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理想世界
玩弄願望
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俺の作ったゲームの世界で出会った、俺が産み出した最高傑作の可愛いミャオちゃんは『宮尾』だった。
俺が想像の中で作り上げたミャオちゃんより、宮尾は素直じゃ無くて、暴力的で、不器用だった。
それなのにミャオちゃんより何倍も魅力的だと感じる。
理想としていた宮尾とは違うけど、次はどんな顔を見せてくれるのか、どんな事を考えているのか……もっと宮尾の事を知りたいとワクワクして……その度にもっともっと好きになっていく。
会えないイラつきと感傷でやってしまった、総受仕様……途中で路線変更して、その中からミャオちゃんが一つの愛を見つけ出す様な流れになっていた。
しかしゲームとリアルは違う。
こんな事になると分かってたら俺とだけの純愛ゲームに留めておけばよかった。
もともとは終わりの無いエッチシーンを続ける事が目的のゲームでスタートしたので、ストーリーなんて皆無。
凌辱物の流れでなんとなく作った魔王はいたがほぼ無敵で、路線を変えてからは魔王の関わるシナリオは消してしまっていたはず。
エンディングまで作ってなかったので俺にもこの世界からの脱け出し方は分からない。
つまり……ほぼこの世界からの脱出は不可能。
ずっと宮尾と一緒にいられるんだ。
喜びを噛み締めながら、隣で眠る宮尾の頬を撫でると閉じられている目から1粒の涙が筋を作って溢れた。
「……か……さ……」
小さな口から漏れた寝言は上手く聞き取れなかったけれど恐らく……『母さん』
帰りたい……帰りたいよね。
ここは俺の理想の世界だけど、宮尾にとっての理想の世界ではない。
わかってはいるけれど、俺が宮尾をこの世界に呼んだわけでは無いから戻してあげる方法は俺にもわからない。
「ごめん……その分俺が宮尾の事を愛して守ってみせるから……」
世界観は俺が作り上げた物だったが、この世界はもう……生きていた。
この世界で生きている人間達、そいつらは俺が作ったものではなく俺の望み通りに動いている訳じゃない。
もうこの世界は俺の自由にできる世界じゃないんだ。
レッドドラゴンが初期マップのこの森に出てくる事もイレギュラー。
受けた傷はしっかりと痛みを感じて、ゲームの世界だけど現実なんだということを思い知らされた。
宮尾には全滅してもリスタートできると伝えたが、それはゲームの中の話だ。
この世界で本当にリスタートできるかなんて確かめる勇気はない。
もし試してみてそれで宮尾が本当に死んだら?
そんなこと耐えられるわけがない。
俺はゲームの世界で最強だったけどこの世界はモンスター達だって成長しているみたいで、この先突然変異が生まれる可能性だってある……ただ存在しているだけの魔王がこの世界を滅ぼそうと動き出す可能性だって捨てきれない。
あの魔王がその気になればこの世界は一瞬で終わるだろう。
どんな敵が来ても負けないくらい俺はレベルを上げて強くいなければ……いつか宮尾を守れなくなる日が来る。
欲望と実益を兼ねて敵を倒して行くうちに、宮尾のレベルも上がって従者の枠が増えた。
立ち寄ったエストリカの街のギルドでミャオちゃんの従者と従魔の登録手続きを済ませ、ミャオちゃんの情報を非公開に変更した。
ギルドの中は気分が悪くなるような熱気と男臭に溢れている。
ミャオちゃんを外に残して来て良かった。
新規のコントローラーの情報を知って、周囲の街から命がけでこの街に集まって来たんだろう。
……さて、グラキエスの洞窟で手に入れたモフルキャットの毛皮を換金して所持金は増えた、宮尾も1人でいるのが限界っぽいし、そろそろ迎えに行こうかな。
ギルドの外に出て新鮮な空気に深呼吸をして、宮尾と別れた場所へ向かって歩き出した。
……男達に囲まれてオロオロする宮尾。
早く助けるべきなんだろうが、ヤベェ……可愛い。
人の輪から連れ出すと、チラチラと俺の様子を伺っているのが視界の端に映った。
1人にした事でいろいろネガティブな方向に思考が向かったようで、俺の反応に一喜一憂するのが可愛すぎる。
1人でどんな事を想像してたんだろ?
