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帰らない両親
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「ぬいぐるみみたい」
ふかふかで、あたしが小さいころに肌身はなさず持っていた、クマのぬいぐるみみたい。
胸が突然、じんわりとあたたかくなった。やわらかな生地……じゃなくて毛に、服の上から肌にふれあう。あたしが白いものを両手で触れようとしたとたん、あたしが抱きよせるより先に、あたしの胸に急に飛びこんできたのだった。
ふわっと広がる、あたたかくてやわらかいもの。胸にすっぽり収まって、ずっと感じていた凍えるような寒さが、どこかに消え去っていく。小さくて、あたしの頭くらいしかない大きさなのに、お母さんを抱きしめているような感じ。
あたしの顔は、いつのまにか白いものの上にうずめようとしていた。腕でギュッと抱きしめて、はなさない。
はなしたくない。
ずっと、ここにいてほしい。
「ゆいちゃん、ずっと一人でいて、さびしかったんだね」
やさしい声で語りかけてくるのは、まるで、お父さんみたい。
「お母さんも、お父さんもいなくなっちゃんたんだもん……」
小さな小さなやわらかい手が、そっと動いてやさしくあたしをなでてくれる。のどがカラカラになり、鼻に水がつまり、目が熱くなり、しゃくりあげ始めたあたしにも。さびしくって、不安で、ポッカリ穴が開いたようなあたしにも。
白い温かいこの生き物は、ゆっくりと、静かにこう言った。
ぼくがずっとそばにいる。
えっ、とあたしは顔を上げかけた。
「ぼくがそばにいる」
腕の力をすっと抜いて、白いものの顔を見た。うそなんて言っていない、にこやかな笑みであたしを見ている。「ほんと?」
全身を使って、コクリとうなずいた。
「ゆいちゃんが悲しいときも、つらいときもね」
ふかふかで、あたしが小さいころに肌身はなさず持っていた、クマのぬいぐるみみたい。
胸が突然、じんわりとあたたかくなった。やわらかな生地……じゃなくて毛に、服の上から肌にふれあう。あたしが白いものを両手で触れようとしたとたん、あたしが抱きよせるより先に、あたしの胸に急に飛びこんできたのだった。
ふわっと広がる、あたたかくてやわらかいもの。胸にすっぽり収まって、ずっと感じていた凍えるような寒さが、どこかに消え去っていく。小さくて、あたしの頭くらいしかない大きさなのに、お母さんを抱きしめているような感じ。
あたしの顔は、いつのまにか白いものの上にうずめようとしていた。腕でギュッと抱きしめて、はなさない。
はなしたくない。
ずっと、ここにいてほしい。
「ゆいちゃん、ずっと一人でいて、さびしかったんだね」
やさしい声で語りかけてくるのは、まるで、お父さんみたい。
「お母さんも、お父さんもいなくなっちゃんたんだもん……」
小さな小さなやわらかい手が、そっと動いてやさしくあたしをなでてくれる。のどがカラカラになり、鼻に水がつまり、目が熱くなり、しゃくりあげ始めたあたしにも。さびしくって、不安で、ポッカリ穴が開いたようなあたしにも。
白い温かいこの生き物は、ゆっくりと、静かにこう言った。
ぼくがずっとそばにいる。
えっ、とあたしは顔を上げかけた。
「ぼくがそばにいる」
腕の力をすっと抜いて、白いものの顔を見た。うそなんて言っていない、にこやかな笑みであたしを見ている。「ほんと?」
全身を使って、コクリとうなずいた。
「ゆいちゃんが悲しいときも、つらいときもね」
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