ダンジョンの核に転生したんだけど、この世界の人間性ってどうなってんの？

47.精神的にくる相手

　


　坂を登り、俺の目に映ったのは――鋭い爪で、己の黒い鱗をボロボロと剥がしている巨大な竜だった。

「レイド！！　どうなってんだ！？　何で、炎竜は自分の身体を傷つけてるっ！？」
「分からない。これは、一体……」

　レイドも目を見開き、炎竜の姿を呆然と見ている。

「おいっ！　でっかいトカゲがっ！！　お前が邪魔するせいでなかなか噴火しね～だろっ！　さっさと退けよ～～～っ！！　ノロマっ！！！」

　くそ苛つく声が、炎竜で死角になっている所から聞こえて来た。

　身体をずらして、そこへと視線を向けると――。


　……は？　何で、馬鹿が此処にいるんだよ？
　いや、そうか……。あいつ、禁術機を持って、逃亡してたんだっけ？　色々あったから。馬鹿の存在自体、忘れてたわ……。ってことは、あいつが術者だろうなぁ～。
　なんで、痴女に馬鹿コンビが、禁術機の術者になってんだよ。精神的にくるものがあるから、本当は相手したくねぇ～……。


「レイド、あいつが術――」
「ああ、殺そう」

　おいっ！　だから、その単純思考は何なんだ！？

　前に、俺が『簡単に命を奪おうとする奴、スッゲー嫌い』って言ったこと、もう忘れてんのかよ！

　レイドが極級魔法を展開する前に、何とか止められた。


　あの馬鹿はまだこちらに気が付いていないようで、ずっと炎竜を罵倒していた。しかも、その顔には笑みが浮かんでいて、楽しんでいるようにも見える。

　ああっ！　あいつ、マジで苛々する奴だな～！！


「そこの馬鹿っ！！」
「うぇっ……？　お、お前はっ！！？」

　俺が大声を出したことで、馬鹿は漸く俺達が居ることに気が付いたらしい。

　馬鹿だと、視野も狭くなるのか……？

「おいっ！　何で生きてんだよっ！！　ウンコみたいな色の輝石になってただろっ！？　お陰で、汚そうで触れなかったじゃん！！　俺の時間返せよ～～～っ！！！」
「はあああっ！！？　ウンコだって！？　お前のウンコは黒いんかよっ！？　ってか、俺はお前なんか呼んでね～からなっ！！　勝手に来たくせに、アホみたいな言いがかりつけてんじゃねーーーっ！！！」

　こいつ出会った時からだけど、本当に人を苛つかせる天才だなっ！！

「ヤマダ、任せろ！　俺が塵にしてくれるっ！！」
「だからっ！　止めろってば！！」

　極級魔法を展開してしまったレイドを、またしても何とか止めた。

　もう、勘弁してくれよ～！！


「まあ～いいや！　今度こそ、殺せば良いしな！！　お前らっ！！　俺の為に、その身を犠牲にしろ～～～っ！！！」

　馬鹿がニヤニヤとムカつく笑みを浮かべ。俺達の方へ、行け！　というように指をさした。


　すると、馬鹿の後ろの方から、虚ろな表情を浮かべた人達がゾロゾロと姿を現した。