか?お前が命令を出している様子はねぇが……お前が使ってるぐらいだから原動力は魔力じゃねぇよな?」
「命令……というか、わりと自由に勝手に行動してますよ。原動力は俺も知りません」
今は俺が畑仕事を手伝ってとお願いしたから手伝ってくれているけど、放っておくとぬいぐるみ同士で遊びだすし、お願いしてもやりたくないと思ったらやってくれない。
前に剣を差し出して、スライム倒すの手伝ってとお願いした時は差し出した剣ごと無視された。
現に猫のぬいぐるみはもう飽きたのか、井戸の側で寝ている。くまは皆をカバーするように動くし、犬のぬいぐるみは働き者で頭もよく指示をしなくても先を見て動いてくれるし、うさぎは引っ込み思案でよく俺の顔色を伺ってくる……それぞれに性格があるようだ。
「ふ~ん……俺のお願いも聞いてくれたりするのか?俺の水撒きも手伝ってくれるか?」
隊長がぬいぐるみに声を掛けるとくまが頷いて隊長の柄杓を受け取り、うさぎは俺の顔色を伺っている。
「どうしたんですか?隊長ならこれぐらいで疲れたりしないですよね?」
犬は水を撒き終わり桶を持って井戸へ走って行った。
「いや……お前の命令を忠実に守るなら……貸してもらいてぇと思ったんだけど……お前が命令を出しているわけじゃないなら危険か……」
「何に使う気だったんですか?添い寝?隊長意外と可愛い物好き?」
今この畑はかなりメルヘンだからな……俺もできる事ならレイニート様のゴーレム達の様に強くてかっこいい、俺に忠実な子達が欲しかった。
「俺じゃねぇよ!!……カイとリーナだ。詰所で大勢での食事が楽しかった見てぇでな……だからこそ今まで通りが寂しそうなんだよ。ナタリアの留守中なんかに遊び相手になってくれりゃあなと、思ったんだが、無理っぽいな」
そっか……そうだよな。
遊びにおいでって気軽に言っちゃったけど、楽しい事を覚えたら……家に閉じこもりっぱなしはつまんないよな……遊ばせてあげたいって善意のつもりだったのに、なんか返って悪い事しちゃった。
「おいおい……お前が落ち込むなよ。別にお前が悪い事をしたわけじゃねぇよ……楽しみを何も知らないよかいいだろうし、それを実現させる為に頑張れるだろうしな」
「一応この子達の意思も聞いてみます」
動き出したからお蔵入りにしたけど元々はカイとリーナの玩具になればと思って作ってたからな。
「カイとリーナを知ってる人~」
3匹が勢いよく手を上げて、寝てたはずの猫も寄ってきて手を上げた。
「じゃあ……カイとリーナのうちの子になっても良いと思う人~」
これにも勢いよく4匹全員手を上げた。
心なしか嬉しそうにも見える……まあ、二人の為にと思ってたからね……だが、少し寂しいぞ。
「カイとリーナと一緒にいたいみたいですよ……」
「なに拗ねてんだよ……でもそうか。お前たちあいつ等と遊んでくれるのか」
元々玩具だもんね。エレーナにも立ち向かう勇気があって、俺よりも軽々と桶を持ち上げられたとしても、遊んで貰う事の方がそりゃあ嬉しいわな。
けして俺がぬいぐるみ全員にふられてしまったわけではない。
まあ……隊長も嬉しそうだし良いか。
ーーーーーー
畑仕事を終えて詰所に戻ると、隊長は早速ぬいぐるみ達を抱えて街の中へ掛けて行った。
俺達やナタリアさん達の前以外ではぬいぐるみの振りをする事、カイとリーナに危険が迫ったら守る事をお願いしているので、嬉しそうにぬいぐるみを両脇に抱えて走るマッチョは中々可愛らしい。
収納箱に入れて行けばいいのに……よほど興奮しているんだろう。
…………。
次から井戸水どうやって汲み上げよう……。
小さくなっていく隊長の背中に思うのは……双子が喜んでくれると良いなって期待と、僅かな後悔だった。
畑の様子を見に付き添ってくれた隊長に思わず抱きついたが……よく見たらレイニート様のゴーレムだった。
地面に腹ばいになり両手で頬を支えて足を振って畑の芽を眺めている姿は、見た目に反して乙女だな。
「畑の見張りをしてくれているんだろう」
そうか、荒らされるとかそういうの全く考えてなかった。レイニート様に感謝しなきゃ。
「そんなに見ててもすぐには大きくならないよ」
俺と同じ位の大きさのミニゴーレムに声を掛けるとシュンと項垂れた姿で畑の周りを歩き始めた。申し訳ない気持ちになるけど……流石に植物の成長は俺ではなんともしてあげられない。
今日はちゃんと桶と柄杓っぽい物を持ってきたので万全だと思ったけど……水源が遠かった。
