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建国以来の天才、カミラ姫

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 王都には名前の通り、王がいる。この国建設以来300年が経過しているが、王族は常に同じ血筋から排出されている。そして、現在の王は特に問題も無い王とされ、多くの民は王に不満を抱えることはなく過ごしている。

 そんな歴史ある王族だが、「建国以来最高の王族」と民から表される王族がいる。それが第1王妃カミラ姫である。カミラ姫は若干20歳にして「未来が見える」とまで言われる洞察力を元に政治・農業・工業など多様な分野で改革を行い、この国を一段と発展させた。また、民に寄り添う姿勢が顕著で、定期的に民と交流し、不満や問題点を吸い上げることでそれを政策に反映させることから民の評判も極めて高い。

 惜しむらくは女性であること。この国のルールとして、王になるのは男と決まっている。どれだけ実績を出しても王になれることはない。第1王子も優秀とされているが、カミラ姫には及ばない。ただ、兄妹の仲は悪くないらしい。よく二人で民の前に姿を現すこともある。この辺りは上手く棲み分けをしているからだろう。王子は外交や軍事面に特化した能力を持っている。その領域にはカミラ姫は関わらない。

 官僚や大臣に対してもカミラ姫の影響力は絶大であり、「カミラ姫が同意した政策かどうか」が政策として極めて重要視される暗黙のルールがある。

 その異名は国外にも轟いており、様々な国から求婚を受けているが、王が全て断っている。その能力が他国に流出することはこの国にとって大きなダメージとなるからである。

「さて、来週からはサクラの訪問と査察ね。楽しみだわ。ちょっと遠出だから大変だけど気合い入れていかないとね」
 昼食を食べながら、カミラ姫は執事に話しかける。

「失礼ですが、どういった点をお楽しみにされているのでしょうか? それほど観光スポットがあるわけでもない普通の辺境都市ですが……」
 サクラは大都市ではあるが、特段として歴史がある街というわけでもなく、人口が多いだけの大都市だ。整ってはいるが、王都と比べて優れている点があるというわけでもない。執事が疑問に感じるのも無理はない。

「そうね、あまり今お話しすると混乱を招きかねないから…… 簡単にいうと、サクラにしかないものがあるのでそれを手に入れに行くという感じかな。私に今足りなくて、今後必要になってくるものがサクラに存在するの。私の予定では、今回の訪問で手に入れることになるはず」

 カミラ姫は意味深な発言をする。ただ、意味深な発言をするのはいつものことだ。普段は抽象的な発言をしており、執事が理解できることは少ない。いつもの発言に、執事は深掘りすることなく会話する。
「はあ、なるほど。予定通り上手く行くといいですね。ただ、あまりは無茶はなされないでくださいね」

「ええ、大丈夫よ。そのあたりは上手くやってみせるから。私の腕の見せ所ね」
「姫なら大丈夫だと思いますが」

「問題は護衛ですね。最近革命軍の活動が活発になっています。騎士は5名のみで問題ないのでしょうか?」
「ええ、問題ないわ。大人数での移動は好きじゃないし。それにサクラの領主にあのグループの貸出を依頼しておいたの。彼らがいれば問題ないでしょう」
「あのグループ…… ヘッズオブドラゴンですよね。世界最強とされるリーダーがいる。ただ防御や暗殺の阻止ができるのかは不安ですが」

「龍を撃破する能力を持ってるのよ? 防御だってできないと龍との戦いに勝てるとは思えないわ。それに個人ではなくチームで活動しているからそのあたりのバランスは大丈夫でしょう。あまり情報がなくて推測でしかないけど…… 大丈夫でしょう。それにカミト様とは話が合いそうな気がするの」
「はあ。姫がそういうのであればそうなのでしょうね」
「ええ、まあ最悪の場合は私の魔法でなんとかします。どうせ私を攻撃するような輩がいれば即死刑でしょうから、私が魔法を使ってもその中身が明かされることはないでしょう」
「姫の魔法は特殊ですからね…… できれば使わないで済む旅であって欲しいです。革命軍にも遭遇することなく平和に過ごしたいものです」

「まあ無理じゃない? どうせ何か起こるわよ。久しぶりの長距離移動だからね。革命軍も手ぐすね引いて待ってるわ。しかし軍は…… まだ彼らを捕捉できないのね」
「スパイを放つことで情報収集に努めているようですが、殺害されたり行方不明になったりと難航しているようですしね…… リーダーが最後に姿を見せたのも半年前。厄介な敵です」
「直接対峙できれば私の魔法でなんとかできるけど…… きっとそういうタイプではないでしょうからね。下っ端の集団突撃、みたいなテロ攻撃が関の山でしょうね」

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