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Vtuber 水咲ネネ
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「さあ、今日も頑張りますか」
SNSで配信予定は投稿済、予定通り21時だ。配信画面を開くと待機中の人が100名ほど。いつも通り見てくれる人がいるという事実が、高木梓に安心とプレッシャーを与える。
高校での授業を終え、自室でPCを開き準備する。PCは親にお願いして出世払いで買ってもらった高額なゲーミングPCだ。配信には良いPCが必要とマネージャーに言われたので購入したが、正直店員に言われるままだったので良くわかっていない。
「こんばんはー。水咲ネネです! Vキャスト所属の新人Vtuberです。今日もよろしくねー」
:こんばんはー
:こんばんはー
今日は雑談配信の予定だ。コメントを拾いながら取り留めもない話をする。初めて1ヶ月で登録者8,000人、常連さんもいてくれる。
:ネネちゃんは兼業なの?
「兼業なのか? ご想像にお任せしますよー」
年齢は222歳という設定で、少し大人びたキャラクター像なので多くの視聴者に社会人に思われている。
:好きなアニメは何?
「好きなアニメかー。ちょっと古くなるけどエヴァとかかなあ。色々考えさせるアニメが好きなんだよね。アニメも映画も漫画も全部見たよー。まあ終わり方には色々意見あるけど、それも含めていいよねー」
自身の声がアニメ声ということもあり、アニメ好きとして振る舞っているが、実際にはアニメは最近見始めた。視聴者にアニメが好きな人が多く、勉強として見始めたら予想以上に面白くハマってしまい、授業中にもこっそり読んでいるほどである。
…… 気がつけば1時間。
「あ、もう10時だ。1時間経ったし、配信終わるね。また次回の配信でよろしくお願いします!」
:お疲れー
:お疲れー
:お疲れー
遡ること1年前、高校1年生の初め頃に、高木はなんとなく人生に焦りを感じていた。帰宅部として始まった高校生活。不満があるわけではないが、気がつけば卒業が近づいていて、将来のことを考えなければならない雰囲気が先生達から出始めている。大学進学なのか、就職なのか。高木の高校では半々である。そこから自分の人生を決める必要があるわけだ。
「うーん、どうしよっかなあ…… まだ入学したばっかりなのに、もう卒業のこと考えないといけないのかあ」
なんとなく声に出しながら趣味の動画鑑賞を行う夜。いつもの週間である。美容系、エンタメ系、歌手…… 色々な動画を見ながらなんとなく時間を過ごす。
「?」
ふとタッチした動画は二次元の女性キャラクターが話している動画だった。
「ニートだった私がVtuberになって、友達が出来ました」
そんな話を面白おかしく話している。へーこれが話題のVtuberか。他にどんな動画を挙げているんだろう。何気なくチャンネルボタンを押すと、過去の投稿された動画が出てきた。「ここねこ」、チャンネル登録者は150万人ほどいる超有名Vtuberである。人気の動画として表示されたのは歌っている動画だった。
その曲を聞いた瞬間、凄まじい衝撃が高木を襲った。初めて聞いた曲だったが、声と非常にマッチしており、心を震わせてくる。画面では可愛らしい女の子のキャラクターが踊っている。再生数は1000万、高評価は30万、コメントは1万件。英語や韓国語等、日本語以外のコメントも飛び交っている。ネット上のスーパーアイドル、まさにその言葉がぴったりだった。
そこから色々な動画を見る。雑談配信は面白く、ゲーム配信は見ているとドキドキワクワクする。歌配信は感動させてくれ、仲間とのコラボ配信はいつもと違う姿を見せてくれる。高木はすっかりVtuberここねこの虜になってしまった。そこから高木はVtuberの動画を色々見るようになり、ここねこと同じ事務所「VVV」の配信者に始まり、配信者数でいうと最大手のGURU UP、ゲーム配信に特化したVゲー、アングラ配信が人気のVキャストまで様々な配信者に夢中になった。
高校生なので投げ銭をするほど小遣いがあるわけではないが、応援コメントをすると喜んでくれたり、SNSで返事をすると返事を返してくれるような存在感も良い。自分の分身が演じるネット環境で様々な視聴者と繋がるという環境も良い。
高木は気付けば、Vtuberに対する憧れを持つようになっていった。ちょうどそんな時、「VVV」の新人オーディションが行われるという広告を見かける。これは、運命だ! すぐに応募することにした。応募書類と音声をセットで送信する。アルバイトもしたことがない高木にとっては一世一代の挑戦だった。
……
それから半年後、高木はVキャストに所属することになっていた。どうしてそうなったか? まず、VVVはすぐに落ちた。そしてやけになって色々応募した結果、複数の事務所から合格を貰ったが、Vキャストが高木にとって1番面白そうだったからである。
Vキャスト。事務所としては小さく、所属する配信者のチャンネル登録者は1万~10万程度。大手事務所と比べると非常に小規模である。ただ、配信者同士の仲が非常に良いこと、そして「尖った」配信者が多いことからネット界ではよく知られた存在だ。高木はVキャストの「どんな配信者でも受け入れる」という懐の深さが気に入った。ここでならなんでも出来るんじゃないか、そのように考えたわけだ。
その5ヶ月後に新人配信者としてのデビューとなり、「水咲ネネ」として動画サイトに登場し、1ヶ月を迎えたのが今。高木はVtuber生活を楽しみ始めていた。
SNSで配信予定は投稿済、予定通り21時だ。配信画面を開くと待機中の人が100名ほど。いつも通り見てくれる人がいるという事実が、高木梓に安心とプレッシャーを与える。
高校での授業を終え、自室でPCを開き準備する。PCは親にお願いして出世払いで買ってもらった高額なゲーミングPCだ。配信には良いPCが必要とマネージャーに言われたので購入したが、正直店員に言われるままだったので良くわかっていない。
「こんばんはー。水咲ネネです! Vキャスト所属の新人Vtuberです。今日もよろしくねー」
:こんばんはー
:こんばんはー
今日は雑談配信の予定だ。コメントを拾いながら取り留めもない話をする。初めて1ヶ月で登録者8,000人、常連さんもいてくれる。
:ネネちゃんは兼業なの?
