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第17話
しおりを挟む「この後の計画は?」
「多分あのチョコレートには眠り薬が入っていると思うの。いくら子ども用だと言ってもあんなに食べたら流石に効くでしょう。ワインも飲んでいるしね。そのあとは状況にもよるけれど、近い内にこの国を発って他国の情報屋に見聞きしたことを売るわ」
「この国の情報屋ではなく他国の情報屋に売るのか?」
「この国はもう駄目よ。気色悪いし、早く出たいわ」
「お前さんがそんなことを言うなんて珍しい」
目の前でセーズ様の体が傾き、そのまま大きな音を立てて倒れた。
遠目から見ても良く寝ているのが分かる。
「そんなにあの男が気に入らないのか?」
「やり方が気に入らないのよ」
ソファから立ち上がり、セーズ様の体を仰向けに転がしてから何とかベッドに運んだ。
意外と重たいなこの男。
「あと、髪も染め直したいのよ。流石にこれだけ大きく動いたらこの銀髪のままではいられないだろうし」
「また染めるのか」
「仕方ないでしょ?あーあ、意外と気に入っていたのにな」
そんなことを言いながら部屋の隅に置かれたセーズ様の荷物を漁る。
目当ての物はきっとこの中にある。
「重要書類ほど意外と身近な所にあるんだよね~」
トランクに綺麗に詰められた衣服を取り出して鞄を探ると、やはり加工がされていた。
一見分からないが、軽く叩くと中から軽い音が返って来た。
「ここに空間があるのは分かったけれど、鍵がないと開かないな…」
「鍵ならさっきその男がワインボトルを開けるのに使っていたぞ」
猫が長い尻尾を使ってワインボトルを示す。
言われた通り見てみれば、コルクに銀色の鍵が刺さっていた。
あの香辛料そんなに辛かったのかな。
きっと必死になって開けたのだろう。
「本当だ。曲がっていないといいけれど」
コルクから鍵を抜いてトランクの中の鍵穴に挿して回す。
カチャリという小さな音と共に開いたのを確認してから中身を確認する。
「やっぱりあった。それにしても……随分と沢山入ってんだね」
そこには大量の金貨と詰まっていた。
ざっと見ただけでもかなりの金額になる。
これでも十分生活できるが、私が欲しかったのは金貨の下に敷かれている書類だ。
「それは?」
「子どもたちの人身売買に関する書類。本当に子どもたちを売ることで国費を得ているなら契約書がないと不自然だもの」
書類を手に取って内容を確かめる。
思った通りの内容が書かれていて、思わず口元が緩む。
「これも合わせて渡せば、同じ情報でも高値で買ってくれる」
「証拠探しをしていたわけか」
「そういうこと」
書類をトランクに入れ直して鍵をかける。
折角だし、このトランクごと頂くことにした。
「できればこれを屋敷に持ち帰りたい……そうだ、この前の偵察で見つけた抜け道を使えそうね」
以前、見回りの2人から足を切り落とされた子どもの話を聞く直前に城壁に変なくぼみがあった。
あそこから城の外に出ることができれば、そこから屋敷に向かうことは容易い。
「行くしかないわね」
セーズ様の部屋から出て、見つからないように外に出る。
多少の音がして見つかってもメイド服なため、あまり怪しまれないだろう。
見張りが逆の方向を見たタイミングで塀に近づいて探れば、あの時の窪みがあった。
塀を見上げれば、足と手がかかるように点々と窪みが続いていた。
トランクを塀の向こうに投げてから猫の身体能力を借りて塀を上る。
降りた時の着地音がしないのも猫の能力のおかげなのかもしれないが、おかげで問題なく城から出ることができた。
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