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篠崎 三葉 1
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「はっ……はぁ……っ、ほんっとに、くそキチガイ野郎だな、あいつは……」
食事、水はギリギリの状態。そうギリギリの状態だ。
奏多は、俺を“死なせない”よう匙加減をしている。
マコちゃんとこに行った帰り。確かに、少し出るのが遅れてしまったが……自宅に戻ることが出来た。
だが、急に意識が落ち。気が付けば、この犬小屋に見立てたような牢屋に入っていたのだ。ということは……初めから俺の行動は、奏多に筒抜けだったってことだ。
でも、本気で殺すつもりなら、とっくに……――それこそ、表で生活している最中であっても簡単にやってのけるような男だ。勿論、事故にみせかけてだが……。
奏多は、無駄なことが大嫌いだ。そんなものに時間をかけることはしない。
だから、こう犬のように繋がれているということは、殺すつもりはないのだろう。
「はっ、なんだかんだ言って……。あいつの分析が、癖になっちまったな……」
首輪に繋がっている煩わしい鎖を、強く握る。
以前の首輪は、暴れると首が締まるような構造になっていた。わざわざ、奏多がそう教えてくれた。
だから、わざと――昨日、酷く暴れたのだ。
俺を監視している配下から聞いたのだろう……。奏多が直ぐに来て、首が締まり踠く俺に対して「バカな犬」呼ばわりしながらも、首輪を違うものに変えていった。
(あいつに情ってもんがあるのかは知らねぇが……。絶対に、当主にさせるわけにはいかねぇ)
もし、奏多が当主になってしまえば――【篠崎家】をぶっ壊すことが出来なくなる。
今、僅かにでもある隙すらもなくなるだろう。
何故なら、奏多は――篠崎家の【影】を使う前に……己の持つ才能のみで、数人の篠崎家にいた幹部を潰している。それも、完膚なきまでに。
確かに、目に余るような行動を多々起こしているような輩で、当主も困っていた。
しかし、証拠を上手く揉み消していたようだから、変に責任を問うことも出来なかった。
しかし、奏多は涼しい顔で。その証拠の数々の全てを、当主に渡したのだ。
どうやったのかと聞いたら、奏多は「普通にだけど? むしろ、なんで出来なかったの?」と不思議そうな顔をして言っていた。
それからだ。篠崎の影や……当主である俺の父親までも、奏多を当主にしようと動き出したのは。
篠崎の当主は、直系の血統でなくても良い。
だだ、己の持つ才能さえあれば、それで良いのだ。
それでも、幼い頃の俺は――父親に、随分と惨い教育された。今は、失望され。奏多に気持ちがいっているから、その目に俺が入っていないようだが……。
だからこそ、動くなら……俺から目が離れている今しかなかった。
――俺は、不幸しか撒き散らさない篠崎家を、跡形もなく消し去りたい。それは、ずっとずっと昔からの悲願なのだ。
「はは、俺……。生まれてくる家、間違えたなぁ」
下を向き。血が滴るくらいに、強く……手を握り締めた。
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