27 / 61
黒猫
しおりを挟む
「アル様、イリヤ様、お食事のご用意が出来ています」
「チッ…」
アル様は舌打ちをして俺の腕を乱暴に払った。
バランスを崩し床に倒れる。
さすがに義母もいるであろう食事の時間に遅れたらマズイのだろう…助かったとホッとため息を吐いた。
乱暴にドアが開かれて大きな音を立てて閉められる。
腕を見るとくっきりと手の跡の痣が見えた。
それを袖で隠して俺も行こうと立ち上がった。
ドアを開けようとドアノブに触れると何処からか猫の鳴き声が聞こえた。
ドアを開けて廊下を確認するが何もいなかった。
猫を飼っているのだろうか、少し気になったが早く行こうと遠くを歩くアル様を見失わない程度に着いていく。
食事は正直味が感じられなかった。
義母とアル様と俺だけの食事会。
重苦しい雰囲気が周りを包んでいた。
ただ口に物を詰め込むだけの簡単な作業のようだ。
食事が終わり、部屋に戻る時アル様に睨まれた。
避けるように早足で食堂を後にした。
アル様は義母に呼び止められてしばらくは追いかけてこないだろう。
生まれてこのかた楽しい食事を味わった事がない。
生前は大部屋の皆と楽しく食事をしていた記憶はあるのに、今は生前とは違う…好きなものが食べれるのにな。
部屋に入り、何もする事がないからベッドに横になる。
確かに生きて体温を感じるのにまるで死んでるようだ。
ふと視界に本棚の中に綺麗に整頓されている本が見えた。
起き上がり本棚に近付く。
見事なまでに騎士の本ばかりだ。
ずっとフリードは騎士を目指しているんだ、それが騎士団長になり聖騎士になり国を守る英雄になっていくんだろう。
自然と頬が緩む。
目に見えて行動は出来ないが、フリードが聖騎士になる事を影ながらサポートしよう。
きっとフリードは聖騎士になれる、俺はそう思っている。
それに聖騎士になるのと俺が敵になるのは直接的に関係ないと思っている。
フリードがヒロインと結ばれればそれでいいんだから…
だから俺はゲームの結末に抗いながらフリードの夢を叶えてあげたいとそう思った。
いいんだ、俺の気持ちなんて…いつかきっといい思い出になる日が来ると信じているから。
翌朝、目が覚めたら枕元に真っ黒い猫が丸まって寝ていた。
昨日聞いた鳴き声の正体だろうか、いつの間に入ってきたんだ?
撫でると尻尾をパタパタと震わせていた。
可愛いな、ペットを飼った事がなかったからふわふわの毛が肌を滑り気持ちがいい。
「おはよう」
返事が返ってくるとは思っていないが、何だか寂しくてつい独り言を口にしてしまう。
すると黒猫は返事をするように一鳴きした。
昨日お風呂に入ってなかったから朝風呂に入ろうと思って起き上がる。
あ、そうだ…着替え取るためにまたあそこの部屋に戻らないとな。
今ならアル様寝てると思うし、早く行ってお風呂入って戻ってくればいいよな。
そう思ったらすぐに実行しようと部屋を出た。
ドアを開ける微かな音に起きてしまったのか黒猫も着いてくる。
猫は水が嫌いじゃないのかな、多分風呂近くまで来たら着いてこないと思うがそれまで可愛いデートを堪能した。
部屋に着いて自分の荷物を全て持ってフリードの部屋に戻って着替えの服を持ち脱衣場に向かった。
脱衣場は洗面所の奥だったから覚えている。
洗面所に到着してもまだ黒猫は傍を離れない何処まで入っていいんだろう。
「お前も一緒に入るか?」
「ニャア」
まるで俺の言葉が分かるように返事をする猫がとても不思議で可愛いなと思った。
この家での唯一の癒しを感じた。
脱衣場に入り、シャツを脱いでいる時だった。
叩きつけるように思いっきりドアが開いた。
なんかこんな事昨日もあったなと顔を青くして背筋が冷たくなる。
俺が振り返る前に肩を掴まれて壁に叩きつけられた。
背中がじんじんと痛い。
「この俺に、余計な手間掛けさせんなよ!」
「…ア、ル様…」
「お前の部屋はアイツの部屋じゃねぇだろ!変な結界魔法掛けやがって……お前のような奴は物置部屋で十分だ!!」
結界魔法?もしかしてフリードの部屋は魔法が掛かっていたからアル様は一度も来なかったのか?