ミャオちゃんの為に俺が用意した相手……俺の恋敵となるキャラ達ならミャオちゃんに危害を加えることは無いだろうが……他の男達は要注意だな。
動きが俺にも読めない。
気をつけるようにミャオちゃんにも釘をさす。
「ミャオちゃん?でももし……気になる人がいたら……俺に気を使わずに従者にしてもいいんだよ?」
耳元で囁くとショックを受けた様な目がこちらを睨んだ。
「ミャオちゃんが早く魔王を倒して現実の世界に帰りたいなら、仲間を増やしていく事も考えないとね」
「別に……他の従者なんていらない……」
俺の服を握りしめながら目を伏せて歩く宮尾の姿に胸が締め付けられっぱなしだ。
他に譲る気なんて毛頭ないけれど、他の従者をつける事を薦めると泣き出しそうな顔で拒否をする。
普段つれない態度なくせに俺が引くと必死になって追いかけてくる。
もぉ……可愛すぎだろ、宮尾。
「じゃあミャオちゃんは俺の専属コントローラーね」
お尻を撫でると思い切りコントローラーで頭を叩かれた。
宮尾は照れ屋だなぁ……。
ビリビリ痺れる手をポケットに突っ込んだ。
大丈夫だよ、宮尾が誰かと接続しようとしても全力で邪魔してあげるから。
宮尾には言ってないけど、接続を開始してもキャンセルさせる裏技はちゃんと有る。
怒って俺から離れて先を歩く宮尾だけど、チラチラこちらとの距離を測っている。
でもちゃんと前を見て歩かないと……ほら。
また冒険者につかまった宮尾が不安そうにこちらに救いの目を向けてきた。
何度殺気を飛ばして牽制しても集まった冒険者志願の男達は、虎視眈々と隙を狙っている。
俺が離れたすきをついて
さて……迫られてオロオロと戸惑う宮尾も可愛いけど、素直じゃないのに甘えん坊な俺のコントローラーをそろそろお助けしようかな。
俺は宮尾の為だけに生きて、動いてあげる。
だから……もっともっともっと俺を振り回してね、宮尾。
俺が想像の中で作り上げたミャオちゃんより、宮尾は素直じゃ無くて、暴力的で、不器用だった。
それなのにミャオちゃんより何倍も魅力的だと感じる。
理想としていた宮尾とは違うけど、次はどんな顔を見せてくれるのか、どんな事を考えているのか……もっと宮尾の事を知りたいとワクワクして……その度にもっともっと好きになっていく。
会えないイラつきと感傷でやってしまった、総受仕様……途中で路線変更して、その中からミャオちゃんが一つの愛を見つけ出す様な流れになっていた。
しかしゲームとリアルは違う。
こんな事になると分かってたら俺とだけの純愛ゲームに留めておけばよかった。
もともとは終わりの無いエッチシーンを続ける事が目的のゲームでスタートしたので、ストーリーなんて皆無。
凌辱物の流れでなんとなく作った魔王はいたがほぼ無敵で、路線を変えてからは魔王の関わるシナリオは消してしまっていたはず。
エンディングまで作ってなかったので俺にもこの世界からの脱け出し方は分からない。
つまり……ほぼこの世界からの脱出は不可能。
ずっと宮尾と一緒にいられるんだ。
喜びを噛み締めながら、隣で眠る宮尾の頬を撫でると閉じられている目から1粒の涙が筋を作って溢れた。
「……か……さ……」
小さな口から漏れた寝言は上手く聞き取れなかったけれど恐らく……『母さん』
帰りたい……帰りたいよね。
ここは俺の理想の世界だけど、宮尾にとっての理想の世界ではない。
わかってはいるけれど、俺が宮尾をこの世界に呼んだわけでは無いから戻してあげる方法は俺にもわからない。
「ごめん……その分俺が宮尾の事を愛して守ってみせるから……」
世界観は俺が作り上げた物だったが、この世界はもう……生きていた。
この世界で生きている人間達、そいつらは俺が作ったものではなく俺の望み通りに動いている訳じゃない。
もうこの世界は俺の自由にできる世界じゃないんだ。
レッドドラゴンが初期マップのこの森に出てくる事もイレギュラー。
受けた傷はしっかりと痛みを感じて、ゲームの世界だけど現実なんだということを思い知らされた。
宮尾には全滅してもリスタートできると伝えたが、それはゲームの中の話だ。
この世界で本当にリスタートできるかなんて確かめる勇気はない。
もし試してみてそれで宮尾が本当に死んだら?
