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初めての従者
もふもふパラダイス
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「グラキエスの洞窟は氷の洞窟だから……ちゃんと準備してからいかないとね」
岩壁にぽっかり空いた洞窟の入り口の前でにこにこ顔の勝利君に毛皮のコートを着せてもらった。
「モコモコで可愛い!やっぱり耳付きにすれば良かったなぁ……尻尾も付けて……モフルキャットよりミャオちゃんのが断然可愛いぃぃぃ!!」
「…………」
デレデレとしがみついてくるのを無言のまま両手で押し返した。
昨日寝る前にみせた真剣な眼差しは夢だったのかもしれない。
「ねぇ、スライムは?凍らない?……ここ入っとく?」
コートの前を開けてスライムを懐に入れようとすると勝利君が飛び掛かって来たのでスライムを掴み、顔に押し付けて避けた。
「モンスターは環境変化に強いからお構い無く……」
スライムに顔を突っ込んだままシクシク泣いている。
器用だな。
「そうやって強気でいられるのも今のうちなんだからね!」
拗ねた様な顔をして洞窟の入り口へ向かう勝利君の後ろに続いて洞窟の中へと足を踏み入れた。
洞窟へ入った途端、冷気が頬を刺すがコートのお陰で体は暖かい。
スライムは固まってはいないけど表面がひんやり冷たくて……癒し効果が薄れてしまった。
俺の着ているモコモコの真っ白なコートと違い、黒い細身のコートの勝利君の後ろ姿を盗み見る。
ツルツル滑る地面を危なげなく靭やかな動きで進む姿はまるで黒豹みたい。
格好いいし動きやすそうで、俺もあっちが良かったなぁ。
戦ってくれるのは勝利君だから勝利君が動きやすくないと駄目か。
氷に覆われた洞窟を、何度も転んでは勝利君に手助けして貰いながらお目当てのモンスターを目指して奥へと進んだ。
ーーーーーー
→『防御』 →『防御』 →『防御』
ひたすら防御を連打する。
「ミャオちゃん。だから防御ばっかじゃ倒せないってば……」
呆れ声の勝利君。
そんな事を言ったって…… 洞窟に入ってしばらく歩いて待ちに待って遭遇を果たしたモフルキャット。
樽の様なまん丸の体型に短い足。
そしてそして……モッフモフの毛!!
まさに毛玉モンスター!!
「可愛すぎて攻撃出来ないよぉ……」
「でも、倒さないと従魔にならないんだってば!俺とスライムが倒れたらミャオちゃん獣人化したこいつに陵辱されちゃうよ?パーティー全滅で近くの街に真っ裸で強制送還されて、ミャオちゃんと俺は復活するけど……従魔は復活無し。スライムが死んでも良いの?」
「殺らせていただきます」
この子を殺すのは忍びないが、倒せなかった後の運命が恐怖すぎる。
→『攻撃』
勝利君が剣を振り上げる。
見ていられなくて一瞬目を背け、そっと確認すると地面には綺麗な瓶と毛皮が残っていた。
……ごめんね。
俺がモフりたいだけなのに……命を……。
残された毛皮を見ていまさらながら申し訳無い気持ちで胸がいっぱいになる。
勝利君の手が慰めてくれる様に肩に置かれた。
「ミャオちゃん優しいぃぃ!!そんなに気に病まなくても大丈夫だよ。洞窟の魔物はすぐに湧くから!!……ほら」
突然スイッチが入った様に抱きしめられ頬ずりしてくる勝利君の顔を押しどけながら指差す方向を見ると、遠くの方でポンッと軽い音と共にモフルキャットが出現して、ゆったりと洞窟の奥へ歩いて行く。
……何とも微妙な気持ちになった。
「モフルキャット、モフりたいんでしょう?行こう」
勝利君に手を引かれてモフルキャットの後を追いかけた。
もう結構倒したのになかなか仲間になってくれない。
鞄の中にモフルキャットの毛皮とモフルキャットワインが増えて行った。
瓶の中身はワインらしい。
勝利君も樽をイメージして作ったキャラなんだね。
「モフルキャットはスライムよりランクが上だもん、Bランクだからね。諦めないで?」
「そう言えば……レベルってどうやって上がるの?」
結構モンスターを倒したけどいっこうに上がった感じは無いのでレベルの概念は無いのかと思ったけど……ステータスでコントローラーLv1って出てたよね。
「あぁ、レベル上げは…『モフルキャットが現れた』
話を遮る様に現れたのは今までのキジネコ柄ではなく真っ白なモフルキャット。
「レアカラーだ。レアは仲間になる率が上がるからチャンスだよ」
「頑張れ!勝利君!!」
コントローラーを握る手に熱がこもった。
ーーーーーー
「かっ……可愛いっ!!」
目の前では甘えた様に勝利君の足にすり寄って短い足でトテトテと必死についていくモフルキャットは、ふてぶてしい顔をしているのに凶悪な可愛さだ。
早くモフりたいけれど、この寒さでモフルキャットの毛先は凍っていてハリセンボンに頬擦りする危険なものだったので、早く洞窟を出ようと出口へ向かっている。
その凍った毛に擦り寄られて傷つくことも無く涼しい顔で歩くとは、勝利君の足は鋼鉄で出来ているのではなかろうか……。
早く……早く俺もその毛皮に埋もれたい!!
何度か戦闘を繰り返して、ようやく洞窟の外へ出た。
暖かい空気にほっとする。
コートを脱いでショーリ君に返却して待ちに待ったモフルキャットに飛び付こうとした俺の目の前に……赤く点滅するウィンドウが表示された。
『魔法剣士ショーリと接続が切れかかっています。今すぐ接続しますか』
→『はい』 『いいえ』
…………はい?