フリードが部屋を提供してくれたのは俺のためだったのか?
……なのに俺、フリードの気持ちを信じないであんな酷い事…
アル様は大きな舌打ちをして俺の顔のすぐ真横の壁を殴った。
ガツッと鈍い音が耳元で聞こえてすぐに何も考えられなくなった。
アル様が俺の顎を掴んだ。
「俺よりアイツが優れてるって言いたいのか!?お前も俺をバカにするのか!!」
アル様がもう片方の手を上げた。
殴られると本能で感じて目を強く瞑り歯を食い縛った。
しかし猫の唸り声を聞こえて驚き目を見開いた。
あの黒猫がアル様に向かって唸り今にも飛びかかりそうな勢いだった。
アル様は上げた手を黒猫に向けた。
何をするのか分かりアル様を止めようと手を伸ばすが顎を掴まれた状態で近付けず、両手を伸ばしてもアル様の腕に触れる事しか出来ない。
「やっ、やめっ…アルさっ…」
「何処までお前は俺の邪魔をすれば気が済むんだ、フリード」
アル様の手から氷の針が現れた。
「チッ…」
アル様は舌打ちをして俺の腕を乱暴に払った。
バランスを崩し床に倒れる。
さすがに義母もいるであろう食事の時間に遅れたらマズイのだろう…助かったとホッとため息を吐いた。
乱暴にドアが開かれて大きな音を立てて閉められる。
腕を見るとくっきりと手の跡の痣が見えた。
それを袖で隠して俺も行こうと立ち上がった。
ドアを開けようとドアノブに触れると何処からか猫の鳴き声が聞こえた。
ドアを開けて廊下を確認するが何もいなかった。
猫を飼っているのだろうか、少し気になったが早く行こうと遠くを歩くアル様を見失わない程度に着いていく。
食事は正直味が感じられなかった。
義母とアル様と俺だけの食事会。
重苦しい雰囲気が周りを包んでいた。
ただ口に物を詰め込むだけの簡単な作業のようだ。
食事が終わり、部屋に戻る時アル様に睨まれた。
避けるように早足で食堂を後にした。
アル様は義母に呼び止められてしばらくは追いかけてこないだろう。
生まれてこのかた楽しい食事を味わった事がない。
生前は大部屋の皆と楽しく食事をしていた記憶はあるのに、今は生前とは違う…好きなものが食べれるのにな。
部屋に入り、何もする事がないからベッドに横になる。
確かに生きて体温を感じるのにまるで死んでるようだ。
ふと視界に本棚の中に綺麗に整頓されている本が見えた。
起き上がり本棚に近付く。
見事なまでに騎士の本ばかりだ。
ずっとフリードは騎士を目指しているんだ、それが騎士団長になり聖騎士になり国を守る英雄になっていくんだろう。
自然と頬が緩む。
目に見えて行動は出来ないが、フリードが聖騎士になる事を影ながらサポートしよう。
きっとフリードは聖騎士になれる、俺はそう思っている。
それに聖騎士になるのと俺が敵になるのは直接的に関係ないと思っている。
フリードがヒロインと結ばれればそれでいいんだから…
だから俺はゲームの結末に抗いながらフリードの夢を叶えてあげたいとそう思った。
いいんだ、俺の気持ちなんて…いつかきっといい思い出になる日が来ると信じているから。
翌朝、目が覚めたら枕元に真っ黒い猫が丸まって寝ていた。
昨日聞いた鳴き声の正体だろうか、いつの間に入ってきたんだ?
