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5.戸惑いの境地
しおりを挟む――あれから、赤髪とは長い付き合いになっていた。
俺は、こいつとやり合うようになってからというものの、様々な魔法を使うことになった。レベルだけは、馬鹿みたいに上がっていたから。実は、色々な技があったのだ。
だから、最近はこいつが来るのを、俺は楽しんでもいた。
△▼△▼△▼△▼
俺は、最級の土魔法で。高い岩の壁のようなもの造り出した。
その一番頂上に立ち。豆粒のように小さくなった、そいつを見下ろす。
「ふっ! お前のそれは、もう読めてんだよバァーカっ! 拘束魔法は、ここまでは届かね~だろ? ワンパターンしかない、自分を恨めよ~?」
はっはっはっーー!! 馬鹿の一つ覚えみたいに、拘束魔法しか撃たないとか、マジであの腰に差している剣はお飾りみたいだな~?
俺は、面白くなってニヤニヤしていたら――。
「は……? えええーーーっ!!? お、おい? そんなんに、使うとか……。はあ~~!?」
赤髪が、初めて剣を抜いたと思ったら。岩壁を刺し、こちらに登って来ている。
「はあ? ちょっ、と……? 剣、で? ア、アホなんか……?」
そいつを呆然と見ているうちに。いつの間にか、俺の身体が拘束されていた。
「え……? ああっ!! 嘘だろっ!?」
拘束魔法によって、身体が動かないよう地面に押さえ付けられている。
俺は直ぐに、自分のスキルを使ったが。それを解除出来るものを、俺はまだ覚えてはいなかった。
「ぐっ!! く、そ……」
俺は、馬鹿だ。
気を抜いてしまったばっかりに、2回目の生をこんなかたちで終えるなんて――。
「はあ……。おい、さっさとやれ。躊躇しなくて良い」
何だか良く分からないうちに掴まったのが、腑に落ちないが。
まあ……。ペラペラ喋る、苛つく中二病共に殺られるよりは。少しでも楽しませてくれた、こいつになら良いか……という気持ちもある。
「そうか、分かった。大丈夫だ、ちゃんと気持ち良くする」
――???
「お、おい……? なんか、意味分からない言葉が聞こえたような……? ってか、お前! 喋れたのかよ!? 最初から、喋れよっ!」
そいつは、うっとりと俺の顔を覗き込むようにして見ている。
近っ!! 何なんだよ、一体!?
「喋る人は、嫌なのではなかったのか……? ずっと我慢していたのだが、大丈夫ならばいくらでも話そう。なんて、可愛いんだ……愛している」
――――?????
「はあ?? ちょっと、待て……。お前、なに言ってんだ? 俺、核だし……男だぞ? 分かってんのか……?」
俺は、前の生での意識が強く。ここに来て10年くらいは経っているが、未だにこの世界に馴染めてはいない。
特に、核に対する人々の認識のおかしさに気持ち悪さを感じる。
自分達と同じく生きていて、その核が何かをするわけでもないのに、この世界の人達はただの材料としてしか見ず。駆逐するだけだからだ。
けど、核というものは。この世界では、そういう存在なのだと、俺は嫌でも理解していた。
だから、愛してるなんて……意味が分からない。
更に、俺が男だというのもあって。余計に戸惑う。
「核だからなんだと言うんだ。それで、その可愛さが薄れることはないだろう。男……? もしかして、気が付いていないのか? 核には性別はない。だから、きっと……俺の子だって孕めるだろう」
「はあああっ!!? う、うそだろ……?」
頬を染めている目の前の男を、俺は呆然と見上げることしか出来なかった。
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