ルノさんみたいにとはいかなくても隊長も水が出せるのかと思ったら、隊長の魔法は自らの肉体強化系ばかりで少し離れた井戸まで汲みに行かなければ駄目だった。
さすがは隊長……軽々と水を汲み上げ桶2つ持ってさっさと行ってしまった。
俺は……井戸から水を汲み上げる時点で苦戦している。でもそこはさすが俺。経験値なんて必要としていないからぬいぐるみ達の力を堂々と借りた。猫の手も借りたいとはよく言ったものだ。
ぬいぐるみ達と協力して桶を運び水を撒いていく様子を隊長は水を撒く手を止めて食い入る様に見て来る。
ズルは許さないとか?……でもレイニート様だってゴーレムを使ってるし……。
「なあ、シーナ……そいつらはお前の命令なら何でも聞くのか?お前が命令を出している様子はねぇが……お前が使ってるぐらいだから原動力は魔力じゃねぇよな?」
「命令……というか、わりと自由に勝手に行動してますよ。原動力は俺も知りません」
今は俺が畑仕事を手伝ってとお願いしたから手伝ってくれているけど、放っておくとぬいぐるみ同士で遊びだすし、お願いしてもやりたくないと思ったらやってくれない。
前に剣を差し出して、スライム倒すの手伝ってとお願いした時は差し出した剣ごと無視された。
現に猫のぬいぐるみはもう飽きたのか、井戸の側で寝ている。くまは皆をカバーするように動くし、犬のぬいぐるみは働き者で頭もよく指示をしなくても先を見て動いてくれるし、うさぎは引っ込み思案でよく俺の顔色を伺ってくる……それぞれに性格があるようだ。
「ふ~ん……俺のお願いも聞いてくれたりするのか?俺の水撒きも手伝ってくれるか?」
隊長がぬいぐるみに声を掛けるとくまが頷いて隊長の柄杓を受け取り、うさぎは俺の顔色を伺っている。
「どうしたんですか?隊長ならこれぐらいで疲れたりしないですよね?」
犬は水を撒き終わり桶を持って井戸へ走って行った。
「いや……お前の命令を忠実に守るなら……貸してもらいてぇと思ったんだけど……お前が命令を出しているわけじゃないなら危険か……」
「何に使う気だったんですか?添い寝?隊長意外と可愛い物好き?」
今この畑はかなりメルヘンだからな……俺もできる事ならレイニート様のゴーレム達の様に強くてかっこいい、俺に忠実な子達が欲しかった。
「俺じゃねぇよ!!……カイとリーナだ。詰所で大勢での食事が楽しかった見てぇでな……だからこそ今まで通りが寂しそうなんだよ。ナタリアの留守中なんかに遊び相手になってくれりゃあなと、思ったんだが、無理っぽいな」
そっか……そうだよな。
遊びにおいでって気軽に言っちゃったけど、楽しい事を覚えたら……家に閉じこもりっぱなしはつまんないよな……遊ばせてあげたいって善意のつもりだったのに、なんか返って悪い事しちゃった。
「おいおい……お前が落ち込むなよ。別にお前が悪い事をしたわけじゃねぇよ……楽しみを何も知らないよかいいだろうし、それを実現させる為に頑張れるだろうしな」
「一応この子達の意思も聞いてみます」
動き出したからお蔵入りにしたけど元々はカイとリーナの玩具になればと思って作ってたからな。
「カイとリーナを知ってる人~」
3匹が勢いよく手を上げて、寝てたはずの猫も寄ってきて手を上げた。
「じゃあ……カイとリーナのうちの子になっても良いと思う人~」
これにも勢いよく4匹全員手を上げた。
心なしか嬉しそうにも見える……まあ、二人の為にと思ってたからね……だが、少し寂しいぞ。
「カイとリーナと一緒にいたいみたいですよ……」
「なに拗ねてんだよ……でもそうか。お前たちあいつ等と遊んでくれるのか」
元々玩具だもんね。エレーナにも立ち向かう勇気があって、俺よりも軽々と桶を持ち上げられたとしても、遊んで貰う事の方がそりゃあ嬉しいわな。
けして俺がぬいぐるみ全員にふられてしまったわけではない。
まあ……隊長も嬉しそうだし良いか。
ーーーーーー
畑仕事を終えて詰所に戻ると、隊長は早速ぬいぐるみ達を抱えて街の中へ掛けて行った。
俺達やナタリアさん達の前以外ではぬいぐるみの振りをする事、カイとリーナに危険が迫ったら守る事をお願いしているので、嬉しそうにぬいぐるみを両脇に抱えて走るマッチョは中々可愛らしい。
収納箱に入れて行けばいいのに……よほど興奮しているんだろう。
…………。
次から井戸水どうやって汲み上げよう……。
小さくなっていく隊長の背中に思うのは……双子が喜んでくれると良いなって期待と、僅かな後悔だった。
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