白のマシュー

あやさわえりこ

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異変

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「こんにちは! 叔母さん」
 実はたくさんの親戚のおばさんおじさんがやってきたけれど、来たと同時にあいさつしてくれたのは、由香叔母さんが初めてだった。他の人はみんな、忘れかけていたのをふと気がついたようにあたしに話しかけてくるようだったけど、叔母さんは違った。
 叔母さんはいつもそうだ。あたしと会うといつも嬉しそうにしてくれる。今もだけど、あたしがもっと小さい頃からよく遊んでくれた。お正月とかお盆のときにはあたしを連れてどこにだって連れて行ってくれる。海とか山とか……。叔母さんには子ども、つまりあたしのいとこにあたる子はいない。どうしてなのかはわからないけど、だからこそ叔母さんはあたしのことを気にかけてくれるのだろう。
 それであたしは叔母さんのことが、お父さんお母さんの次に大好きだ。きっと叔母さんもあたしのことが好きだと思う。いつもは叔母さんに会うと抱きつきに行くんだけど、でも今日の感じだと、叔母さんも忙しいのだろう、やめておいた。
「由香、遠いところから」
 おばあちゃんの声はだんだん力をなくしていく。
「朝連絡もらって、私一人で急いできたの。夫はまたあとで来る予定。家からここまで車で五時間はかかるでしょ? だからすぐに支度してきたの。喪服は夫が持ってくる」
「そうか、大変だったね」
 叔母さんはまだ息を切らしながらも、おばあちゃんの顔をじっと見る。
「お母さんも、なんかやつれて見えるよ? ちゃんと寝たの?」
 おばあちゃんは昨日から変わらずげっそりして見える。
「あんまり。お父さんなんか、もっと寝てないよ」
「朝ご飯は?」
 おばあちゃんは首を横に振る。そういえば、あたしも食べていなかった。
「なら、ゆいも食べてないんじゃない? ……ちゃんと食べないと余計にもたないよ?」
 そう、叔母さんはいつも周りのことが見えていて、しっかり者だ。
 叔母さんはおばあちゃんの言葉を聞くとすぐに立ち上がった。
「お父さんとお母さんと、ゆいの分のご飯を買ってくる」
 忙しそうに叔母さんは黒のバッグをわしづかみにした。黒の靴をはいて急いで外に出ようとする。と、ふと振り返った。あたしと目があった。
「ゆいも来る?」
 全員の視線があたしに向けられたのを感じた。みんなで注目。その目はあたしのことを悲しそうに見てくる。大人ばっかりのこの部屋。線香の匂いが鼻にくるこの建物から出られるなら、早く出たいものだ。
「いく!」
 部屋を飛び出すようにあたしの足は駆け出した。一緒にマシューもふわふわと飛んでついてきた。ちょっとそこまでお出かけだ。
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