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犯罪者になりました
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-14共通の話題とかはなく、ジョーカーも無言で少しの間静けさが俺達の周りにやって来る。
「…ねぇ」
「へ!?な、何?」
「君の名前は?君だけ知ってるのも不公平だな」
「そ、そうだね…俺の名前はイリヤ・ドルアージュ…よろしくお願いします」
「…うん、よろしく」
俺の名前を言っても大丈夫かと不安に思ったが確かに片方だけ知ってたら嫌だよな。
フリードにも言った方が良かっただろうか、でも今フリードが何処にいるか分からないからもしまた会った時でいいかな。
その時が俺の命日にならないといいけど…
洒落にならず乾いた笑い声しかでなくてジョーカーは首を傾げていた。
すると遠くから微かに誰かを呼ぶ声がした。
今度はジョーカーの身内だろうかと思っていたらどうやら違ったみたいだ。
「イリヤー!イリヤ何処にいるのー!?」
「母さんだ」
俺を探しに来てくれた母の声が聞こえた。
自然と声が弾む。
ジョーカーは「良かったね」と無表情ながら一生懸命微笑んでくれた。
俺は元気に頷いた。
ジョーカーは俺をエスコートするように立ち上がり俺の目の前に立った。
手を差し伸ばしてくれてしっかりと握った。
まだ、あの家の子供でいていいの?
俺はいらない子じゃないの?
謝りたい、いい子になるから…
気持ちだけが先走ってしまう、足を地面に付けて違和感に気付いた。
あれ……なんか感覚がない。
ふわふわの綿の上に立ったみたいにバランスが取れなくなる。
もしかしてずっと足を曲げていたから足が痺れたのか?
転けないように条件反射で目の前のものを掴んだ。
ゲームでは常に冷静なジョーカーの珍しく慌てたような声が聞こえた。
「えっ…ちょっ!」
「あ、足が…うわぁっ!!」
掴んでいたのはジョーカーのベルトで、離さないととは思っているが手が離れない。
そしてとうとうバランスを崩し、ジョーカーもろとも地面に倒れた。
俺はジョーカーを下敷きにしていたから痛くはなかったがジョーカーは重いだろうと顔色を伺おうとして見上げる。
あれ?なんか柔らかいけど、これっていったい…
ジョーカーの顔は驚きと羞恥で顔を赤くしていた。
俺はまたとんでもない事をしてしまったと顔を青くする。
俺が倒れた先にはジョーカーの股間があった。
見事に俺はジョーカーの股間に顔をダイブさせてしまったようだ。
しかも思いっきり口に付けていた。
ズボン越しとはいえ俺にとってもかなりの衝撃だ。
俺よりもジョーカーの方が屈辱を受けたと思い慌てて謝る。
「ご、ごめ…俺っ、その…わざとじゃ」
「……こんな、こと」
かなりショックを受けたようで顔を手で覆っていた。
俺、今度は痴漢で捕まるのか……ぐすっ…
もう一度母の声が聞こえた。
俺はいったいどうすればいいんだ。
ジョーカーも母の声がした方向を見ていた。
そして座り込む俺の腕を引っ張り立たせてくれた。
「…呼んでる、早く行った方がいい」
「俺を………捕まえないの?」
「………………それは俺達が大きくなってからな」
少しの沈黙の後、そんな事を言われた。
そっか、今捕まえても多分この世界にも少年法みたいのがあって大きくならないとちゃんとした罰は受けれないのかもしれないな。
時効は大丈夫なのか分からないが、俺はジョーカーのしたいようにしたいと思っている。
俺は頷きジョーカーにもう一度謝りお辞儀して母が待つところに向かった。
今日は謝ってばかりだ、全部俺が悪いんだけど……
でも、何だか立て続けに変な事が起こりすぎのような気がした。
何気なく手を眺めていたら、一瞬だけ黒いもやもやした煙のようなのが現れた。
それは風に乗せられ暗い闇の中に消えた。
あれは、なんだ?
手を擦ってももうそれは現れず、見間違いだっただろうかと首を傾げる。
そういえばあれ、何処かで見た事があるが何処だっただろうか。
……そうだ、妹の手にもアレがあったような…兄妹の遺伝のなにかだろうか…そんな事聞いた事がないが…
もう一度母の声がすぐ傍まで聞こえて止まっていた足を動かし走って向かう。
俺が母と別れたあの場所に母とメイドと妹がいた。
「母さん!」
「イリヤ!!」
母は俺に駆け寄ると痛いほど強く腕を掴まれた。
大人の強さで小さな腕は悲鳴を上げる。
「痛いよ」と言うが離してくれない。
母の顔を見て許してくれたんじゃない事はすぐに分かった。
鬼のような恐ろしい形相でこちらを睨んでいて怯えた。
初めて会った時の美しい母の顔ではない別人のように思えた。
「なんで貴方のせいで私がいろいろ言われなくてはならないの!?お祖母様にも…周りにも…」
「いたっ、痛いよ母さん…」
「男の子を身籠ったから産んだのに…なんで、なんで…」
ヒステリックに俺に向かって自分が今まで受けていた仕打ちをぶつけた。
お婆さんに酷い事を言われ続けて母はストレスが溜まっていた。
俺は声に出さず涙をポロポロと流した。
……こんなに母を苦しめていたなんて知らなかった…俺を産んだばかりに…
母の後ろにいる妹とメイドは何も言わなかったが「お前のせいだ」と目でそう言われてる気がした。
俺は、この世界に転生してなにか意味があったのだろうか。
……誰にも望まれない子供の俺は本当に幸せになれる?
