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カミラ姫の野望

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 馬車からカミラ姫が降りてくる。
「レーシェを捕まえてくださったんですね。助かりました。ありがとうございます」
「レーシェがスパイだと気づいていたのか?」
「ええ、わかってはいました。そもそも一人で外部と接触できるタイミングは食事の準備、片付けのタイミングとトイレ・風呂のタイミングしかありません。直接接触したわけではないなら選択肢は自然と絞られます」
 カミラ姫は真相に気づいていたようだ。

「ギリギリのところで革命軍への連絡を防げたんだが…… アリエッサが魔法を使っていなかったらどうするつもりだったんだ?」
「まあ、その時はその時です。革命軍と戦うだけでしたね。我々には国内最強のチームがいます。革命軍如き問題ないと思っていましたよ」
 自信満々に言い切るカミラ姫。攻撃で死ぬ可能性もあるだろうに、思い切った行動をするものだ。

「攻撃で私の騎士が亡くなったのは残念です。ただ、メイドをスパイとして生きたまま確保できたのは幸いでした。これでより容易に私の身辺に私兵を増やすことが認められるでしょう。警備を強化する必要があると周囲に主張することができます」

「あ、レーシェの口内は確認しましたか? 毒を飲んで自殺だけは勘弁してほしいので。ブロット、念のため確認してください」
 淡々と話を続けるカミラ姫。私兵を増やす? なんの話をしているんだ?

「一つ、私からお話ししたいことがあります。内容が内容でして、カミト様だけにお話ししたいです。馬車に来てもらえますか?」
 俺は頷き、カミラ姫と馬車に乗り込む。

「さて、人払いは完了しましたね。今回、サクラに来た目的について以前ご説明しましたが、実はあれは表向きの目的でした。本当の目的は、革命軍との戦闘を通じてLV10である貴方の見極めをすることです。戦闘能力はいうまでもなく、レーシェを捕まえることができる頭脳をお持ちだと理解することが出来ました。そして、貴方はこの先の話をすることにふさわしいと判断しました」

 笑みを絶やすことなく話を続けるカミラ姫。実は俺を評価するのが目的だった? 
「私は次の王、つまり女王になることを目指しています。今まで姫という立場では出来ない、挫折した取り組みがたくさんありました。この国をより良くするためにはトップの座に着くしかないと考えています」
 公に話すと不敬罪になりかねない想いを話し始める。

「この国は女性が王になることを認めていません。ですが、女性でも王になれることを可能とするようにルールを変更してしまえば良いのです。私の実績が圧倒的になれば、そのような声が自然と大きくなるでしょう。そうなれば私の勝ちです」

「ただ、私は様々な改革に携わってきましたが、一つ足りない実績があります。それは軍事です。戦争および治安維持に関しては王家では男子の役割とされ、女性は近づくことが許されません」

「しかし、今回の一件をもとに、私が現状より多くの私兵を持つことが許されるようになるでしょう。いわば王姫親衛隊として一介の軍隊を保有するわけですね。で、何をしたいか?
 それはこの世界をより良くするための活動です。世の中に蔓延る悪を打ち破る、そういう存在に親衛隊を育てていきたいと考えています」

 明かされるカミラ姫の野望。全体像が見えてきた。つまり、戦力として俺とそのチームを活用したいということだろう。
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