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絶対絶命

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「待って下さい!わっ、忘れ物…」

必死に声を出して叫んでも前にいる人は振り返らない。
そのまま路地裏までやってきたところで見失ってしまった。
薄暗い路地裏でポツンと一人だけ突っ立っていた。

どうしよう、騎士の人に忘れ物だって届けようかな。
少し歩き立ち止まった。

分かれ道が見えて顔が青くなる。

「…あれ?俺、何処から来たんだっけ」

迷子になっている事に気付き慌てる。
寄宿舎が何処にあるのかすら分からない。
バックを抱えて何処を通ってきたか思い出す。

するとバックの中からカチカチと機械音が聞こえる。
耳を当てると時計の音みたいだった。
あの人時計屋さんだったのかな。

「イリヤ!」

歩き出そうとしたら俺が歩く方向と反対の方向から声が聞こえてそちらを見たらジョーカーが慌てた様子で走ってきていた。
あれ?なんでジョーカーがここにいるんだ?

というか、ジョーカーが来た方向が正解か…良かった、危うく間違えるところだった。

一歩後ろに引くとジョーカーが慌てて来た事が分かる。
いつも涼しげな顔のジョーカーが息を切らしている。
はぁはぁと整えてジョーカーは困った顔をして俺を見ていた。

「ジョーカー、どうしたの?」

「イリヤを見送っていたら転けたから助け起こそうと思ったらいきなり走り出して…心配で」

ジョーカー見てたんだ、恥ずかしいところを見られちゃった。
俺はジョーカーに忘れ物を届けようとした事を教えた。

バックを見せると不審な顔をしていた。
どうしたんだろう、中身は時計だと思うんだけど…

カチカチという音が静かな路地裏に響いてジョーカーは目を見開いた。
そしてジョーカーは俺からバックを乱暴に奪った。

「っくそ!!離れてろ!!」

「ジョーカー!?」

ジョーカーはそう言い、路地から少し離れた広場に走って言った。
離れてろと言われてもジョーカーが心配で着いていく。
なにかヤバいものなら俺がジョーカーを巻き込んでしまったと焦っていた。

この広場は今は誰も使っていないのか人がいなかった。
ジョーカーは何をするのか見ていたらバックを開けてなにかを取り出していた。

それは明らかに危険な漫画とかにある時限装置が取り付けられた爆弾だった。
ジョーカーはそれを上に投げた。
宙を舞う爆弾にジョーカーは腰に手を当てて銃を取り出し炎の弾丸を撃った。

すると爆弾は物凄い風圧を吐き出しながら空の上で爆発した。
爆弾による被害はないと思ったが異常なほど強い風圧がひび割れた地面を刺激してジョーカーの身体が傾いた。

「ジョーカー!!」

「来るな!」

ジョーカーの声を無視して手を掴んだが、俺とジョーカーの身体は浮いた。
地面に大きな穴が陥没して真っ逆さまに落ちた。






俺、また死んだのかな…だってあんな深さの穴に落ちたら普通無傷じゃいられないよ。
それに何だか暖かい、天国ってこんなに暖かったっけ?

パラパラと顔になにかが落ちる。
なんだろうこれ……砂?

そこで意識を覚醒させて目を開けた。

「…じ、ジョーカー!」

「やっと目、覚ましたな」

俺を膝の上に乗せて覆い被さるように至近距離にジョーカーの顔があり驚いた。
ジョーカーの頬に触れるとぬるっとした感触がして手が震える。
恐る恐る手のひらを見ると手が真っ赤になっていた。
影でジョーカーの顔が暗くてよく見えなかったが頭から頬に向かって血が垂れていた。

よく見たら俺を抱き締めている腕も服が赤くなって染み出している箇所がある。

もしかして俺を守るために…

「ご…ごめんなさい…俺が…」

「…なにが?」

「何ってその傷…」

「むしろイリヤには感謝してる」

感謝?こんな時に何を言っているんだ。
俺を責める事はあっても感謝する事なんてないだろ。
もしかしてジョーカー、変な感じに頭でも打ったのではないかと真剣に思う。

「イリヤに守護を付けてたのは分かっていたんだが、イリヤが怪我をすると思ってとっさにな」とジョーカーは苦笑いした。
そうだった、俺にはジョーカーの守護があったんだ、普通の怪我にも効果があるとは思わなかった。
俺だってジョーカーと立場が逆でも同じ事をしたと思う。

「イリヤが俺の手を掴んでくれたから少しだけ守護の力が俺にも発動したんだ、普通ならとっくに死んでたよ」

「……本当?」

「あぁ、ありがとう…イリヤ」

元々はジョーカーの力だけどジョーカーを守ってくれて良かった。

でも、これからどうしよう…上を見上げてもよじ登れる高さではない。
それにさっきから砂がパラパラと落ちてきている、もしかして崩れそうなのかもしれない。

ジョーカーも上を見上げる。
他に道がないか見渡すが何もなさそうだ。
ジョーカーは大怪我をしているし俺がおぶって登るしかない。

「イリヤ」

「ん?何?」

「俺が君を風魔法で上まで運ぶ」

ジョーカーは怪我をしているのにそんな事をして傷口が開かないか心配だった。

ジョーカーの話によればこの広場はだいぶ昔に地面が脆く危なくなり封鎖されていたそうだ。
しかし今回は被害を抑えるためにとっさにこの広場にやってきたそうだ。
だから風圧で穴が開いたんだ。

俺が先に行き助けを呼ぶ作戦だろうか、でもジョーカーを一人に出来なかった。
……なんだろう、物凄く嫌な予感がする。

「ジョーカー置いてなんて行けないよ」

「砂が落ちてきてるのが分かるだろ、もうすぐ崩れてきたコンクリートや砂が落ちてくる…危ないんだ」
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