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第13話
しおりを挟む「え、セーズ様?」
「今からトレヴァー殿に直談判しに行く」
セーズ様はそれ以上何も言わない。
自分からハニートラップ擬きをかけたが彼の反応を見てすでに後悔し始めている。
ここまで執着を見せられるとは思わなかった。
彼__セーズ様は幼児・小児に対して性愛や性的嗜好を持っている。
これは宿から見た馬車について調べていた時に知ったことだ。
城でパーティーの準備をしていた時にこっそり見た書類には、あの日の馬車の行き先がセーズ様が大臣として納めている国になっていた。
荷物の欄には『生き物』と簡潔に書かれていた。
深夜に馬車で運ぶ生き物。
そして、セーズ様の性的趣向。
それが何を指しているか分からないほど、私は馬鹿ではない。
しばらく歩くと、廊下で兵士と何かを話しているトレヴァー様を見つけた。
セーズ様はそのままトレヴァー様に近づくと、私の背を押してきた。
そのせいで私が意味もなくトレヴァー様に近づいてしまう。
「ん?ロサか。どうした?」
「えっと…」
「悪いね、私が連れてきたんだよ」
トレヴァー様はセーズ様に頭を下げてから口を開いた。
「セーズ様、ようこそいらっしゃいました」
「突然ですまないね。少し相談があるのだが」
「……ここではあれですから、場所を変えましょうか?」
「いや結構だよ。君が許可を出してくれれば済む問題だから」
「…と言いますと?」
話が見えてこないようでトレヴァー様は首を傾げている。
すると、セーズ様は私の肩に手を置いた。
「この子を明日のパーティーに出席させてほしい。勿論、給仕としてで構わない」
「……」
「パーティーの給仕が1人増えたところで違和感なんてないだろう?」
「それは、そうですが」
「ならいいじゃないか」
「ですが、ロサはまだ子どもです。城のパーティーのマナーも知らないため、セーズ様に無礼な対応をしてしまうかもしれません」
「私は気にしないさ」
「ですから、」
「私はこの子と話がしたいんだよ」
セーズ様はトレヴァー様を睨んだ。
トレヴァー様はその視線に唇を噛むと、小さな声で了承した。
「分かりました。許可致します」
「ありがとう。じゃあ、私は部屋に戻るよ。明日の夜が楽しみだね、ロサ?」
「え?」
「またね」
セーズ様は妖艶に微笑みながら去って行った。
残された私とトレヴァー様は唖然としたまま見つめ合う。
先に口を開いたのはトレヴァー様だった。
「多少の予想はしていたが、準備の担当だからいいと軽視していたな。すまない」
「…いえ、私こそ申し訳ございませんでした」
「君は何も悪くない。…とりあえず明日は給仕としてパーティーに出席してもらえるか?」
「勿論です」
トレヴァー様には申し訳ないが、これで準備期間と当日の両方に出席することができる。
それに、セーズ様から情報を聞き出したいところでもある。
「では、頼んだぞ」
「はい!」
この国が滅びるかどうかは明日のパーティーにかかっている。
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