「兼業なのか? ご想像にお任せしますよー」
年齢は222歳という設定で、少し大人びたキャラクター像なので多くの視聴者に社会人に思われている。
:好きなアニメは何?
「好きなアニメかー。ちょっと古くなるけどエヴァとかかなあ。色々考えさせるアニメが好きなんだよね。アニメも映画も漫画も全部見たよー。まあ終わり方には色々意見あるけど、それも含めていいよねー」
自身の声がアニメ声ということもあり、アニメ好きとして振る舞っているが、実際にはアニメは最近見始めた。視聴者にアニメが好きな人が多く、勉強として見始めたら予想以上に面白くハマってしまい、授業中にもこっそり読んでいるほどである。
…… 気がつけば1時間。
「あ、もう10時だ。1時間経ったし、配信終わるね。また次回の配信でよろしくお願いします!」
:お疲れー
:お疲れー
:お疲れー
遡ること1年前、高校1年生の初め頃に、高木はなんとなく人生に焦りを感じていた。帰宅部として始まった高校生活。不満があるわけではないが、気がつけば卒業が近づいていて、将来のことを考えなければならない雰囲気が先生達から出始めている。大学進学なのか、就職なのか。高木の高校では半々である。そこから自分の人生を決める必要があるわけだ。
「うーん、どうしよっかなあ…… まだ入学したばっかりなのに、もう卒業のこと考えないといけないのかあ」
なんとなく声に出しながら趣味の動画鑑賞を行う夜。いつもの週間である。美容系、エンタメ系、歌手…… 色々な動画を見ながらなんとなく時間を過ごす。
「?」
ふとタッチした動画は二次元の女性キャラクターが話している動画だった。
「ニートだった私がVtuberになって、友達が出来ました」
そんな話を面白おかしく話している。へーこれが話題のVtuberか。他にどんな動画を挙げているんだろう。何気なくチャンネルボタンを押すと、過去の投稿された動画が出てきた。「ここねこ」、チャンネル登録者は150万人ほどいる超有名Vtuberである。人気の動画として表示されたのは歌っている動画だった。
その曲を聞いた瞬間、凄まじい衝撃が高木を襲った。初めて聞いた曲だったが、声と非常にマッチしており、心を震わせてくる。画面では可愛らしい女の子のキャラクターが踊っている。再生数は1000万、高評価は30万、コメントは1万件。英語や韓国語等、日本語以外のコメントも飛び交っている。ネット上のスーパーアイドル、まさにその言葉がぴったりだった。
そこから色々な動画を見る。雑談配信は面白く、ゲーム配信は見ているとドキドキワクワクする。歌配信は感動させてくれ、仲間とのコラボ配信はいつもと違う姿を見せてくれる。高木はすっかりVtuberここねこの虜になってしまった。そこから高木はVtuberの動画を色々見るようになり、ここねこと同じ事務所「VVV」の配信者に始まり、配信者数でいうと最大手のGURU UP、ゲーム配信に特化したVゲー、アングラ配信が人気のVキャストまで様々な配信者に夢中になった。
高校生なので投げ銭をするほど小遣いがあるわけではないが、応援コメントをすると喜んでくれたり、SNSで返事をすると返事を返してくれるような存在感も良い。自分の分身が演じるネット環境で様々な視聴者と繋がるという環境も良い。
高木は気付けば、Vtuberに対する憧れを持つようになっていった。ちょうどそんな時、「VVV」の新人オーディションが行われるという広告を見かける。これは、運命だ! すぐに応募することにした。応募書類と音声をセットで送信する。アルバイトもしたことがない高木にとっては一世一代の挑戦だった。
……
それから半年後、高木はVキャストに所属することになっていた。どうしてそうなったか? まず、VVVはすぐに落ちた。そしてやけになって色々応募した結果、複数の事務所から合格を貰ったが、Vキャストが高木にとって1番面白そうだったからである。
Vキャスト。事務所としては小さく、所属する配信者のチャンネル登録者は1万~10万程度。大手事務所と比べると非常に小規模である。ただ、配信者同士の仲が非常に良いこと、そして「尖った」配信者が多いことからネット界ではよく知られた存在だ。高木はVキャストの「どんな配信者でも受け入れる」という懐の深さが気に入った。ここでならなんでも出来るんじゃないか、そのように考えたわけだ。
その5ヶ月後に新人配信者としてのデビューとなり、「水咲ネネ」として動画サイトに登場し、1ヶ月を迎えたのが今。高木はVtuber生活を楽しみ始めていた。
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