分からない……もう、分からないよ。
「…ねぇ」
「へ!?な、何?」
「君の名前は?君だけ知ってるのも不公平だな」
「そ、そうだね…俺の名前はイリヤ・ドルアージュ…よろしくお願いします」
「…うん、よろしく」
俺の名前を言っても大丈夫かと不安に思ったが確かに片方だけ知ってたら嫌だよな。
フリードにも言った方が良かっただろうか、でも今フリードが何処にいるか分からないからもしまた会った時でいいかな。
その時が俺の命日にならないといいけど…
洒落にならず乾いた笑い声しかでなくてジョーカーは首を傾げていた。
すると遠くから微かに誰かを呼ぶ声がした。
今度はジョーカーの身内だろうかと思っていたらどうやら違ったみたいだ。
「イリヤー!イリヤ何処にいるのー!?」
「母さんだ」
俺を探しに来てくれた母の声が聞こえた。
自然と声が弾む。
ジョーカーは「良かったね」と無表情ながら一生懸命微笑んでくれた。
俺は元気に頷いた。
ジョーカーは俺をエスコートするように立ち上がり俺の目の前に立った。
手を差し伸ばしてくれてしっかりと握った。
まだ、あの家の子供でいていいの?
俺はいらない子じゃないの?
謝りたい、いい子になるから…
気持ちだけが先走ってしまう、足を地面に付けて違和感に気付いた。
あれ……なんか感覚がない。
ふわふわの綿の上に立ったみたいにバランスが取れなくなる。
もしかしてずっと足を曲げていたから足が痺れたのか?
転けないように条件反射で目の前のものを掴んだ。
ゲームでは常に冷静なジョーカーの珍しく慌てたような声が聞こえた。
「えっ…ちょっ!」
「あ、足が…うわぁっ!!」
掴んでいたのはジョーカーのベルトで、離さないととは思っているが手が離れない。
そしてとうとうバランスを崩し、ジョーカーもろとも地面に倒れた。
俺はジョーカーを下敷きにしていたから痛くはなかったがジョーカーは重いだろうと顔色を伺おうとして見上げる。
あれ?なんか柔らかいけど、これっていったい…
ジョーカーの顔は驚きと羞恥で顔を赤くしていた。
俺はまたとんでもない事をしてしまったと顔を青くする。
俺が倒れた先にはジョーカーの股間があった。
見事に俺はジョーカーの股間に顔をダイブさせてしまったようだ。
しかも思いっきり口に付けていた。
ズボン越しとはいえ俺にとってもかなりの衝撃だ。
俺よりもジョーカーの方が屈辱を受けたと思い慌てて謝る。
「ご、ごめ…俺っ、その…わざとじゃ」
「……こんな、こと」
かなりショックを受けたようで顔を手で覆っていた。
俺、今度は痴漢で捕まるのか……ぐすっ…
もう一度母の声が聞こえた。
俺はいったいどうすればいいんだ。
ジョーカーも母の声がした方向を見ていた。
そして座り込む俺の腕を引っ張り立たせてくれた。
「…呼んでる、早く行った方がいい」
「俺を………捕まえないの?」
「………………それは俺達が大きくなってからな」
少しの沈黙の後、そんな事を言われた。
そっか、今捕まえても多分この世界にも少年法みたいのがあって大きくならないとちゃんとした罰は受けれないのかもしれないな。
時効は大丈夫なのか分からないが、俺はジョーカーのしたいようにしたいと思っている。
俺は頷きジョーカーにもう一度謝りお辞儀して母が待つところに向かった。
今日は謝ってばかりだ、全部俺が悪いんだけど……
でも、何だか立て続けに変な事が起こりすぎのような気がした。
何気なく手を眺めていたら、一瞬だけ黒いもやもやした煙のようなのが現れた。
それは風に乗せられ暗い闇の中に消えた。
あれは、なんだ?
手を擦ってももうそれは現れず、見間違いだっただろうかと首を傾げる。
そういえばあれ、何処かで見た事があるが何処だっただろうか。
……そうだ、妹の手にもアレがあったような…兄妹の遺伝のなにかだろうか…そんな事聞いた事がないが…
もう一度母の声がすぐ傍まで聞こえて止まっていた足を動かし走って向かう。
俺が母と別れたあの場所に母とメイドと妹がいた。
「母さん!」
「イリヤ!!」
母は俺に駆け寄ると痛いほど強く腕を掴まれた。
大人の強さで小さな腕は悲鳴を上げる。
「痛いよ」と言うが離してくれない。
母の顔を見て許してくれたんじゃない事はすぐに分かった。
鬼のような恐ろしい形相でこちらを睨んでいて怯えた。
初めて会った時の美しい母の顔ではない別人のように思えた。
「なんで貴方のせいで私がいろいろ言われなくてはならないの!?お祖母様にも…周りにも…」
「いたっ、痛いよ母さん…」
「男の子を身籠ったから産んだのに…なんで、なんで…」
ヒステリックに俺に向かって自分が今まで受けていた仕打ちをぶつけた。
お婆さんに酷い事を言われ続けて母はストレスが溜まっていた。
俺は声に出さず涙をポロポロと流した。
……こんなに母を苦しめていたなんて知らなかった…俺を産んだばかりに…
母の後ろにいる妹とメイドは何も言わなかったが「お前のせいだ」と目でそう言われてる気がした。
俺は、この世界に転生してなにか意味があったのだろうか。
……誰にも望まれない子供の俺は本当に幸せになれる?
分からない……もう、分からないよ。
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