岩壁にぽっかり空いた洞窟の入り口の前でにこにこ顔の勝利君に毛皮のコートを着せてもらった。
「モコモコで可愛い!やっぱり耳付きにすれば良かったなぁ……尻尾も付けて……モフルキャットよりミャオちゃんのが断然可愛いぃぃぃ!!」
「…………」
デレデレとしがみついてくるのを無言のまま両手で押し返した。
昨日寝る前にみせた真剣な眼差しは夢だったのかもしれない。
「ねぇ、スライムは?凍らない?……ここ入っとく?」
コートの前を開けてスライムを懐に入れようとすると勝利君が飛び掛かって来たのでスライムを掴み、顔に押し付けて避けた。
「モンスターは環境変化に強いからお構い無く……」
スライムに顔を突っ込んだままシクシク泣いている。
器用だな。
「そうやって強気でいられるのも今のうちなんだからね!」
拗ねた様な顔をして洞窟の入り口へ向かう勝利君の後ろに続いて洞窟の中へと足を踏み入れた。
洞窟へ入った途端、冷気が頬を刺すがコートのお陰で体は暖かい。
スライムは固まってはいないけど表面がひんやり冷たくて……癒し効果が薄れてしまった。
俺の着ているモコモコの真っ白なコートと違い、黒い細身のコートの勝利君の後ろ姿を盗み見る。
ツルツル滑る地面を危なげなく靭やかな動きで進む姿はまるで黒豹みたい。
格好いいし動きやすそうで、俺もあっちが良かったなぁ。
戦ってくれるのは勝利君だから勝利君が動きやすくないと駄目か。
氷に覆われた洞窟を、何度も転んでは勝利君に手助けして貰いながらお目当てのモンスターを目指して奥へと進んだ。
ーーーーーー
→『防御』 →『防御』 →『防御』
ひたすら防御を連打する。
「ミャオちゃん。だから防御ばっかじゃ倒せないってば……」
呆れ声の勝利君。
そんな事を言ったって…… 洞窟に入ってしばらく歩いて待ちに待って遭遇を果たしたモフルキャット。
樽の様なまん丸の体型に短い足。
そしてそして……モッフモフの毛!!
まさに毛玉モンスター!!
「可愛すぎて攻撃出来ないよぉ……」
「でも、倒さないと従魔にならないんだってば!俺とスライムが倒れたらミャオちゃん獣人化したこいつに陵辱されちゃうよ?パーティー全滅で近くの街に真っ裸で強制送還されて、ミャオちゃんと俺は復活するけど……従魔は復活無し。スライムが死んでも良いの?」
「殺らせていただきます」
この子を殺すのは忍びないが、倒せなかった後の運命が恐怖すぎる。
→『攻撃』
勝利君が剣を振り上げる。
見ていられなくて一瞬目を背け、そっと確認すると地面には綺麗な瓶と毛皮が残っていた。
……ごめんね。
俺がモフりたいだけなのに……命を……。
残された毛皮を見ていまさらながら申し訳無い気持ちで胸がいっぱいになる。
勝利君の手が慰めてくれる様に肩に置かれた。
「ミャオちゃん優しいぃぃ!!そんなに気に病まなくても大丈夫だよ。洞窟の魔物はすぐに湧くから!!……ほら」
突然スイッチが入った様に抱きしめられ頬ずりしてくる勝利君の顔を押しどけながら指差す方向を見ると、遠くの方でポンッと軽い音と共にモフルキャットが出現して、ゆったりと洞窟の奥へ歩いて行く。
……何とも微妙な気持ちになった。
「モフルキャット、モフりたいんでしょう?行こう」
勝利君に手を引かれてモフルキャットの後を追いかけた。
もう結構倒したのになかなか仲間になってくれない。
鞄の中にモフルキャットの毛皮とモフルキャットワインが増えて行った。
瓶の中身はワインらしい。
勝利君も樽をイメージして作ったキャラなんだね。
「モフルキャットはスライムよりランクが上だもん、Bランクだからね。諦めないで?」
「そう言えば……レベルってどうやって上がるの?」
結構モンスターを倒したけどいっこうに上がった感じは無いのでレベルの概念は無いのかと思ったけど……ステータスでコントローラーLv1って出てたよね。
「あぁ、レベル上げは…『モフルキャットが現れた』
話を遮る様に現れたのは今までのキジネコ柄ではなく真っ白なモフルキャット。
「レアカラーだ。レアは仲間になる率が上がるからチャンスだよ」
「頑張れ!勝利君!!」
コントローラーを握る手に熱がこもった。
ーーーーーー
「かっ……可愛いっ!!」
目の前では甘えた様に勝利君の足にすり寄って短い足でトテトテと必死についていくモフルキャットは、ふてぶてしい顔をしているのに凶悪な可愛さだ。
早くモフりたいけれど、この寒さでモフルキャットの毛先は凍っていてハリセンボンに頬擦りする危険なものだったので、早く洞窟を出ようと出口へ向かっている。
その凍った毛に擦り寄られて傷つくことも無く涼しい顔で歩くとは、勝利君の足は鋼鉄で出来ているのではなかろうか……。
早く……早く俺もその毛皮に埋もれたい!!
何度か戦闘を繰り返して、ようやく洞窟の外へ出た。
暖かい空気にほっとする。
コートを脱いでショーリ君に返却して待ちに待ったモフルキャットに飛び付こうとした俺の目の前に……赤く点滅するウィンドウが表示された。
『魔法剣士ショーリと接続が切れかかっています。今すぐ接続しますか』
→『はい』 『いいえ』
…………はい?
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