1 / 11
第1話
しおりを挟む
「ねぇ!!酷いと思わない!?」
「真由美、悪酔いしすぎだって一旦水飲みな」
大きな瞳に涙を溜めながらジョッキでビールを煽る幼馴染の真由美を何とか宥める。
土曜日の23時に女2人で居酒屋に集まってする話なんてたかが知れている。
今回の話題は真由美の別れた恋人の愚痴である。
「で、今回は何だっけ?」
「二股してたくせに謝罪もなく急に別れるって言われて、問い立てる前に浮気相手に暴言吐かれた…本命はこっちだったんだよ泥棒猫!!」
「あちゃー……」
真由美の彼氏はいつもろくでもないやつばかりだった。
イケメンで高身長が大好きな面食いだから付き合った後で金遣いの荒さや暴力、浮気性などの問題点がどんどん見つかる。
それでもめげない真由美を私は1周回って尊敬している。
「まともな高身長イケメンっていないの…?」
「いたとしても絶滅危惧種レベルだろうね」
「追い打ちかけないで~…」
半泣きになって机に伏せる真由美を見ながら私もジョッキに手を伸ばす。
土曜日だからということで少々飲みすぎている気もするが許してほしい。
だってこんなドロドロした話素面では聞いていられない。
「っていうか、紫苑はないの?」
顎を机につけたまま彼女は私を見上げる。
急に変わった話題に私を首を傾げるしかない。
「何が?」
「浮ついた話♡」
愛らしくウインクする彼女に私は苦笑いで返す。
「あると思う?」
「ええー?ないのー?」
唇を尖らせる真由美はつまらなさそうに枝豆を摘まむ。
「結婚願望がないんだもん」
「恋人は?」
「今は仕事を頑張りたいの」
そんなありきたりな理由を真由美に伝える。
正直この話はしたくない話題だった。
「紫苑は可愛いからモテそうなのに」
「……私より可愛い子はいっぱいいるよ」
「好きな人はいないのー?」
質問を無視して焦点の合わない真由美の目の前で手を振ってみる。
あーあ、こりゃもう帰した方がいいな。
「その話はまた今度ね」
残りのお酒を飲み切ってからスマホを取り出す。
それからタクシーを1台呼び、真由美に声をかける。
「ほら、タクシー来るから行くよ」
「やだ……」
「やだじゃないって……ああもう……」
駄々をこねる彼女を引っ張りながらお会計を済ませて店を出る。
酔っぱらいの介抱に思ったよりも時間がかかったようで、お店を出たのはちょうどタクシーがお店の前に止まった時だった。
「この子よろしくお願いします。住所は__」
真由美の住所を伝えてタクシーを見送る。
はぁ…何となく疲れた。
どこかで飲み直そうかな。
意外と冷静な頭で近くのバーを検索にかけてみると、良さそう店が何件かヒットする。
少し迷ったが土曜日であることを理由に私はスマホの道案内に従って歩き始めることにした。
「真由美、悪酔いしすぎだって一旦水飲みな」
大きな瞳に涙を溜めながらジョッキでビールを煽る幼馴染の真由美を何とか宥める。
土曜日の23時に女2人で居酒屋に集まってする話なんてたかが知れている。
今回の話題は真由美の別れた恋人の愚痴である。
「で、今回は何だっけ?」
「二股してたくせに謝罪もなく急に別れるって言われて、問い立てる前に浮気相手に暴言吐かれた…本命はこっちだったんだよ泥棒猫!!」
「あちゃー……」
真由美の彼氏はいつもろくでもないやつばかりだった。
イケメンで高身長が大好きな面食いだから付き合った後で金遣いの荒さや暴力、浮気性などの問題点がどんどん見つかる。
それでもめげない真由美を私は1周回って尊敬している。
「まともな高身長イケメンっていないの…?」
「いたとしても絶滅危惧種レベルだろうね」
「追い打ちかけないで~…」
半泣きになって机に伏せる真由美を見ながら私もジョッキに手を伸ばす。
土曜日だからということで少々飲みすぎている気もするが許してほしい。
だってこんなドロドロした話素面では聞いていられない。
「っていうか、紫苑はないの?」
顎を机につけたまま彼女は私を見上げる。
急に変わった話題に私を首を傾げるしかない。
「何が?」
「浮ついた話♡」
愛らしくウインクする彼女に私は苦笑いで返す。
「あると思う?」
「ええー?ないのー?」
唇を尖らせる真由美はつまらなさそうに枝豆を摘まむ。
「結婚願望がないんだもん」
「恋人は?」
「今は仕事を頑張りたいの」
そんなありきたりな理由を真由美に伝える。
正直この話はしたくない話題だった。
「紫苑は可愛いからモテそうなのに」
「……私より可愛い子はいっぱいいるよ」
「好きな人はいないのー?」
質問を無視して焦点の合わない真由美の目の前で手を振ってみる。
あーあ、こりゃもう帰した方がいいな。
「その話はまた今度ね」
残りのお酒を飲み切ってからスマホを取り出す。
それからタクシーを1台呼び、真由美に声をかける。
「ほら、タクシー来るから行くよ」
「やだ……」
「やだじゃないって……ああもう……」
駄々をこねる彼女を引っ張りながらお会計を済ませて店を出る。
酔っぱらいの介抱に思ったよりも時間がかかったようで、お店を出たのはちょうどタクシーがお店の前に止まった時だった。
「この子よろしくお願いします。住所は__」
真由美の住所を伝えてタクシーを見送る。
はぁ…何となく疲れた。
どこかで飲み直そうかな。
意外と冷静な頭で近くのバーを検索にかけてみると、良さそう店が何件かヒットする。
少し迷ったが土曜日であることを理由に私はスマホの道案内に従って歩き始めることにした。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ロマンティックの欠片もない
水野七緒
恋愛
27歳にして処女の三辺菜穂(みなべ・なほ)は、派遣先で元カレ・緒形雪野(おがた・ゆきの)と再会する。
元カレといっても、彼の気まぐれで高校時代にほんの3ヶ月ほど付き合っただけ──菜穂はそう思っていたが、緒形はそうでもないようで……
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる