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第10話
しおりを挟む彼の言葉に滝のような冷や汗がダラダラと背を伝う。
その質問はまずい。
誤魔化し続けていたのがバレたのだろうか。
「えっと、菅谷…さん」
「フルネームで」
表情としては笑っているがその目は笑っていない。
どうしようどうしよう…。
必死に言い訳を考えるも頭が上手く働いてくれない。
「ぎゃ、逆に私の名前は言えるんですか?」
「上里 紫苑だろ。墓穴掘ったな」
「……」
「俺の名刺見てないだろ」
ぐいっと腰を抱かれればさらに距離が近づく。
コップも取られ、半ば押し倒されるような体勢になる。
ソファーの広さをこんなところで生かしてくるな!
横になっても余裕があるってどういうことだよ!
心の中で悪態を吐く間も彼は不機嫌そうに私を見下ろす。
「いいか、俺の名前は菅谷 誠だ。ほら、言ってみろ」
「…菅谷さん」
「そうじゃないだろ?」
「……誠さん」
「…及第点だな」
私に覆い被さりながら、彼は心底楽しそうな顔をしている。
いや、人のこと言えないけど性格悪すぎません?
この人絶対私が名前言えないこと分かってたじゃん。
「…今、余計なこと考えてるだろ」
「へ?」
そう言って彼は私の首筋に顔を埋める。
くすぐったくて思わず身じろぐと軽く歯を立てられる。
「動くな。大人しくしてれば優しくするから」
耳元で囁かれた声はまるで麻薬のように私に作用する。
身体を動かせなくなった私に小さく笑ってから、彼は首筋を舐めた。
「…ぅあ」
「ほんと良い反応してくれるよな」
楽しそうに笑いつつ何度も甘噛みされる。
時折強く吸われるとじんわりとした痛みと共にぬるい快楽が広がる。
「ちょ、噛むのやめ…」
「もう少し」
制止の言葉も聞かず彼は続ける。
継続的な快楽を何度も繰り返し与えられると頭がおかしくなりそうになる。
いやもうすでにおかしくなってるのかもしれないが。
どのくらいの時間そうしていただろうか。
もうずっと身体は熱いし頭はボーッとして訳が分からなくなる。
耐えきれなくなって彼の頭を優しく撫でる。
「なんだ、もう限界か?」
視線が絡み合えば、一気に羞恥心がこみ上げてくる。
しかし、それ以上に彼を求める欲の方が強いため素直に頷いた。
「ならベッド行くか」
その言葉に頷いて何とか立ち上がるも足元が覚束ない。
そんな私を軽々と横抱きにすると彼は寝室へと向かう。
「風呂は?」
「菅谷さんが気にしないなら…そのまま」
彼はベッドの上に私を優しく寝かせると逃がす間もなく覆いかぶさってくる。
2人分の体重を受けてベッドがギシッと音を立てた。
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