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清水 あかり ⑧
しおりを挟む(コレだけでも、奪うことが出来て良かった――……)
手に持つ、ボタン。
黒い渦がグルグルと纏っていて……。コレからは、嫌な予感がビシビシと感じる。
トクという男が出したショベルカーは、どこかから借りたか、コピーしたような物質だったが。
白タイツの出した、あのゲームパッドや、このボタンは……霊力で作り出した物だ。
だから、私には――コレがどんなに凄まじい悪意を持って作られたのかが、理解出来た。
絶対に、私を亡き者にするといった……そんな強い憎悪が込められているのだ。
(……やっぱり、この状況は――未来と何か関係がある)
当初。私だけならば、特異な能力を持った私を食べることで、異形の者が力を増そうとしているのかと思っていた。
けど、賀川の存在があることで……――私がその後に、頭に過った懸念が、真実であるのだと訴えてくる。
――未来を、あのような目に合わせた人達への【復讐】。
「そう、なら……。何故、あんな神に近しい存在達が、自ら復讐を……?」
未来という人間の為に、怒り狂ったように復讐をする神に近しい者達――。
例えば、生きた動物に化けた物の怪ならば、分かる。
実際、優しい人間に触れたことで、恩返しなどをする物の怪もいる。ならば当然、その人間の為に、復讐に狂ったりもするだろう。
……しかし、通常。あのような神に近しい存在ならば、人間に関わることは無い。
地球に存在する、神だと言われているモノ――物の怪が神に似たモノに変化した存在では無く。
本物の神や、神に近しい者が、地球に降りることが出来るのは一つだけに限られている。
それは――巫女の力によって【神降ろし】をした時のみだ。
未来に、そんな力は無かったはず。私から見ても、普通の人間だった。
だから、あのような神に近しい者達に関わることは、出来ないはずなのに……――。
♢◆♢
「はっ、はぁっ、はぁ……っ!」
――苦しい……。こんなに、走ったのはいつぶりだろうか?
足が早いのには自信があるが、体力はあまり無いのだ。
『ぅぴぃ~……! ぅぴぴっ!』
(あ、手に持ったままだった……)
らいらーいが、私の手でバタバタと暴れている。
手から離そうかと思ったが、もし仲間を呼ばれたらと考え――バチバチンッ!! と、らいらーいに強い電気を流す。
「ごめんね」
ピクピクと動かなくなった、らいらーいを道端に置く。
――……ゾクッ! 強い寒気を感じ、慌てて避けた。
『ったく、俺の可愛い部下に何してくれんだよ? くそアマが……』
緑色のぶよぶよの手が、私がさっきまでいた地面に突き刺さっている。
もし避けなければ、胴体を貫いていたかもしれないと気付き、恐怖にブルリと震えた。
(もう、追い付いて来たの? 賀川は、やっぱり操られているみたいね……)
『あぁ……。てめぇにとっちゃ、コレと感動の再開か? 意識はねぇみたいだがな』
虚ろな目をした賀川は、手を上げ。ブンブンと大きく横に振る動作をした。
ショベルカーに乗っているトクは、ゲームパッドをカチャカチャと操作しているから、そのように指示を出しているのだろう。
『部下を可愛がってくれた分、倍にして返してやらぁ~』
緑色をした化け物と化した賀川が、ドスドスドスッ!! と音を立てて足踏みした後――猛烈なスピードで私に向かって来た。
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