撫でると尻尾をパタパタと震わせていた。
可愛いな、ペットを飼った事がなかったからふわふわの毛が肌を滑り気持ちがいい。
「おはよう」
返事が返ってくるとは思っていないが、何だか寂しくてつい独り言を口にしてしまう。
すると黒猫は返事をするように一鳴きした。
昨日お風呂に入ってなかったから朝風呂に入ろうと思って起き上がる。
あ、そうだ…着替え取るためにまたあそこの部屋に戻らないとな。
今ならアル様寝てると思うし、早く行ってお風呂入って戻ってくればいいよな。
そう思ったらすぐに実行しようと部屋を出た。
ドアを開ける微かな音に起きてしまったのか黒猫も着いてくる。
猫は水が嫌いじゃないのかな、多分風呂近くまで来たら着いてこないと思うがそれまで可愛いデートを堪能した。
部屋に着いて自分の荷物を全て持ってフリードの部屋に戻って着替えの服を持ち脱衣場に向かった。
脱衣場は洗面所の奥だったから覚えている。
洗面所に到着してもまだ黒猫は傍を離れない何処まで入っていいんだろう。
「お前も一緒に入るか?」
「ニャア」
まるで俺の言葉が分かるように返事をする猫がとても不思議で可愛いなと思った。
この家での唯一の癒しを感じた。
脱衣場に入り、シャツを脱いでいる時だった。
叩きつけるように思いっきりドアが開いた。
なんかこんな事昨日もあったなと顔を青くして背筋が冷たくなる。
俺が振り返る前に肩を掴まれて壁に叩きつけられた。
背中がじんじんと痛い。
「この俺に、余計な手間掛けさせんなよ!」
「…ア、ル様…」
「お前の部屋はアイツの部屋じゃねぇだろ!変な結界魔法掛けやがって……お前のような奴は物置部屋で十分だ!!」
結界魔法?もしかしてフリードの部屋は魔法が掛かっていたからアル様は一度も来なかったのか?
フリードが部屋を提供してくれたのは俺のためだったのか?
……なのに俺、フリードの気持ちを信じないであんな酷い事…
アル様は大きな舌打ちをして俺の顔のすぐ真横の壁を殴った。
ガツッと鈍い音が耳元で聞こえてすぐに何も考えられなくなった。
アル様が俺の顎を掴んだ。
「俺よりアイツが優れてるって言いたいのか!?お前も俺をバカにするのか!!」
アル様がもう片方の手を上げた。
殴られると本能で感じて目を強く瞑り歯を食い縛った。
しかし猫の唸り声を聞こえて驚き目を見開いた。
あの黒猫がアル様に向かって唸り今にも飛びかかりそうな勢いだった。
アル様は上げた手を黒猫に向けた。
何をするのか分かりアル様を止めようと手を伸ばすが顎を掴まれた状態で近付けず、両手を伸ばしてもアル様の腕に触れる事しか出来ない。
「やっ、やめっ…アルさっ…」
「何処までお前は俺の邪魔をすれば気が済むんだ、フリード」
アル様の手から氷の針が現れた。
0
お気に入りに追加
1,650
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
────妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。
咲狛洋々
BL
子供を庇って死んでしまった神居都は、死後の世界で自分の子供が命を狙われている事を知る。その命を狙うのは異世界の神だった。子供を守る為、転生を求める神々の試練に挑む。
しかし、まさか転生先が男しかいない獣人世界とは知らず、男に転生するのか女で転生するのか。放り出された異世界で神様と崇められながら、ハーレムルートで新たな人生を歩み出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『狼と人間、そして半獣の』
メインのお話が完結し、二人の子供が生まれてからの
お話を始めました!
転生者の人間と獣人との間に生まれた半獣のクロウが
成長して冒険に出るまでを予定しています。
複雑な設定では無いので、気楽に読んで頂けると
嬉しいです!
こちらのお話も、是非
宜しくお願いします!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました
猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。
当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。
それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。
漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは…
出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。
メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。
最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる