上 下
1 / 7

1

しおりを挟む
 


「え? 君、オメガ? いや、魅力無さすぎでしょ。無理無理! 君みたいな子、抱けないからチェンジで」

 ――――

「なんで、ベータが紛れ込んでるの? アルファに憧れてもさ~……。君のような綺麗でもない男ベータじゃ立たないから、無謀なことは止めなよ」

 ――――

「え、え、マジ? こんなオメガいんだぁ!? あっははははははっ!! 絶対、出来ないわ~!」

 …………。

「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」
「――ちょっと、君! 落ち着いて!」



 ♢◆♢


「ぁあぁあーーっ!! もう、嫌だ嫌だ嫌だ!」

 ぐしゃぐしゃと髪の毛を乱す。

「お見合いで、嫌なことあったの?」

 幼なじみの和紗にクスクスと笑われ、キッと睨み付ける。

「うっさい! どいつもこいつも、ヤルヤルヤルヤルことばかり! なんなん、アルファって!? 可愛い、綺麗な子ばっかりを選り好みしやがって……。てか、運命のオメガが俺みたいにガタイのいい奴だったら、チェンジできんのかよ! クッソヤローーー!!」
「まぁ、まぁ……。しょうがないんじゃない? だって、彰はベータにしか見えない……ってか、装いによってはアルファに見えちゃうからねぇ。オメガなのに、よくそんなでっかくなったね? ほんと、凄いよ」
「うっせー! 感心すんな~~!!」

 けど、和紗に言われたことを否定出来ない。
 その自覚があるからだ。普通、オメガは庇護欲が湧く容姿に成長する。
 それはアルファの目に留まるよう、無意識にそういう風になるとかなんとからしいが……。詳しくは、まだよく分かっていない。

 ……ってことは――。

「なんで、俺……こんな出来損ないに生まれちまったんだ!」

 もう、それしか考えられない……。
 俺みたいなオメガ、守りたいなんて思うアルファいるわけねぇじゃん!

 嫌な思いしてまで行ったお見合いパーティーは、華奢なオメガ、可愛い綺麗なオメガ、従順なオメガが人気だった。

 ざっけんな! もう、二度といかねぇーわ!! 試しに行こうなんて思った過去の自分、張り倒したいっ!


「彰が出来損ないなわけない! 俺には、魅力的なオメガにしか見えないよ」

 ポンポンと肩を叩く、和紗の手を振り払う。

「お前はいいよな! キラキラなオーラを醸し出す、ザ・アルファ! って感じでさぁ……。そんな奴に言われても、嫌みにしか感じねぇ!」
「え~?」

 和紗は首をコテンと傾けた。

 そんな幼子がするような姿すらも様になるイケメン。こんなアルファがお見合いパーティーにいたら、オメガどころかベータやアルファであってもお近づきになりたくなるのではないか?

 艶やかな薄茶の髪は日が当たると金色に輝き、アーモンドの形の目には長い睫毛が囲い、高く綺麗な鼻、薄めの唇、毛穴なんてもの一つも見当たらない肌。これぞ、神に愛されて作られたかのような美貌。

 ……イケメンを補給しすぎて目が痛くなってきた。

「はぁ……。俺、帰るわ」
「ごはん食べてかないの?」
「ごめん。イライラしすぎて、腹へってない」
「ん~……。じゃあ、これ。お腹減ったら食べて」

 肉じゃかを詰めたタッパーを、和紗に渡された。

「おう、いつもありがとな~! んじゃ」
「またね、彰」

 綺麗な笑顔で手を振る和紗に手を振り返し、清潔に整えられた部屋を出た。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったらしい

325号室の住人
BL
父親代わりの叔父に、緊急事態だと呼び出された俺。 そこで、幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったと知って… ☆全4話 完結しました R18つけてますが、表現は軽いものとなります。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...