そんなこと耐えられるわけがない。
俺はゲームの世界で最強だったけどこの世界はモンスター達だって成長しているみたいで、この先突然変異が生まれる可能性だってある……ただ存在しているだけの魔王がこの世界を滅ぼそうと動き出す可能性だって捨てきれない。
あの魔王がその気になればこの世界は一瞬で終わるだろう。
どんな敵が来ても負けないくらい俺はレベルを上げて強くいなければ……いつか宮尾を守れなくなる日が来る。
欲望と実益を兼ねて敵を倒して行くうちに、宮尾のレベルも上がって従者の枠が増えた。
立ち寄ったエストリカの街のギルドでミャオちゃんの従者と従魔の登録手続きを済ませ、ミャオちゃんの情報を非公開に変更した。
ギルドの中は気分が悪くなるような熱気と男臭に溢れている。
ミャオちゃんを外に残して来て良かった。
新規のコントローラーの情報を知って、周囲の街から命がけでこの街に集まって来たんだろう。
……さて、グラキエスの洞窟で手に入れたモフルキャットの毛皮を換金して所持金は増えた、宮尾も1人でいるのが限界っぽいし、そろそろ迎えに行こうかな。
ギルドの外に出て新鮮な空気に深呼吸をして、宮尾と別れた場所へ向かって歩き出した。
……男達に囲まれてオロオロする宮尾。
早く助けるべきなんだろうが、ヤベェ……可愛い。
人の輪から連れ出すと、チラチラと俺の様子を伺っているのが視界の端に映った。
1人にした事でいろいろネガティブな方向に思考が向かったようで、俺の反応に一喜一憂するのが可愛すぎる。
1人でどんな事を想像してたんだろ?
ミャオちゃんの為に俺が用意した相手……俺の恋敵となるキャラ達ならミャオちゃんに危害を加えることは無いだろうが……他の男達は要注意だな。
動きが俺にも読めない。
気をつけるようにミャオちゃんにも釘をさす。
「ミャオちゃん?でももし……気になる人がいたら……俺に気を使わずに従者にしてもいいんだよ?」
耳元で囁くとショックを受けた様な目がこちらを睨んだ。
「ミャオちゃんが早く魔王を倒して現実の世界に帰りたいなら、仲間を増やしていく事も考えないとね」
「別に……他の従者なんていらない……」
俺の服を握りしめながら目を伏せて歩く宮尾の姿に胸が締め付けられっぱなしだ。
他に譲る気なんて毛頭ないけれど、他の従者をつける事を薦めると泣き出しそうな顔で拒否をする。
普段つれない態度なくせに俺が引くと必死になって追いかけてくる。
もぉ……可愛すぎだろ、宮尾。
「じゃあミャオちゃんは俺の専属コントローラーね」
お尻を撫でると思い切りコントローラーで頭を叩かれた。
宮尾は照れ屋だなぁ……。
ビリビリ痺れる手をポケットに突っ込んだ。
大丈夫だよ、宮尾が誰かと接続しようとしても全力で邪魔してあげるから。
宮尾には言ってないけど、接続を開始してもキャンセルさせる裏技はちゃんと有る。
怒って俺から離れて先を歩く宮尾だけど、チラチラこちらとの距離を測っている。
でもちゃんと前を見て歩かないと……ほら。
また冒険者につかまった宮尾が不安そうにこちらに救いの目を向けてきた。
何度殺気を飛ばして牽制しても集まった冒険者志願の男達は、虎視眈々と隙を狙っている。
俺が離れたすきをついて
さて……迫られてオロオロと戸惑う宮尾も可愛いけど、素直じゃないのに甘えん坊な俺のコントローラーをそろそろお助けしようかな。
俺は宮尾の為だけに生きて、動いてあげる。
だから……もっともっともっと俺を振り回してね、宮尾。
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